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青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その5 [球体関節人形製作]

青い炎と人形の物語 第8章 その5

 第8章 戦慄の魔法兄妹 その5

 フランツはディナーの間にできる限り情報収集に努めようとした。
「『魔の女王』レオナ。君もザスキアと同じく鬼人と魔女のハーフなのかい?」

「ふふふ。フランツさん。12歳の私に女王というのは抵抗があるでしょ?レオナでいいわよ」
 相変わらず、大人のようなレオナの返答であったが、その直後、何かの獣の成分のような香水の香りと、前頭と鼻腔の奥にビシッと放電が走ったような感覚がした。
 しかし、フランツ自身は特にそれ以上の変化を感じなかった。

 すると、メインディッシュは、まだこれからのはずであるが、皆がにこやかに立ち上がり、食堂の入口に現れた12歳くらいの少年の方に近寄り、皆挨拶や握手を交わした。
 その挨拶の仕方はどう聞いても、相手が大人の有力者であるような接し方であった。

「フランツ君。君も町長のアルムホルトさんに挨拶したらどうかね?」
 ローター議員がフランツを促したので、フランツは立ち上がろうとしたが、いち早くもう一人の分身のフランツが立ち上がり、50歳くらいの白いあごひげの大人の男(アルムホルト?)と挨拶を交わした。

 フランツ当人は、食卓の椅子に腰かけながら、呆気に取られてそれを見守っていた。

「フランツさん。初めまして。『魔の帝王』と呼ばれているレオン・ベネケンです。ちょっと皆さんを地下の博物館に案内してからまた来ますよ」

 レオンという少年は本当のフランツと握手を交わすと、フランツが何か言う前に、また50歳くらいの白いあごひげの大人の男(アルムホルト)に姿を変えて、皆を連れて食堂を出て行ったが、何とその一行の中には、今、食堂に残っているベンジャミン少将ことブルクハルト王子、ザスキア少佐、カーヤ、フランツも含まれていた。

「さて、フランツさん。これでゆっくりあなたと話しができますね」
 ブルクハルトが白ワインのグラスを片手に立ち上がり、ザスキアとカーヤが座るテーブルに歩を進め、フランツを手招きした。
「さあ、こちらに、カーヤさんの横に掛けてください」

 フランツは言われるままに、カーヤの右横の席に腰かけて彼女を見ると、カーヤは初めての人と会うように、フランツに対して少し遠慮がちに会釈して微笑んだだけであった。

 新しい席に座った4人に対して、また給仕の女達が、今度は川魚と思われる料理を運んできた。

「まあ、4人だけでゆっくり食べましょう。地下に行った彼らの頭の中では、もうすでにディナーが済んでいるのですから」
 ブルクハルトは、給仕の女が注ぐ白ワインを見ながらそう言った。

「...地下に向かった彼らはどうなるのですか?」
 フランツはブルクハルトに向かって言った。

「フランツさん。彼らを殺したり傷つけたりすることはありませんので安心してください。詳しくは地下からレオンが戻ってきたら話してくれるでしょう。さあ、フランツさんも食事を楽しんでください」
 ブルクハルトは川魚ニジマスのバターソテーをフォークで食べながら言った。

「...ええ」
 ブルクハルトの言葉にニジマスのバターソテーを一口食べたが、こんな状況ではあったが、確かに美味しい料理であった。
「...ところで、ザスキア少佐!カーヤに何かしたんですね?」
 フランツは右隣に座るザスキアに鋭く尋ねた。

「ふふ。そうですよ。フランツ先生。カーヤさんには少しだけ私たちの仲間になってもらいました」
 ザスキアはニジマスを食べる動作を一旦止めて答えた。
「簡単に言うと、私たち民族固有のエキスを少しだけ注入させてもらったので」
 そして、ザスキアは隠す様子もなく、横に大きく口を開けてその犬歯を見せた。

「なっ!...まさか吸血鬼になるということなのか?!」
 フランツは驚いて椅子を立ち上がりかけた。

「あら、フランツ先生。あなたも結構迷信を信じているのね!...そんなことはありませんよ!でも、私たち鬼人族の犬歯からのエキスを注入すると普通の人間は従順になり、鬼人族に対して親近感がとても増すようになるわ...昔から鬼人族に入ってもらう魔女族、狼人族、人間族の人たちには『歯立ての儀式』を行っているわ...でも、それだけではないけどね?」
 ザスキアは妙に艶めかしい目でフランツを見て言った。

「そこから先は、私に説明させて!ザスキア姉さん」
 再び、給仕の恰好で『魔の女王』レオナがフランツとザスキアの間に現れた。

...to be continued.


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