「花の妖精フローラ」第一話 繰り返す思い出 最終節その1 [球体関節人形製作]
「百合菜、こんなタイミングで言うのは、ちょっと突然かもしれないけれど...」
僕はドキドキしながらも思い切って続けた。
「僕と結婚してください!一緒になって欲しい...だからSEにならずに今のままプログラマーで、仕事もできれば軽くして欲しいんだ。その代わり僕が一生懸命働くよ!」
彼女は僕の返答に少し驚いたようであったが、顔には嬉しさが浮かんでいるように見えた。
「わかったわ...少し、考えさせてくれる?返事するから」
百合菜はちょっと上目遣いで、僕の目を見てそう言った。
僕はドキドキの中で、
「うん。わかった。待っているよ」
と答えた。
「ねぇ、光一。あなたの服の取り合わせ、まだまだ、だよね?今度の日曜に、ヨネクロに服選びに行こうか?私が選んであげるから」
百合菜がいきなり話を変えてきたので、僕はちょっと狐につままれたような感じになったが、
「あー、そうだね。いまいちかな?」
と答えた。
「ダメだよ。変えなきゃ。不思議よね。光一って、絵画や写真の色使いには細かいのにね。紺屋の白袴ってやつかな?」
百合菜の言葉に僕は、
「その通り、紺屋の白袴なんだ」
そして二人とも笑い合い、その後はとりとめのない会話をして、食事を終えた。
「今日は、まだ掃除機かけて片付けしなきゃいけないから」と彼女が言うので、
店を出てから車で彼女を家の前まで送り、「また日曜に」と言って別れた。
「花の妖精フローラ」第一話 繰り返す思い出 第三節その4 [球体関節人形製作]
スペシャルサンドを見て百合菜が「食べてもいい?」と聞いてきたので、「ああ、僕もたべるよ」と返し、彼女はスペシャルサンドセットのミニサラダを一口食べた後、チキンカツが挟まったサンドイッチをおもむろに頬張った。
僕も負けじとオニオンバーガーセットのポテトを1本つまんで食べ、同じように厚めのオニオンフライとハンバーグが挟まったバーガーに噛《かじ》り付いた。
二人ともお昼を食べていなかった(彼女にいたっては朝も抜き)ので、彼女はサンドイッチを丸ごと1つ、僕は大きめのバーガーを半分ほど食べ終わるまではお互い無言であった。
お互いに食べる作業がちょっと一段落し、アイスコーヒーに彼女はガムシロップとミルクを両方、僕はミルクだけ入れて一口二口飲んだ後に、まず彼女が言った。
「受けたほうがいいってこと?」
「ああ。詳しくは知らないけど、SEになれば給与もあがるんじゃないかな?君は仕事に一生懸命取り組んでいるし」
僕は少ない情報の中、そう答えたのであるが、
「あなたも知っているように、うちの会社はとても忙しいのよ。SEになるってことは、残業や休日出勤がもっと増えるってことよ」
百合菜はそう言いながら僕の顔をじっと見つめてきた。
(あっ...そういうことか)
僕はハッとして、彼女を見つめ返した。
「そうか...ますます会う機会が減るかもしれないということか」
僕は返答に迷ったが、そう答えた。
百合菜はその後、関を切ったように話し出した。
「私は今の仕事にやりがいを感じているし、SEの仕事もやってみたいと思っているの。実際、今も半分はSEっぽい仕事をしているのだけどね。で、もし今回の試験を断れば、またしばらくの間は今のプログラマーのままになるけど、私としては、それはあまりやっていきたくないの」
そこで彼女は一旦言葉を切った。
「でも、何か別の道があれば、プログラマーのままでもいいかなって思ってる」
そして彼女は僕に判断を迫る言葉を言った。
「ねぇ、光一。あなたは私の事どうしたいと思ってるの?」
(うっ)
僕は一瞬返答に迷ったが、今日はなぜか妖精の写真を彼女に見せに飛んできたこともあり、思い切って発言する勢いがついていたようだった。
「花の妖精フローラ」第一話 繰り返す思い出 第三節その3 [球体関節人形製作]
「...私も今日はとっても変な話をするんだけど、」
百合菜は前置きして言った。
「もし、あなたがこの妖精の写真を撮らなかったら、私に電話してこなかったんじゃない?」
(あ...)
僕は一瞬、絶句してしまった。
確かにそうだったかもしれない。と思った。
「ごめん。そうだったかもしれない」
僕は素直に彼女の言葉を認めた。
「私ね、最近、仕事が忙しい忙しいとあなたに言ってたけれど、あなたも結構それを鵜呑みにして、私にあまり連絡してこなくなったよね?...それで、今朝も、私こうして休みなんだけれど、あなたと私ってこれからどうなっていくのかな?なんて思っていたの」
彼女は少々伏し目がちであるが、ちらちらと僕の方を見ていった。
僕は話の成り行きにちょっとドキドキしながら返事をした。
「そうか、そうだね。ちょっと僕も君に連絡することを怠けていたのかもしれない...悪かった。ごめん。これからは、もっと連絡する」
彼女は僕の返事にちょっとの間考えている様子であったが、間もなく話を切り出した。
「...実は、今日相談したいことというのは、私の仕事のことなの」
一瞬、別れ話を切り出されるのかと思った僕は、彼女の言葉に安堵したが、その後の展開は別の方向でまた僕を焦らせることになるのであった。
「あのね、今週末に課長に言われたんだけど、〈君は丁寧に仕事をしているし実績も上げているから、そろそろ社内のSE登用試験を受けてみたら?〉って言われたの」
百合菜はお手拭きを右手の人差し指で突《つつ》きながらそう言った。
「え?SEの登用試験?いいじゃな...」
僕が返事をしようとしたときに、スタッフの女の子がちょうど僕たちのテーブルにやって来て、
「おまたせしました。スペシャルサンドの方は?」
と聞いてきたので、百合菜が小さく手を挙げ、その目の前に美味しそうなスペシャルサンドが置かれ、
「こちらがオニオンバーガーです」
と僕の目の前に、こちらも美味しそうなオニオンバーガーが置かれた。
スタッフの女の子はその後、アイスコーヒーとガムシロップ、ミルクを僕たちの目の前に置いて、
「どうぞ、ごゆっくり」と言い残して厨房に去って行った。
百合菜は前置きして言った。
「もし、あなたがこの妖精の写真を撮らなかったら、私に電話してこなかったんじゃない?」
(あ...)
僕は一瞬、絶句してしまった。
確かにそうだったかもしれない。と思った。
「ごめん。そうだったかもしれない」
僕は素直に彼女の言葉を認めた。
「私ね、最近、仕事が忙しい忙しいとあなたに言ってたけれど、あなたも結構それを鵜呑みにして、私にあまり連絡してこなくなったよね?...それで、今朝も、私こうして休みなんだけれど、あなたと私ってこれからどうなっていくのかな?なんて思っていたの」
彼女は少々伏し目がちであるが、ちらちらと僕の方を見ていった。
僕は話の成り行きにちょっとドキドキしながら返事をした。
「そうか、そうだね。ちょっと僕も君に連絡することを怠けていたのかもしれない...悪かった。ごめん。これからは、もっと連絡する」
彼女は僕の返事にちょっとの間考えている様子であったが、間もなく話を切り出した。
「...実は、今日相談したいことというのは、私の仕事のことなの」
一瞬、別れ話を切り出されるのかと思った僕は、彼女の言葉に安堵したが、その後の展開は別の方向でまた僕を焦らせることになるのであった。
「あのね、今週末に課長に言われたんだけど、〈君は丁寧に仕事をしているし実績も上げているから、そろそろ社内のSE登用試験を受けてみたら?〉って言われたの」
百合菜はお手拭きを右手の人差し指で突《つつ》きながらそう言った。
「え?SEの登用試験?いいじゃな...」
僕が返事をしようとしたときに、スタッフの女の子がちょうど僕たちのテーブルにやって来て、
「おまたせしました。スペシャルサンドの方は?」
と聞いてきたので、百合菜が小さく手を挙げ、その目の前に美味しそうなスペシャルサンドが置かれ、
「こちらがオニオンバーガーです」
と僕の目の前に、こちらも美味しそうなオニオンバーガーが置かれた。
スタッフの女の子はその後、アイスコーヒーとガムシロップ、ミルクを僕たちの目の前に置いて、
「どうぞ、ごゆっくり」と言い残して厨房に去って行った。
「花の妖精フローラ」第一話 繰り返す思い出 第三節その2 [球体関節人形製作]
「えっ?本当?」
逆に僕は驚き、彼女が指し示した画像の部分を良く見てみた。
すると、妖精の女の子が下に飛び降りている瞬間を捉えたようで、女の子の黄緑の髪と上に伸ばした両腕の一部が画面の下に写っていた。
「飛び降りたのか!」
驚いている僕の顔を彼女はじっと見ていた。
「その様子じゃ、どうも本当のようね」
百合菜はそう言うと、少し笑った。
「最初に見たときはあなたが作ったCGの合成かと一瞬思ったけど、拡大してもとっても自然な画像で、しかも1枚後の写真にあなたは気づいていなかったし」
「おいおい、なんだか探偵みたいだな」
百合菜の洞察力に僕はちょっとどぎまぎとしていた。
そのとき、お店のスタッフの女の子が僕たちが座るテーブルに近づいてきた。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
「あ、ごめんなさい。今から決めるのでちょっと待って」
百合菜はメニューとにらめっこした。
「えーと、今日は光一のおごりだし、ブランチも食べ損なったし」
と少し笑いつつ僕を見て、
「じゃあ、スペシャルサンドのアイスコーヒーセットで...光一は?」
「あ、えーと、そうだ僕もお昼食べてなかった。じゃあオニオンバーガーのアイスコーヒーセットで」
「...ご注文を繰り返させていただきます。スペシャルサンドのアイスコーヒーセットを1つ、オニオンバーガーのアイスコーヒーセットを1つ、以上でよろしかったでしょうか?」
スタッフの女の子は言った。
「はい」
なぜだか、僕と百合菜の返事がハモってしまった。
「それでは、メニューをお下げします」
スタッフの女の子はそういうとクルリと向きを変えて厨房の方に歩いていった。
それを見届けた百合菜は再び口を開いた。
「花の妖精って、日本にもいるのかな?ヨーロッパの国にはいそうだけどね」
「日本にいてもおかしくないんじゃないかな?」
僕は彼女が妖精の写真を素直に受け入れてくれたことの喜びをかみしめつつ、
「そういえば、昔、子供のころ、コロボックルという小人が出てくる小説を読んだことがあるよ」
「あー、それなら、私も読んだことがある...実は...コロボックルって本当にいるとか?」
彼女は手を組み、少し首を傾けつつそう言った。
「そうだね。本当にいるのかもしれないね」
僕がそう答えると、
「この妖精の女の子。あなたのカメラの方を見ているよね?」
僕が気付いたことを彼女も指摘したが、続けて、
「明らかにカメラ目線よね。これって偶然なのかな?」
と鋭いことを言い出した。
「え?偶然じゃないってことは...意図的にってこと?」
僕は彼女の発想にまた驚かされた。