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青い炎と人形の物語 第7章 血と魔法 その2 [球体関節人形製作]

てぃねこ@ハニたろべネコです。

人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。

「青い炎と人形の物語」の第7章です。

 マリーの試練とは、いったい何が始まるのか?...では、物語をどうぞ。

第7章 血と魔法(その2)

「マリー、今週は、学校のほうはどうだったかい?」
 スプーンでシチューを口に運びながら、ラウラは陶器のコップの中の赤葡萄酒を飲んでいた。

「はい、特に大きなことは...いえ...ちょっと気になる転校生が来て...」
 マリーは焼けたジャガイモの皮を剥く手を休めて、少し言い淀《よど》んだ。

「ザーラのことかい?」

 ラウラの言葉にマリーは驚いた。
「え?なぜラウラ...いえ師匠はご存知なんですか?」

「転校生のザーラがマリーの監視役であることは、リーゼの手紙に書いてあったよ...ちょっと前までは、リーゼが全てを掌握していたが...今では、限られた報告だけが来るに留まっているそうだ」

 ラウラは、自分をじっと見つめ何事か質問しようとしているマリーの方を向いて、ついに決心してこう言った。

「ここに、お前のパパのフランツと、ママのルイーゼ、そしてリーゼが話したことが全て書いてある。
フランツが視察に行く直前に、ときを見てマリーに渡してくれと頼まれた手紙だ。もちろん、私にも読んでくれと言われていたのだよ...内容から考えると、早めにお前にも見せるべきだと私は思ったのさ」
 ラウラはそう言うと、やや分厚い手紙の封筒をマリーに手渡した。

 マリーはパパが視察の出張に行く前に、なぜ自分に直接話してくれなかったのかと、少々不満げに手紙を受け取り中を読んでいったが、読み進むにつれて、なぜフランツ・パパが手紙で伝えようとしたかが理解できた。

 直接、口頭で伝えるには、あまりにも赤裸々で恥ずかしいことや、大人の複雑な事情や、マリーにこれから降りかかるであろう厳しい現実の話が書かれていたのであった...

 しかし、フランツは何も隠すことなく、そのすべてを手紙を通して、マリーに打ち明けたのである。

「...そうだったのね、パパ...これで、すべての事が繋がったわ」
 聡明なマリーはその手紙で、今回のあらゆる事件の背後にあるものをすべて理解することができた。

「師匠...わたしが、内戦を止めなければならない運命なんですか?」
 マリーはとても10歳とは思えない言葉をラウラに投げ掛けた。

 マリーのその重い問い掛けに、ラウラは眉間に深いシワを寄せて、しばし言葉を忘れたように黙り込んだが、やがて口を開いた。

「...そうだね、それもマリーがこの世に生を受けた宿命かもしれん...私がお前に教えられる時間はほとんど無いかもしれんが、お前が進むべき道を多少は切り開き、通りやすくすることができるかもしれん」

 ラウラは、真剣な表情でそこまで言ったが、その後は優しい顔になった。

「今日は、いろいろあって疲れたじゃろう。夕飯を食べたら湯で体を拭いてから、ゆっくりとお休み、片付けは私がやるでな」

「...はい!師匠。いただきます!」

 そこから後は、二人は和やかにとりとめの無い話題で食事を楽しんだ。

 食事と、湯での体拭きが済んだ後に、マリーは何か体に違和感を覚えていた。

(なんだろう?下腹に鈍痛が...でもそれだけじゃなく、全身が怠くて痛痒いような...もしかして、これが?)

 マリーは迷わずラウラに、その事を告げた。

 ラウラは少々驚いたが、迷わずに言った。

「マリー、お前の思っている通り初潮の予告のようだね...幸い、明日から土日なのだから、ゆっくり休むといいよ。そこのベッドでお休み、カーテンをひいておくから...私はもう少しやることがあるのでな」

「ありがとう...ございます。ラウラ師匠...」
 マリーは全身に感じる倦怠感と痛痒さにそろそろと服を脱ぎ下着だけとなり、ベッドに潜り込んだ。

「おやすみ、マリー」
 ラウラの声に安心したマリーは、多少痛みはあるものの、ズブズブと眠りの中に落ちていった。

 ...ところで、やることがあるはずのラウラは冷や汗を流し始めていた。

(...私の今までの経験では、これは大変なことになるやもしれん!)
 
 ラウラは、大急ぎで、『命留めの秘薬』を作り始めた。

........

to be  continued...
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青い炎と人形の物語 第7章  血と魔法 その1 [球体関節人形製作]

てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。

「青い炎と人形の物語」の第7章です。
 いよいよ、マリーに試練の時が訪れようとしています...では、物語をどうぞ。

第7章 血と魔法(その1)

 森のはずれの少し木がまばらになった辺りに、その家はひっそりと建っていた。
 深い焦げ茶色で、大きさは、、、まぁ一人が暮らすには十分であったが、今日からは二人が暮らすことになるので、いささか窮屈《きゅうくつ》な間取りと言えた。

 そして、夕暮れの今、小さな煙突から香ばしく食欲をそそる匂いが立ち上り、冬の風にくるくると舞っていた。

 家の中にはやや歳の行った女が一人、暖炉のかまどの前で鉄鍋の中の濃い茶色の豚角と玉葱のシチューを杓子で1、2回ほどかき混ぜた後に、人参の形に似た何やら怪しげな肌色の根っこを鍋の中に投入した。

「この紅心人参がいいダシを出してくれるのさ」
 歳の行った女はそう言いながら、小さなテーブルの端にちょこんと座っている女の子の方を見た。

「あのー、ラウラおばさん...」
 女の子は立ち上がりつつ言った。この娘の名はマリー、魔法に目覚めたばかりであったが、その潜在能力には計り知れないものがあった。
「何か、手伝うことはありますか?」

「マリー、お前にひとつ言っておくことがある」
 ラウラは鍋から取り出した杓子を手に持ちつつ振り返ってマリーをじっと見た。

「こうして私の家で暮らして魔法を学ぶからには、私はお前の先生...いや師匠で、お前は弟子の立場となるのだよ...今からは私のことは師匠を呼びなさい」

「はい!わかりました。師匠」
 マリーは素直に返事をした。

「うむ、素直でよろしい」
 ラウラは機嫌よく答え、再び鍋の中のシチューを軽くかき混ぜた。
「それじゃ、まず、暖炉の中のジャガイモを火搔き棒で取り出して、このパンに入れておくれ」

「はい、師匠」
 マリーはラウラの傍に近寄り、しゃがみ込んで火搔き棒を使い、暖炉の燃える火の近くにある4つの灰だらけのジャガイモをコロコロと転がしてパンの中に入れた。

 そして数分後、二人は向かい合って椅子に座り、目の前テーブルには豚角と玉葱のシチューの入った深い皿と、浅い皿に入った灰を落としたジャガイモが2つ、そしてホットミルクの入った陶器のコップが乗っていた。

........

to be continued...

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青い炎と人形の物語 第6章 視察の朝の回想 その3 [球体関節人形製作]

こんばんは、てぃねこです。
遅くなりましたが、金曜夜の更新です。

青い炎と人形の物語 第6章 視察の朝の回想 その3

 リーゼは自分の出番の最後に言った。

「、、、残された手段はそれしかないわ、フランツ、わたしとしては、クーデターに賛成の立場だったけれど、、、マリーの力で主導権を取り戻そうとしたけれど、、、そう、うまくは行かなかったわね、、、フランツ。あとは、ルイーゼとマリーとで、あなたたちの思うようにやっていいわ。わたしも、、、ルイーゼと一緒になって、彼女の思考の影響を受けてしまったのかも、、、でも、魔女、狼人、鬼人の生存の権利を守ることは忘れないで!、、、それじゃ、ルイーゼと替わるわ...」そこまで言うと、リーゼはがっくりと首を垂れ、目を閉じた。

、、、が、リーゼは、まもなく目を開き、顔を上げた。

 その眼には、先ほどのリーゼとは異なる光が宿っていた。

「...フランツ!...久しぶりに夢以外で会ったわ...」声質はリーゼであるが、その声音はルイーゼのもの、また彼女から発せられた思考のベールはルイーゼのものであった。

「ルイーゼ!」フランツは思わず立ち上がり、ルイーゼことリーゼも椅子から立ち上がり、二人は強く抱き合った。

「ルイーゼ! マリーからの言葉で、僕も夢の中の君との会話をすべて思い出した、、、カーヤと付き合ったこと、何度か彼女と寝たことは、夢の中で君に懺悔したが、、、今、ここで、もう一度、懺悔したい...ルイーゼ、許してくれ」
フランツは抱擁を解いて、ルイーゼの両手を下から支えるようにして言った。

「...いいえ、フランツ、その懺悔はもういいわ。私が死んで肉体が無くなって、人形の中にいたのですもの、、、あなたが、カーヤと付き合ったことは、自然な流れよ」ルイーゼはそう言うと、フランツの両手を軽く握った。

「...実は、わたしも、ある意味、懺悔の必要があるのかもね...」ルイーゼは少し言いよどんだ。

「え?、、、それはいったい?」フランツは不思議に思った。

「...これは、リーゼお姉さまからも言っていいと言われたので、、、何かお姉さまに虐められている感じではあるのだけれど、、、実は、昨晩、狼人のダークに抱かれたのよ」とルイーゼは告白した。

「えっ?!...そ、そうか、、、リーゼ義姉さんは、、、」フランツはちょっと言葉に詰まった。

「、、、そう、ダークとは、ずっとそういう関係だったってこと。で、昨晩は、ある意味、お姉さまは、私を罰するために、この体をダークに抱かせたのよ!、、、でもね、フランツ、恥ずかしい話だけど、、、久しぶりに人の肉体に入って、、、狼人からの、、、あの体験をして、、、だいぶ、感じてしまったの、、、」ルイーゼはそう言うと、フランツの両手を握ったまま目を伏せた。

「、、、そ、そうか、、、ハハハ、そうだったんだね」フランツは、最後の言葉に、ちょっと嫉妬を感じつつ言った。

「...ところで、、、マリーがラウラさんのところに行く件は、納得してくれた?」ルイーゼは、いきなり話題を変えた。

「...ああ、[血の洗礼]のこともあるし、君とリーゼ義姉さんのこれからのこともあるし、それが一番いいと思ったよ」フランツは答えた。

「...今は、わたしは、直接、見守れないけれど、ラウラさんなら、きっと良くしてくれるわ」ルイーゼはそう言うと、再び、フランツと抱き合った。

「...ああ、、、しかし、さっきの話にもあったように、マリーは戦いに臨まなければいかないかもしれない、、、もちろん、そうなったら、僕も一緒に行くよ! 彼女の力にはなれないかもしれないけど!」フランツは最後の方は、少し力を込めて言った。

「、、、ええ、それは、わたしも覚悟しているわ、、、実は、お姉さまもそうなんだけれど、わたしの思考もお姉様の影響を強く受けているわ。以前の穏健派のわたしとは、少し変わってきているみたい...」ルイーゼは素直にそう言った。
「...君とリーゼ義姉さんは、これから、どうしていくんだい?」とフランツ。

「...マリーが[釣り上げの魔法]を習得しても、わたしの精神が移る先の肉体が無いものね...何年も人形の中に精神だけでいられたことが、今では、あり得ないことのように感じるわ、、、人の体に入って、ほんの2、3日のことなのにね、、、人の体の中にいたい、、、今は、強く、そう思うわ、、、」ルイーゼはそう言うと、再び抱擁を解いた。

 フランツの頭の中には、さきほどルイーゼが告白したダークとのことが浮かんできた。
「...そうだね。それは、そうだよね」彼は言った。

 そして、二人は再び、しっかりと抱き合い、今度は口づけを交わした。

 それから二人は、それ以外のことをしばらく話した後、フランツは再び、エルケが操る犬ゾリで、自宅へと帰ったのであった...

......

 列車の窓に雪混じりの少し強い風が吹きつけてきた。
 フランツは目の前の雪を払うような仕草をすると、眼をいったん閉じて、また開けた。

 すると、食堂車に行っていたカーヤが戻ってきた。

「お待たせ!フランツ先生、、、あら、どうしたの?」カーヤは、やや下を向いていたフランツの顔を覗き込んだ。
 その手には、ミルクチョコレートバーが2つ握られており、そのうちの1つをカーヤはフランツに手渡した。

「ああ、ありがとう、カーヤ、ちょっと寂しげな風景なんでね、ちょっと気が重くなっただけだよ」フランツは努めて元気に答えようとした。

「まぁ、視察は、これからなんだから!チョコ食べて元気だして!」カーヤは、4人用ボックス席の、フランツと向かい合う席に腰かけて、明るく言ったのであった。

to be continued...
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青い炎と人形の物語 第6章 視察の朝の回想 その2 [球体関節人形製作]

 こんにちは、てぃねこです。
 いろいろあって、すっかり更新が遅れてしまいました。
 すみません。
 では、遅れながらの更新です。どうぞ、お読み下さい!

青い炎と人形の物語 第6章 視察の朝の回想 その2

 フランツは、自分の発言内容からハッと気が付いた。

「、、、もしや!、クーデターを起こす?!」フランツは、また少々青ざめて言った。

「ふふふ、そうよ。フランツ、これを知ったからには、もう後戻りはできないわよ」リーゼは少々脅し気味に言い、更に続けた。
「さっき、帝国軍が駐留する条件があると言ったけど、帝国軍の中には、私たちの仲間が何人もいて、重要なポストを占めているわ」

「、、、ということは、ブルクハルト王子の命令で、、、!」とフランツ。

「そう、いくつもの中隊が動きだすのよ!、、、ただし、いざクーデターが勃発したら、部下の中には命令に従わない可能性のある根っからのファシーズ党の党員が何人もいるわ。、、、そう言った人は強制的に従わせるか、または排除すために魔女の力が必要になるのよ」リーゼの話は、いよいよ核心に近づいていった。

「魔女が持つ[集団幻覚の魔法]を使うのだけれど、何万人もの人間を相手にする場合には、相当な魔力が必要なので、何十人もの魔女が協力して、この術をかける必要があるわ。それでもうまくできるかどうか、、、でも、、、恐らく、私の見立てでは、これを一人だけでできる能力のある魔女が一人いるわ!」リーゼの言葉は熱を帯びてきた。

「...なるほど!、、、それが、娘のマリーなんだな」フランツは絞り出すように言った。

「その通り! あの娘《こ》は、もう間もなく初潮を迎え、もし[血の洗礼]を乗り越えられれば、そのあとは、真の強大な魔力が発現するでしょう。私が足元にも及ばないくらいのね」リーゼはやや妬《ねた》むように言った。

「、、、なんてこった!、、、いや!待て!マリーをそんな戦いに巻き込むわけにはいかないぞ!」フランツは椅子から立ち上がって小さく叫んだ。
「...まぁ、フランツ、お座りなさい。この後の私の話を聞いて?」リーゼは余裕をもって、フランツに話しかけた。

 フランツが青い顔して、また椅子に座り込むのを待って、リーゼは続けた。

「...フランツ、あなたも後戻りできないけど、実は私も後戻りできない状況なのよ」

「...えっ?!それは、どういうこと、、、」とフランツ。

「当初、マリーを引き込み、真の魔力が十分に使えるようになるまで1年はかかるので、それまでクーデターの発動は待つ計画だった。でも、ブルクハルト王子と超強硬派の動きが思いのほか早く、今では、私に情報は入るものの、クーデターの主導権はブルクハルト王子と超強硬派の一派に移ってしまい、私はオブザーバのような形になってしまったのよ!」
リーゼはそこで、少しくやしそうに顔をゆがめた。

「しかし!マリーのような魔法の能力者がいないのであれば、難しいのでは?」つフランツ。

「いえ、それがね、私も、完全につかんでいなかったのだけれど、双子の大変な魔法の能力者が現れたらしいの」とリーゼ。
「え?リーゼ義姉さんも知らなかったことが?」とフランツ。

「そう、その双子はともに12歳で、魔女と鬼人のハーフの女親と、魔女と狼人のハーフの父親との間に生まれた双子だったのよ!それは超強硬派の鬼人グループの間でひた隠しにされていた!」とリーゼは言い、さらに続けた。
「私が聞いた情報では、その二人の能力を合わせれば、何万人もの人間に対して[集団幻覚の魔法]をかけることができるらしいの!」

「じゃあ、クーデターの発動は可能?」とフランツ。

「そう、近々発動されるでしょう。私には、もう、そこまでの情報は伝えられなくなったわ」リーゼはさも落胆したように言い、顔を伏せた。

(なんということを知ってしまったのか、、、俺ももう後戻りはできないな!)フランツは青ざめながらも、心で覚悟を決めた。

「、、、しかし!なぜ保守的なファシーズ党の帝国軍は、鬼人を軍隊の中に入れたのだろう?まさか気が付かなかったわけではあるまいに、、、」フランツは首をかしげた。

「...ええ、軍はちゃんと知っているわ。保守的なファシーズ党の帝国軍ではあるけれど、鬼人の持つ特殊な身体的能力は、軍の中でも高い評価を得ていて、ファシーズ党と帝国軍に忠誠を誓った鬼人は数十人以上採用されて、今では軍の重要なポストに就いている者が何人もいるわ」リーゼはそう答えると、さらに続けた。
「...ただし、さすがに狼人は、身体的な能力が特殊すぎて、ほとんど軍には入隊していないわ、、、狼への変身がいやがられるのでね」

「なるほど、、、それで、超強硬派は鬼人が中心となったのか、、、」フランツはそう返すと、決意を込めて言葉を続けた。
「私自身も、後戻りできないことは十分理解しました!、、、しかし、、、今回の話を聞いたからには、何とかしてクーデターを止めたいと思います!リーゼ義姉さん!自治区の設立が決まったんです!帝国軍の駐留も改善の方向に持っていけるはずです!何とか考えを変えてもらえませんか?!」

「...後、1年、あなたが、私を説得すれば、もしかしたら、そういう道もあったかもしれないわね」リーゼはそういってフランツを見つめた。
「、、、でも、今となっては、もうクーデターの主導権は私には無くなった。もう、わたしには、止める術はないわ」

「...もし、さっきの双子の魔法の能力者がいなければ?!」フランツは急に思いついたように言った。

「...そうね。マリーがクーデターに協力しなければ、、、マリーが双子の魔法の能力者の力を封じれば、クーデターの発動は難しくなるでしょうね」リーゼは言った。

「あぁ...マリー! お前を、この戦いに巻き込むしかないのか!」

フランツは両手で頭を抱え込んだ。

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青い炎と人形の物語 第6章 視察の朝の回想 その1 [球体関節人形製作]

 てぃねこです。
 GW中の更新です。それでは、物語を始めます。


 第6章 視察の朝の回想 その1

 今日は、三民族統合自治区視察の行きの日程である。
 列車は祖国デイテュラントの国境線を超えて、ポルソーカ国に入り始めた。
 自治区の中心となる町に向かうための一番近い駅は、隣の国の国境に近いシュチェリン駅なのである。

 列車の窓から見えるうっすらと雪の降り積もった平原をぼんやりと眺めながら、フランツは4日前の出来事を回想していた。
 ......話は4日前、フランツが家に戻り、マリーとエルケに会った翌日のことである。

......

「久しぶりですね。フランツ」

 優しい口調で切り出したリーゼの言葉が意外な気がした。

「...そうですね。リーゼ義姉《ねえ》さん」
 フランツも、まずは静かに応じた。

 狼人エルケの操る犬ソリで、森の中のこの屋敷に来たが、10年以上来ていなかったこともあり、屋敷の中はずいぶんと模様替えした様子であった。
(確か、最後にここに来たときは、ルイーゼと二人で馬に乗って来たんだよな...)フランツはそう思いながら、部屋の周囲を見やった。

 そして、今の時点では、エルケも、そして、最初はリーゼのそばに立っていた狼人ダークも、応接室から出て行ったところであった。

「今回の件については、マリーには大変申し訳ないことをしました。謝ります」リーゼはそう言いながら、椅子に掛けた状態ではあったが、フランツに向かって深々と頭を下げた。

「マリーも無事に戻りましたし、これ以上咎《とが》める気はありませんが、、、私の言いたいことは2つです!」
 フランツは、そう言うと息をスゥーッと吸い込んだ。
「まずは、リーゼ義姉さん。あなたがマリーを拐《さら》った背後にある計画をお聞きしたい!、、、そして、あなたの中にいるルイーゼと話がしたい」

「...わかりました。フランツ。相反する立場では、ありますが、この際きちんとお話しましょう、、、ただし、、、」リーゼはそこで釘を刺すように言った。

「これを話す以上、このことを不用意に他言することは、こちらの命運を左右しますし、私の目の届かないところで、あなたやマリーの命にも関わりますので、お忘れなきように...」

「...それは、脅しですか?」とフランツ。

「いえ、警告です」とリーゼは返す。

 その言葉に対して、フランツは納得のうなずきをした。

「...では、お話ししましょう」リーゼは続けた。
「魔女、狼人、鬼人などの少数民族の解放に関しては、わたしたちは強硬派、あなたたちは穏健派と言えるでしょう。この立場の違いは、今まで受けた恐ろしい迫害の経験の有り無しが大きいので埋めることは不可能でしょう、、、」

「!、、、」フランツは一瞬反論しかけたが、まずはグッと抑えてリーゼの話を聞くことにした。

「...そして私たちは、少数民族の隔離や排除を最終的な目的としているファシーズ党を中心とした組織と戦う決断をしました。フランツ、あなた方メンシュナ党を中心とした人たちは、あくまで話し合いによる解決を行おうとしていましたね?」

 リーゼが話を自分に振ってきたので、フランツは応じて答えた。
「ええ、そうです。いくらあなたがた魔女、狼人、鬼人が精神能力的、身体能力的に通常の人間に比べて優れていたとしても、最新の兵器や軍隊をバックボーンとしたファシーズ党と戦争を起こすことは、悲惨な結果を招くだけです!そのため、われわれは、あくまで話し合いを通じて解決を図り、最終的には、今回の自治区設立にこぎつけたのですから」

「でも、内容としては、ファシーズ党の法案通りに軍隊が駐留することになったのでしょう?」リーゼは少し皮肉交じりの口調で言った。

「...さすがに、そこらへんの情報はすでに伝わってますね。」とフランツ。

「ええ、一般のニュース報道だけでなく、私たちの何人もの密偵が活躍してますのでね。当然、視察団のメンバや日程も知っています」とリーゼ。

「、、、すると、私の会った軍のザスキア少佐は、そのうちの一人ですか?」とフランツは返したが、ファシーズ党の帝国軍隊の中で、そんなことがありうるのだろうかといぶかしくも思い、半信半疑の状態であった。

「そうです。よくわかりましたね」リーゼは隠すこともなく言った。
「彼女は魔女と鬼人のハーフで、われわれの仲間です。この情報を漏らしただけでも、あなたの命は狙われるかもしれませんがね」

「...では」フランツは少々青ざめて、ちょっと迷ったが、勇気を持って更に尋ねた。
「ブルクハルト王子、いやブルクハルト少将もそうなのですか?」

「...そこのところが、私の想定外だったところなのですよ。フランツ!」リーゼの発言としては意外なものであった。

「もちろん、長い時間をかけて、私たちは、国民が根強い支持を持つ王族を仲間に引き入れるべく、影の活動を続けてきました。そして、現状では、ほぼ100%国王の座には就けないブルクハルト王子を、ようやく説き伏せて仲間に入れることに成功したのですよ」リーゼはそこで言葉を切った。

(!、、、そうだったのか!現国王には息子の王子が3人もいる。現国王の弟の二人目の息子であるブルクハルトに国王の座が渡ってくることはまずあり得ない!...ということは、ブルクハルト王子の野望は、、、!)フランツがそこまで考えたときに、リーゼが、その思考を読んだように後を続けた。

「そう、フランツ。ブルクハルト王子は自分の国が欲しかった。国王になりたかったのよ。それで自治区設立のために協力する気になったの」

「、、、いや、しかし、あくまで自治区であるし、更に今回は帝国軍の駐留という条件もあるから、国王というには無理があるのではないですか?、、、!!」フランツは、自分でそこまで言ってハッとしたのであった。

to be continued...
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