青い炎と人形の物語 第9章 魔法の女王 その1 [球体関節人形製作]
マリーは質素だが手の込んだなベッド上で月曜の午後はずっと目を閉じうつらうつらとしていた。
(...なんだろう?この胸の奥に輝いて回転する青い宝石は?...ラウラ師匠は、私の本当の力の根源が結晶化したものだと言っていたけれど...実際に胸の奥に宝石が入っているわけではない...でも、ハッキリと見える!...この宝石は私の一部なの?)
そのとき、マリーの精神の大部分が、自分でもはっきりとわかるほどに自分の身体と分離し、自分の身体を天井から見下ろしていることに気が付いた。
(え!?これって魂が身体から抜け出たの?、、、いえ、、、違うわ。それとは違う!分かる。分かるわ!、、、自分の精神の一部分はまだ、あの身体の中にある!)
彼女が思う通り、彼女が見下ろす身体は穏やかな寝息を立てて、軽く寝返りを打った。
(そう...身体に必要な最低限の精神は、あの身体に残って、今、宙に浮いている私の精神と繋がっている、、、でも、紐のようなものじゃない、、、何かの遠隔のやりとりで繋がっている!)
次の瞬間、マリーはラウラの小屋の外に出て、空中を飛んでいた。
小屋の前のベンチにはラウラとエルケが座って、何かを話し合っていたが、ラウラはふと上を見上げてマリーを見つけてびっくりして叫んだ。
「マ、マリー!あんた!」
エルケには見えないようで、
「え!?どうしたんですか?ラウラおばさん!」と言った。
『二人とも心配しないで、死んじゃったわけじゃないわ。精神の一部は身体に残って身体を守っているわ』
マリーは精神の会話で二人にメッセージを送ると同時に、エルケにも見えるように精神の身体から光を放った。
マリーの身体は、薄い水色の半透明の妖精のような姿で二人の頭上3mほどのところに出現した。
「マ、マリー!あなたなのね!」
マリーの姿を見てエルケも驚いて叫んだ。
『エルケ!私を守ってくれてありがとう!...ラウラ師匠、私、ちょっと、どこまで行けるか試してみていいですか?』
マリーは精神の身体の胸の奥に煌めき、回転する青い宝石から炎がチロチロと出ている様子を心眼で感じていた。
「...わかったよ。マリー!、、、いいよ、行っておいで!でも、お前の肉体はまだ弱っている!無理だけはするんじゃないよ!早めに戻っておいで」
ラウラは愛弟子を心配していた。
『はい、師匠、それじゃ、ちょっと行ってきます!』
マリーはそう言い残すと、ハリケーンの風のような速度で東の空に向けて飛んで行き、みるみるうちにその姿は点のようになって、やがて地平線の彼方に消えていった。
「これは...驚いたね。まだ、身体が弱っているというのに、あれだけの力を出現させるとは、、、長い間生きてきて、多くの弟子を見てきたけれど、あれほどの力は見たことがない...」
エルケは、それを聞き、ちょっと失礼な質問をした。
「ラウラおばさん...聞いたことが無かったですけれど、長生きだと聞いていますが、本当は何歳なんですか?」
「...レディに年を聞くとは失礼だが、同じ女性として、エルケには特別に答えてあげよう、、、ちなみに何歳くらいに見えるかい?」
「...えーと、60歳くらいでしょうか?」
ハハハとラウラは大笑いした。
「そう見えるかい?、、、まぁ、多少若く言っているんだろうね?、、、実は御年116歳さ!」
「えっ!?本当に?」
さすがのエルケもびっくりした。
「...本当だともさ。私のような魔女は150歳は生きるのさ!」
...to be continued.
(...なんだろう?この胸の奥に輝いて回転する青い宝石は?...ラウラ師匠は、私の本当の力の根源が結晶化したものだと言っていたけれど...実際に胸の奥に宝石が入っているわけではない...でも、ハッキリと見える!...この宝石は私の一部なの?)
そのとき、マリーの精神の大部分が、自分でもはっきりとわかるほどに自分の身体と分離し、自分の身体を天井から見下ろしていることに気が付いた。
(え!?これって魂が身体から抜け出たの?、、、いえ、、、違うわ。それとは違う!分かる。分かるわ!、、、自分の精神の一部分はまだ、あの身体の中にある!)
彼女が思う通り、彼女が見下ろす身体は穏やかな寝息を立てて、軽く寝返りを打った。
(そう...身体に必要な最低限の精神は、あの身体に残って、今、宙に浮いている私の精神と繋がっている、、、でも、紐のようなものじゃない、、、何かの遠隔のやりとりで繋がっている!)
次の瞬間、マリーはラウラの小屋の外に出て、空中を飛んでいた。
小屋の前のベンチにはラウラとエルケが座って、何かを話し合っていたが、ラウラはふと上を見上げてマリーを見つけてびっくりして叫んだ。
「マ、マリー!あんた!」
エルケには見えないようで、
「え!?どうしたんですか?ラウラおばさん!」と言った。
『二人とも心配しないで、死んじゃったわけじゃないわ。精神の一部は身体に残って身体を守っているわ』
マリーは精神の会話で二人にメッセージを送ると同時に、エルケにも見えるように精神の身体から光を放った。
マリーの身体は、薄い水色の半透明の妖精のような姿で二人の頭上3mほどのところに出現した。
「マ、マリー!あなたなのね!」
マリーの姿を見てエルケも驚いて叫んだ。
『エルケ!私を守ってくれてありがとう!...ラウラ師匠、私、ちょっと、どこまで行けるか試してみていいですか?』
マリーは精神の身体の胸の奥に煌めき、回転する青い宝石から炎がチロチロと出ている様子を心眼で感じていた。
「...わかったよ。マリー!、、、いいよ、行っておいで!でも、お前の肉体はまだ弱っている!無理だけはするんじゃないよ!早めに戻っておいで」
ラウラは愛弟子を心配していた。
『はい、師匠、それじゃ、ちょっと行ってきます!』
マリーはそう言い残すと、ハリケーンの風のような速度で東の空に向けて飛んで行き、みるみるうちにその姿は点のようになって、やがて地平線の彼方に消えていった。
「これは...驚いたね。まだ、身体が弱っているというのに、あれだけの力を出現させるとは、、、長い間生きてきて、多くの弟子を見てきたけれど、あれほどの力は見たことがない...」
エルケは、それを聞き、ちょっと失礼な質問をした。
「ラウラおばさん...聞いたことが無かったですけれど、長生きだと聞いていますが、本当は何歳なんですか?」
「...レディに年を聞くとは失礼だが、同じ女性として、エルケには特別に答えてあげよう、、、ちなみに何歳くらいに見えるかい?」
「...えーと、60歳くらいでしょうか?」
ハハハとラウラは大笑いした。
「そう見えるかい?、、、まぁ、多少若く言っているんだろうね?、、、実は御年116歳さ!」
「えっ!?本当に?」
さすがのエルケもびっくりした。
「...本当だともさ。私のような魔女は150歳は生きるのさ!」
...to be continued.
球体関節人形1号体制作の途中経過 [球体関節人形製作]
青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その10 [球体関節人形製作]
鬼人族の女[ヴァネサ]との情事の後に、フランツはうつ伏せに寝ている彼女の傍らで半身を起こし、窓の厚いカーテンを少しだけ開け、月明かりの青黒い闇に目を凝らしていた。
(しかし...妙なことになってしまった...これでは、マリーやルイーゼに申し訳が立たないな...カーヤにも...カーヤはザスキアに操られているように見えたが...彼女の意思はどこまで表れているのだろう?)
フランツがそこまで考えたときに、レオンの強力な精神の触手がフランツの頭に飛び込んできた。
『フランツさん。それでは、あなたにも戦場の現場を見せてあげましょう!心配はいりません。あなたの隣にいるヴァネサにはあなたの体を見守るように伝えてありますから』
フランツはレオンに、自分達の情事を盗み見られたのではないかと思い、顔から火が出るような思いにかられたが、レオンはさりげなく、その考えをかわした。
『今は、夜中の3時で、VV親衛隊の町への侵入が開始されたので、あなたの精神にコンタクトを取りました。僕は子供なのであなた方の行為を盗み見る趣味はありませんよ...というか、特に好き好んで見たくもありませんが』
レオンの大人の対応の思考に、フランツはやはり恥ずかしさを隠せなかったが、そのとき隣に寝ていたヴァネサが急に顔を上げ、
「いってらっしゃい。フランツさん」
と僅かに微笑んで言い、その直後にレオンが、
『それじゃ、行きますよ。フランツさん!』
と思念を流し込んで来ると、同時に、フランツの精神体の一部が身体から離脱し、レオンの精神体と共に宙を舞い、窓の外に飛び出した。
窓の外には4頭のコウモリが飛んでおり、そのうちの一頭にフランツの精神が飛び込むと同時に、フランツは自分がコウモリとして飛んでいることを意識した。
そして、自分の周囲にいる三頭のコウモリに、それぞれレオン、レオナ、ブルクハルトの精神体が憑依していることを認識した。
『彼らは全部で8人。今、町の中央の公民館兼ホテルに到着しつつありますが、ここで彼らには鬼ごっこをしてもらいましょう。レオナ!始めようか?』
レオンの言葉にコウモリのレオナが、
『ええ、レオン兄さん』
と、応じたところで、四頭のコウモリは音もなく公民館まで後100mと迫ったVV親衛隊を見下ろしていた。
VV親衛隊の一人が上空を旋回して飛んでいるコウモリに気づいたが、大事な作戦の途中なので、特に注意を払おうとはしなかった。
すると突然、公民館の近くの林から獣のようで人間と思われる妙にひしゃげた鳴き声がいくつも聞こえてきた。
VV親衛隊は、一斉に制音器付きのスナイパーライフルを鳴き声のする方向に向けて、暗視スコープを覗き込んだ。
スコープの先にはボロボロの衣服を纏い、顔面が真っ白で目だけが光った死人のような男達(ゾンビ)が10名、足を引き摺りながらも小走りに親衛隊の方に接近してきた。
親衛隊の隊員達は、冷静にゾンビの眉間目掛けて引き金をひいた。
ゾンビの眉間に弾丸の穴が開き、後頭部から脳漿が吹き出したが、ゾンビはちょっと速度を緩めただけで、そのまま突っ込んできた。
親衛隊の隊員達は慌てて陣形を崩したが、今度は自分達の左右のすぐ横にゾンビが表れたことに気付き、近距離からライフルの引き金を引いた。
近距離からの狙撃で頭を半分吹き飛ばされたゾンビは次々と倒れていったが、親衛隊の仲間達の姿もいつの間にか減っていき、最後は一人の隊員だけとなってしまった。
最後に残った隊員の一人に周囲のゾンビ8体程が一斉に襲いかかり、隊員はパニック状態でライフルを乱射しているところを、どこかから飛んで来たライフルの玉2~3発に上半身を撃ち抜かれて息絶えた。
戦闘はものの3分程で終了し、残って立ち竦んでいた8体のゾンビは煙のように姿を消してしまった。
この戦闘のほとんどが、ゾンビの幻を見せることで行われたことにコウモリ姿のフランツは衝撃を受けたのであった。
...to be continued.
青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その9 [球体関節人形製作]
第8章 戦慄の魔法兄妹 その9
「ブルクハルト王子...それは、もしやザスキアのことですか?」
フランツは少々驚いて尋ねた。
「...ええ。その通りですよ。フランツさん。私とザスキアとは、軍の中では上司と部下ですが、
それ以外では恋人関係とも言えますが...」
そこでブルクハルトは言い淀んだが続けて、
「何しろ、彼女は自由人で、こういった浮気は結構あってね...まあ、私も、似たようなところは
ありますが...もう、慣れましたよ」
と、そこまで言うと指を鳴らした。
すると、また給仕の二人の女性が現れ、ブルクハルトとフランツがほぼ食べ終えたメインディッシュの皿を下げると、続けて食後のウィンナコーヒーを運んで来た。
そして、二人の前にコーヒーのカップを置くと、厨房に戻らずに、そのまま二人の椅子の横に
一人ずつ立ったのであった。
ブルクハルトが、コーヒーを一口だけ飲んで立ち上がると、彼の横に立っていた25、6才の給仕の鬼人族の女性が彼の左腕に手を回した。
「それでは、レオンとレオナのショータイムまで、お互い休憩しましょう...それでは、また後程」
ブルクハルトと、その女性は腕を組んだまま、2階の部屋へと去っていった。
思わぬことの成り行きに呆気に取られたフランツは、椅子に座りながら左隣に立つ女性を見上げると、25、6才の銀色の髪の給仕の女性が口を開いた。
「ヴァネサと言います。フランツ先生、部屋までエスコートをお願いします」
フランツは、びっくりして、どうしたものかと迷っていると、ヴァネサは少しの悲しさと苛立ちを表した顔で言葉を繋げた。
「私に恥をかかせるつもりなのですか?」
彼女のその言葉にフランツは覚悟を決めて返答した。
「分かりました。行きましょう」
フランツはヴァネサに左腕を組ませて、ブルクハルト達が向かった2階の部屋へと歩を
進めて行った。
...to be continued.
「ブルクハルト王子...それは、もしやザスキアのことですか?」
フランツは少々驚いて尋ねた。
「...ええ。その通りですよ。フランツさん。私とザスキアとは、軍の中では上司と部下ですが、
それ以外では恋人関係とも言えますが...」
そこでブルクハルトは言い淀んだが続けて、
「何しろ、彼女は自由人で、こういった浮気は結構あってね...まあ、私も、似たようなところは
ありますが...もう、慣れましたよ」
と、そこまで言うと指を鳴らした。
すると、また給仕の二人の女性が現れ、ブルクハルトとフランツがほぼ食べ終えたメインディッシュの皿を下げると、続けて食後のウィンナコーヒーを運んで来た。
そして、二人の前にコーヒーのカップを置くと、厨房に戻らずに、そのまま二人の椅子の横に
一人ずつ立ったのであった。
ブルクハルトが、コーヒーを一口だけ飲んで立ち上がると、彼の横に立っていた25、6才の給仕の鬼人族の女性が彼の左腕に手を回した。
「それでは、レオンとレオナのショータイムまで、お互い休憩しましょう...それでは、また後程」
ブルクハルトと、その女性は腕を組んだまま、2階の部屋へと去っていった。
思わぬことの成り行きに呆気に取られたフランツは、椅子に座りながら左隣に立つ女性を見上げると、25、6才の銀色の髪の給仕の女性が口を開いた。
「ヴァネサと言います。フランツ先生、部屋までエスコートをお願いします」
フランツは、びっくりして、どうしたものかと迷っていると、ヴァネサは少しの悲しさと苛立ちを表した顔で言葉を繋げた。
「私に恥をかかせるつもりなのですか?」
彼女のその言葉にフランツは覚悟を決めて返答した。
「分かりました。行きましょう」
フランツはヴァネサに左腕を組ませて、ブルクハルト達が向かった2階の部屋へと歩を
進めて行った。
...to be continued.
青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その8 [球体関節人形製作]
第8章 戦慄の魔法兄妹 その8
「僕とレオナの二人で応戦しますよ」
レオンが答え、それに対してレオナも頷いた。
「二人だけで?」
フランツはいぶかしげに尋ねた。
「...フランツさん。僕たちの力をあなどってはいけませんよ?今まであなたにお見せしたものは、ほんの小手調べです。本番の戦いのときには...あなたの頭に戦いのイメージを送りましょう」
「そうよ!レオン兄さんは凄いんだから!」
レオナが追いかけるように付け足した。
「情報によれば」とブルクハルト。
「敵の奇襲は明日の未明、朝の4時だとのことです...それまでは、フランツさん。お部屋でゆっくりとお休みください...時間がくればハウスキーパーの女が起こしに行きます」
「...私のことは拘束しないのですか?」
「あなたは逃げたり、下手な抵抗をする人ではないでしょう。もっとも逃げることは不可能ですがね」
ブルクハルトはそこまで言うとザスキアに目配せし、後の会話をザスキアが引き継いだ。
「...で、フランツ先生。お願いがあるの...」
そう言ったザスキアの目は、やや情熱の光を帯びていた。
「...行こう。レオナ」
ザスキアの話し方に、その後の展開を察知したレオンはレオナを促し、二人は厨房に入って行った。
「...気を回してくれて、レオンは助かるわ」
ザスキアは話を続けた。
「もう察しがついていると思うけれど...フランツ先生、しばらくカーヤを私に貸してもらえないかしら?」
ザスキアが、彼とカーヤとの関係を知っている上での発言であることをフランツは理解したが、まずはこう答えた。
「...それは、カーヤにとっては本心では無いと思うけどね?」
「...フランツ先生、だから、これから私が口説くのよ...カーヤを。いいでしょ?」
そう言いながらザスキアは左手の指先をフランツの右手の甲に這わせてきた。
「...ザスキア。君は、両刀使いなのか?」
フランツの問いにカーヤは、
「ふふっ。そうよ。カーヤにもその素質はあるけどね?」
と答えた。
カーヤの言葉には嘘は無いように思ったフランツは言った。
「...まぁ、君の好きにしてくれればいいよ。どうせ逆らえないのだろう?その先の展開がどうなるかは知らないが」
「話が早い男《ひと》って好きよ!じゃあ、また後ほど...」
ザスキアはそう言うと、メインディッシュの途中で席を立ち、カーヤを伴って食堂を出て行った。
「...私も恋人を取られたな」
ブルクハルトがワイングラスを掲げながら言った言葉にフランツはまたも驚かされた。
...to be continued.
「僕とレオナの二人で応戦しますよ」
レオンが答え、それに対してレオナも頷いた。
「二人だけで?」
フランツはいぶかしげに尋ねた。
「...フランツさん。僕たちの力をあなどってはいけませんよ?今まであなたにお見せしたものは、ほんの小手調べです。本番の戦いのときには...あなたの頭に戦いのイメージを送りましょう」
「そうよ!レオン兄さんは凄いんだから!」
レオナが追いかけるように付け足した。
「情報によれば」とブルクハルト。
「敵の奇襲は明日の未明、朝の4時だとのことです...それまでは、フランツさん。お部屋でゆっくりとお休みください...時間がくればハウスキーパーの女が起こしに行きます」
「...私のことは拘束しないのですか?」
「あなたは逃げたり、下手な抵抗をする人ではないでしょう。もっとも逃げることは不可能ですがね」
ブルクハルトはそこまで言うとザスキアに目配せし、後の会話をザスキアが引き継いだ。
「...で、フランツ先生。お願いがあるの...」
そう言ったザスキアの目は、やや情熱の光を帯びていた。
「...行こう。レオナ」
ザスキアの話し方に、その後の展開を察知したレオンはレオナを促し、二人は厨房に入って行った。
「...気を回してくれて、レオンは助かるわ」
ザスキアは話を続けた。
「もう察しがついていると思うけれど...フランツ先生、しばらくカーヤを私に貸してもらえないかしら?」
ザスキアが、彼とカーヤとの関係を知っている上での発言であることをフランツは理解したが、まずはこう答えた。
「...それは、カーヤにとっては本心では無いと思うけどね?」
「...フランツ先生、だから、これから私が口説くのよ...カーヤを。いいでしょ?」
そう言いながらザスキアは左手の指先をフランツの右手の甲に這わせてきた。
「...ザスキア。君は、両刀使いなのか?」
フランツの問いにカーヤは、
「ふふっ。そうよ。カーヤにもその素質はあるけどね?」
と答えた。
カーヤの言葉には嘘は無いように思ったフランツは言った。
「...まぁ、君の好きにしてくれればいいよ。どうせ逆らえないのだろう?その先の展開がどうなるかは知らないが」
「話が早い男《ひと》って好きよ!じゃあ、また後ほど...」
ザスキアはそう言うと、メインディッシュの途中で席を立ち、カーヤを伴って食堂を出て行った。
「...私も恋人を取られたな」
ブルクハルトがワイングラスを掲げながら言った言葉にフランツはまたも驚かされた。
...to be continued.