青い炎と人形の物語 第3章その4 [球体関節人形製作]
てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。
「青い炎と人形の物語」の第3章の続きです。
それでは、どうぞ。
第3章 覚醒した魔法(その4)
「ビシッ!」ロープが激しく引っ張られる音とともにベッドの上のリーゼの顔は激しく歪んだ。
(わたしの中に!入ってくるとはっ!)
頭の中でリーゼは激しくもがいて言った。
(ルイーゼ!!許さん!お前を引き裂いてやるっ!!)
頭の中のルイーゼも負けてはいなかった。
(リーゼお姉さま!暴れるのは勝手だけれど、それはお姉さま自身の肉体を傷つけるわよ!)
ルイーゼの精神はリーゼの頭の中でリーゼの精神と組み合った。
(このまま、お姉さまが激高を続ければ!)ルイーゼは言い放った。(私もお姉さまも、揃って狂人になって、永遠にこの頭の中の囚人になるわ!!)
(!!.....)
リーゼとルイーゼの精神はリーゼの頭の中で、まるで肉体があるかのごとく組み合っていたが、やがてリーゼの力が抜け、合わせてルイーゼも力を抜いた。
(ルイーゼ!...)リーゼは妹から少し距離を置いて、落ち着きを取り戻しつつ言った。
(お前にこんな力があったとは!...油断したよ)
姉は自分の頭の隅に片ヒザを立てて座り込んだ。
(いいえ、お姉さま、私の力だけじゃないわ。)ルイーゼも距離を置き、姉に対面する位置に同じように座った。
ー
(私の娘のマリーの力も合わさった結果よ)
リーゼは驚きながらも、やや微笑みながら言った。
(そうか!...なるほど...私が期待した以上に、マリーの力が覚醒したのか!)そして続けた。
(大したものだね、ルイーゼ)姉は妹を見つめた。(人形の中に精神がある状態で娘を教育したのだね?)
(ええ、マリーが深く眠っている夢の中で、ほぼ毎晩ね。だから、あの子は今日まで、それに気が付かなかった)ルイーゼも姉を見つめ返した。
それを聞いたリーゼは、やや首を傾けると(さて...ルイーゼ、あなたは、いつまで、ここにいるのかしら?)と、呟くように、しかし、少し迫力を込めて問いかけた。
(マリーは、まだ〈釣り上げの魔法〉を習得の途中だった...誰かがマリーを教育しないと、ずっと、ここに二人でいることになるわ!)ルイーゼは決定的な結論を姉に突き付けた。
(...なるほど、そういうことね...わかったわ。ルイーゼ、しばらく休戦しましょう。...でもね!、言っておくことがあるわ、ルイーゼ!、こうして私の体の中に二人でいる間は、私のプライベートな引出しは無闇に開けないでちょうだい!)リーゼは少々ドスのきいた声で意志を伝えた。
(わかっているわ、お姉さま、私はあくまでオブザーバーの立場で振る舞うわ)ルイーゼは落ち着いた話し方から、こちらも少々覚悟を持った声音に変わった。(でも、もしマリーを無理やり巻き込もうとするなら、こちらも手段を選ばないわ!)
リーゼの身体中の神経と共存を始めたルイーゼの無意識の精神が、一瞬だけリーゼの身体を支配した。
(!!...なるほどねぇ、ルイーゼ)リーゼは少々驚きつつも予想通りという様に応え、続けた。
(...マリーの教育係としてラウラはどうかしら?)
意外な提案にルイーゼも少々驚いたが、すぐに応じた。
(あぁ、あのラウラおばさんね。彼女は一貫して中立の立場だったわ、...引き受けてくれるかしら?)
(それは、私に任せて頂戴)リーゼは自分の頭の中の引出しを1つ開け、ラウラに関するその理由をルイーゼに見せた。
(...さすがに、お姉さまの伝は凄いわね...)ルイーゼは素直に感心した。
リーゼの怒りの嵐の思考の間は、それを見守るダークもやや緊張したが、その後、リーゼが目を閉じ、何事か考えている(?)様子だったので、ダークも少しホッとしていた。
やがて、リーゼの目が開き、ダークに明確な思考が伝わってきた。
(ダーク、リーゼよ。しばらくはルイーゼと共存するけれど、命令は私からのものよ)
ダークは、その思考のフィールドの特徴から直ぐにリーゼのものであると理解した。
「わかりました。リーゼ様」彼はそう答え、その後のリーゼの命令から、彼女の拘束を全て解き、ベッドから彼女を起こし、窓際の書斎机の灯りを点し、便箋とペンを用意した。
リーゼは机の前に座ると、ホッと一息つきながら言った。
「ダーク、お茶をお願い」
「はい、リーゼ様」ダークはしなやかな身のこなしで部屋の外に出て行った。
しばらくして、ダークは主人の部屋にお茶を持って戻ってくると、ポットのハーブティーを大きめのカップに注ぎ、リーゼに手渡した。
リーゼは香りを楽しみつつ一口飲むと、ダークに手紙を渡して言った。
「エルケが戻ったら、これをラウラのところに持って行って頂戴。手紙には、私とルイーゼとのこと、ラウラにマリーの魔法の先生を依頼したいことが書いてあるわ...さて、私は疲れたので休みます」
「かしこまりました、リーゼ様」ダークは軽く微笑みつつ思った。(...とりあえず、革命の計画は、このまま続行できそうだな)、そして狼人は主人の部屋を後にした。
........
to be continued...
p.s. 次回からの第4章は、場面が変わり、新しい展開です。
お楽しみに。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。
「青い炎と人形の物語」の第3章の続きです。
それでは、どうぞ。
第3章 覚醒した魔法(その4)
「ビシッ!」ロープが激しく引っ張られる音とともにベッドの上のリーゼの顔は激しく歪んだ。
(わたしの中に!入ってくるとはっ!)
頭の中でリーゼは激しくもがいて言った。
(ルイーゼ!!許さん!お前を引き裂いてやるっ!!)
頭の中のルイーゼも負けてはいなかった。
(リーゼお姉さま!暴れるのは勝手だけれど、それはお姉さま自身の肉体を傷つけるわよ!)
ルイーゼの精神はリーゼの頭の中でリーゼの精神と組み合った。
(このまま、お姉さまが激高を続ければ!)ルイーゼは言い放った。(私もお姉さまも、揃って狂人になって、永遠にこの頭の中の囚人になるわ!!)
(!!.....)
リーゼとルイーゼの精神はリーゼの頭の中で、まるで肉体があるかのごとく組み合っていたが、やがてリーゼの力が抜け、合わせてルイーゼも力を抜いた。
(ルイーゼ!...)リーゼは妹から少し距離を置いて、落ち着きを取り戻しつつ言った。
(お前にこんな力があったとは!...油断したよ)
姉は自分の頭の隅に片ヒザを立てて座り込んだ。
(いいえ、お姉さま、私の力だけじゃないわ。)ルイーゼも距離を置き、姉に対面する位置に同じように座った。
ー
(私の娘のマリーの力も合わさった結果よ)
リーゼは驚きながらも、やや微笑みながら言った。
(そうか!...なるほど...私が期待した以上に、マリーの力が覚醒したのか!)そして続けた。
(大したものだね、ルイーゼ)姉は妹を見つめた。(人形の中に精神がある状態で娘を教育したのだね?)
(ええ、マリーが深く眠っている夢の中で、ほぼ毎晩ね。だから、あの子は今日まで、それに気が付かなかった)ルイーゼも姉を見つめ返した。
それを聞いたリーゼは、やや首を傾けると(さて...ルイーゼ、あなたは、いつまで、ここにいるのかしら?)と、呟くように、しかし、少し迫力を込めて問いかけた。
(マリーは、まだ〈釣り上げの魔法〉を習得の途中だった...誰かがマリーを教育しないと、ずっと、ここに二人でいることになるわ!)ルイーゼは決定的な結論を姉に突き付けた。
(...なるほど、そういうことね...わかったわ。ルイーゼ、しばらく休戦しましょう。...でもね!、言っておくことがあるわ、ルイーゼ!、こうして私の体の中に二人でいる間は、私のプライベートな引出しは無闇に開けないでちょうだい!)リーゼは少々ドスのきいた声で意志を伝えた。
(わかっているわ、お姉さま、私はあくまでオブザーバーの立場で振る舞うわ)ルイーゼは落ち着いた話し方から、こちらも少々覚悟を持った声音に変わった。(でも、もしマリーを無理やり巻き込もうとするなら、こちらも手段を選ばないわ!)
リーゼの身体中の神経と共存を始めたルイーゼの無意識の精神が、一瞬だけリーゼの身体を支配した。
(!!...なるほどねぇ、ルイーゼ)リーゼは少々驚きつつも予想通りという様に応え、続けた。
(...マリーの教育係としてラウラはどうかしら?)
意外な提案にルイーゼも少々驚いたが、すぐに応じた。
(あぁ、あのラウラおばさんね。彼女は一貫して中立の立場だったわ、...引き受けてくれるかしら?)
(それは、私に任せて頂戴)リーゼは自分の頭の中の引出しを1つ開け、ラウラに関するその理由をルイーゼに見せた。
(...さすがに、お姉さまの伝は凄いわね...)ルイーゼは素直に感心した。
リーゼの怒りの嵐の思考の間は、それを見守るダークもやや緊張したが、その後、リーゼが目を閉じ、何事か考えている(?)様子だったので、ダークも少しホッとしていた。
やがて、リーゼの目が開き、ダークに明確な思考が伝わってきた。
(ダーク、リーゼよ。しばらくはルイーゼと共存するけれど、命令は私からのものよ)
ダークは、その思考のフィールドの特徴から直ぐにリーゼのものであると理解した。
「わかりました。リーゼ様」彼はそう答え、その後のリーゼの命令から、彼女の拘束を全て解き、ベッドから彼女を起こし、窓際の書斎机の灯りを点し、便箋とペンを用意した。
リーゼは机の前に座ると、ホッと一息つきながら言った。
「ダーク、お茶をお願い」
「はい、リーゼ様」ダークはしなやかな身のこなしで部屋の外に出て行った。
しばらくして、ダークは主人の部屋にお茶を持って戻ってくると、ポットのハーブティーを大きめのカップに注ぎ、リーゼに手渡した。
リーゼは香りを楽しみつつ一口飲むと、ダークに手紙を渡して言った。
「エルケが戻ったら、これをラウラのところに持って行って頂戴。手紙には、私とルイーゼとのこと、ラウラにマリーの魔法の先生を依頼したいことが書いてあるわ...さて、私は疲れたので休みます」
「かしこまりました、リーゼ様」ダークは軽く微笑みつつ思った。(...とりあえず、革命の計画は、このまま続行できそうだな)、そして狼人は主人の部屋を後にした。
........
to be continued...
p.s. 次回からの第4章は、場面が変わり、新しい展開です。
お楽しみに。
青い炎と人形の物語 第3章その3 [球体関節人形製作]
てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。
「青い炎と人形の物語」の第3章の続きです。
それでは、どうぞ。
第3章 覚醒した魔法(その3)
「私、ママと一緒に〈背中を押す魔法〉を習ったの」マリーはつぶやくように言ったが、彼女の思考のベールによって、ソリの上でもその言葉は十分に聞き取れた。
エルケは少々驚いたが、黙ったまま、マリーの話の続きを待った。
「〈背中を押す魔法〉と反対の〈釣り上げの魔法〉は、まだ習っている途中だった。〈釣り上げの魔法〉は〈背中を押す魔法〉と同じように、頭から外に出て、ほかの人や物に移るという強い気持ちが必要なの」
マリーの説明に驚きながらもエルケは言った。
「なるほど、、、あの魔法の力は、あなたの力が大きかったのね?、、、ということは、ルイーゼ様だけでは、できない?」
「そう、二人の魔法の力がうまく合わないとできないの」マリーは答えた。
「じゃあ、リーゼ様とルイーゼ様は、しばらくは今のままなのね?」エルケは念を押すように尋ねた。
「うん、そうなる」マリーは力なくそう答え、目を伏せた。
それを見てエルケもそれ以上追及することはやめた。
マリーの家の前で別れるときにエルケは言った。
「マリー、リーゼ様は私たち狼人や魔女、鬼人の一族を救おうとしています」彼女は一度目を伏せてから続けた。
「ルイーゼ様も、その点は同じだったと聞いています、、、だから、マリーにもそうであって欲しいです」エルケは最後は哀願するように言った。
「うん、エルケさん、私も小さいときにママにそう教えてもらった」マリーはやや明るく言った。
「皆さんのことは秘密にしておくからね」
「ありがとう、マリー!さようなら」エルケはそう言い残すとソリと共に去って行った。
マリーはエルケのソリを手を振って見送っていたが、ひざまづいてセントバーナード犬のベルガーの鼻先にキスをした。
「ありがとうベルガー!ママを連れてきてくれて」
「なに、いつも遊んでくれるお礼さ。それじゃ、おやすみ」ベルガーはそう言うと自分の家の方角に去って行った。
「サミーもありがとう」マリーは黒猫のサミーを抱き上げて、その首筋に顔をうずめた。
「いやー、おいらもスージーを咥えて屋根に登って頑張ったよ」とサミー。
二人は静かに家の中に入って行った。
東の空がぼんやりと明るくなり、夜明けは、もうまもなくであった。
........
リーゼの館の2階の主人の部屋では、リーゼの両手、両足がロープでベッドの4隅にくくられて、口は舌を噛まないようにタオルケットでさるぐつわを咬まされていた。
「リーゼ様、いや、ルイーゼ様」ベッドの横の椅子に座っている狼人のダークは言った。
「何かあれば、どうぞ思考でお伝えください」
思考のベールを使ってベッドの上のリーゼ、いや今はルイーゼの女は答えた。
(今は何も、、、いえ、、、起きてきたわ、お姉さまが!、、、ダーク!見ていてちょうだい!)
(なっ、るっ、ルイーゼ!!おまえは、あああああっー!)リーゼの頭の中でリーゼが叫び、その恐ろしい声と表情は体にも現れた。
........
to be continued...
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。
「青い炎と人形の物語」の第3章の続きです。
それでは、どうぞ。
第3章 覚醒した魔法(その3)
「私、ママと一緒に〈背中を押す魔法〉を習ったの」マリーはつぶやくように言ったが、彼女の思考のベールによって、ソリの上でもその言葉は十分に聞き取れた。
エルケは少々驚いたが、黙ったまま、マリーの話の続きを待った。
「〈背中を押す魔法〉と反対の〈釣り上げの魔法〉は、まだ習っている途中だった。〈釣り上げの魔法〉は〈背中を押す魔法〉と同じように、頭から外に出て、ほかの人や物に移るという強い気持ちが必要なの」
マリーの説明に驚きながらもエルケは言った。
「なるほど、、、あの魔法の力は、あなたの力が大きかったのね?、、、ということは、ルイーゼ様だけでは、できない?」
「そう、二人の魔法の力がうまく合わないとできないの」マリーは答えた。
「じゃあ、リーゼ様とルイーゼ様は、しばらくは今のままなのね?」エルケは念を押すように尋ねた。
「うん、そうなる」マリーは力なくそう答え、目を伏せた。
それを見てエルケもそれ以上追及することはやめた。
マリーの家の前で別れるときにエルケは言った。
「マリー、リーゼ様は私たち狼人や魔女、鬼人の一族を救おうとしています」彼女は一度目を伏せてから続けた。
「ルイーゼ様も、その点は同じだったと聞いています、、、だから、マリーにもそうであって欲しいです」エルケは最後は哀願するように言った。
「うん、エルケさん、私も小さいときにママにそう教えてもらった」マリーはやや明るく言った。
「皆さんのことは秘密にしておくからね」
「ありがとう、マリー!さようなら」エルケはそう言い残すとソリと共に去って行った。
マリーはエルケのソリを手を振って見送っていたが、ひざまづいてセントバーナード犬のベルガーの鼻先にキスをした。
「ありがとうベルガー!ママを連れてきてくれて」
「なに、いつも遊んでくれるお礼さ。それじゃ、おやすみ」ベルガーはそう言うと自分の家の方角に去って行った。
「サミーもありがとう」マリーは黒猫のサミーを抱き上げて、その首筋に顔をうずめた。
「いやー、おいらもスージーを咥えて屋根に登って頑張ったよ」とサミー。
二人は静かに家の中に入って行った。
東の空がぼんやりと明るくなり、夜明けは、もうまもなくであった。
........
リーゼの館の2階の主人の部屋では、リーゼの両手、両足がロープでベッドの4隅にくくられて、口は舌を噛まないようにタオルケットでさるぐつわを咬まされていた。
「リーゼ様、いや、ルイーゼ様」ベッドの横の椅子に座っている狼人のダークは言った。
「何かあれば、どうぞ思考でお伝えください」
思考のベールを使ってベッドの上のリーゼ、いや今はルイーゼの女は答えた。
(今は何も、、、いえ、、、起きてきたわ、お姉さまが!、、、ダーク!見ていてちょうだい!)
(なっ、るっ、ルイーゼ!!おまえは、あああああっー!)リーゼの頭の中でリーゼが叫び、その恐ろしい声と表情は体にも現れた。
........
to be continued...
青い炎と人形の物語 第3章その2 [球体関節人形製作]
てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。
「青い炎と人形の物語」の第3章の続きです。
それでは、どうぞ。
第3章 覚醒した魔法(その2)
(!!なにっ?!)
予想もしなかった衝撃に、リーゼの精神は嵐の中の木葉のように翻弄された。
リーゼが人形を手から離した瞬間にマリーは人形を受け止め、その直後、リーゼが後退りし、よろけたところを狼人のダークが受け止めて身体を支えた。
「リーゼ様?!大丈夫ですか?!」ダークは鋭く言った。
目の焦点が定まらない様子で、リーゼはつぶやくように言った。「...私は、今は、ルイーゼよ」
狼人のダークとエルケは、その言葉に唖然とした。
「リーゼ様は?!どこに?!」エルケはそう叫ぶと、すぐさまリーゼのところに駆け寄った。
リーゼという名前の女は、ダークに掴まりながらも一人で立ち上がって言った。
「安心して。今はショックで頭の中で眠っているところだから...でも、そのうち起きてくるでしょう」
その発言を聞いて、ダークとエルケは顔を見合わせた。
そして、今はルイーゼのリーゼは言った。「ダーク、エルケ、二人にお願いします。マリーを家に帰してあげて下さい。外に仲間の犬と猫が待っています。そして...」彼女は意を決して告げた。
「しばらく、私が動けないようにベッドに縛りつけておいて下さい」
この発言には、ダークもエルケも驚き困った顔をした。
「もし、今のあなたがリーゼ様でないとしても、リーゼ様が中にいる以上、手荒なことはできませんが...まずは、あなたの言うことに従いましょう」ダークはそう言うとエルケに目配せして言った。「エルケ、お前はマリーお嬢さんを外の仲間に渡してくれ、ソリを使っていいぞ」
「わかりました。お兄様」エルケはそう答えると、しゃがみこんで、人形を抱き締めているマリーの目を見つめて言った。
「マリー、大変だったわね。今からお家に帰れるわ」
ダークはエルケのそんな様子を見て、マリーと視線が合うと、軽くサヨナラの挨拶をして「失礼します、リーゼ様」と言うと、リーゼを軽々と抱き上げた。
「ママ!」マリーはリーゼの姿のルイーゼに呼び掛けた。
「マリー、心配しなくていいわ。ママはしばらくしたら戻るからね」ルイーゼは疲労の顔の中でも、微笑みながら言った。
リーゼを抱き上げたダークは、彼女を静かに2階の主人の部屋へと運んで行った。
お客用の外套をマリーの肩に掛け、自分も外出用のショールをまとったエルケは玄関の外に出ると指笛を鳴らした。
深夜の稽古で魔法に覚醒したマリーは、母親と同様に精神のフィールドを拡大した。
(サミー!ベルガー!あなたたちだったのね?)マリーは嬉しそうに思考を伝えた。
(マリー!無事だったんだ!)サミーはマリーと話すのは初めてだったが、スムーズに答えた。
(話すのは初めてだな。マリー、無事で良かった)ベルガーがホッとした口調で答えた。
(私も狼とは感情の思考をやりとりできるけど、他の動物とこんなに明確に話せたのは初めてだわ)エルケはマリーの覚醒した力に少々驚きながらも口を挟んできた。
そこで流れた3者の感情は、少なくとも敵では無いというもので、3者はそれを共有した。
まもなく、狼2頭立てのソリが現れ、マリー、エルケ、サミーが乗り込み、ベルガーは搭乗を固辞して、ソリの後ろを追いかけた。
「マリー、リーゼ様とルイーゼ様はこれからどうなるの?」
ソリを操りながらエルケは心配そうにマリーに聞いた。
.......
to be continued...
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。
「青い炎と人形の物語」の第3章の続きです。
それでは、どうぞ。
第3章 覚醒した魔法(その2)
(!!なにっ?!)
予想もしなかった衝撃に、リーゼの精神は嵐の中の木葉のように翻弄された。
リーゼが人形を手から離した瞬間にマリーは人形を受け止め、その直後、リーゼが後退りし、よろけたところを狼人のダークが受け止めて身体を支えた。
「リーゼ様?!大丈夫ですか?!」ダークは鋭く言った。
目の焦点が定まらない様子で、リーゼはつぶやくように言った。「...私は、今は、ルイーゼよ」
狼人のダークとエルケは、その言葉に唖然とした。
「リーゼ様は?!どこに?!」エルケはそう叫ぶと、すぐさまリーゼのところに駆け寄った。
リーゼという名前の女は、ダークに掴まりながらも一人で立ち上がって言った。
「安心して。今はショックで頭の中で眠っているところだから...でも、そのうち起きてくるでしょう」
その発言を聞いて、ダークとエルケは顔を見合わせた。
そして、今はルイーゼのリーゼは言った。「ダーク、エルケ、二人にお願いします。マリーを家に帰してあげて下さい。外に仲間の犬と猫が待っています。そして...」彼女は意を決して告げた。
「しばらく、私が動けないようにベッドに縛りつけておいて下さい」
この発言には、ダークもエルケも驚き困った顔をした。
「もし、今のあなたがリーゼ様でないとしても、リーゼ様が中にいる以上、手荒なことはできませんが...まずは、あなたの言うことに従いましょう」ダークはそう言うとエルケに目配せして言った。「エルケ、お前はマリーお嬢さんを外の仲間に渡してくれ、ソリを使っていいぞ」
「わかりました。お兄様」エルケはそう答えると、しゃがみこんで、人形を抱き締めているマリーの目を見つめて言った。
「マリー、大変だったわね。今からお家に帰れるわ」
ダークはエルケのそんな様子を見て、マリーと視線が合うと、軽くサヨナラの挨拶をして「失礼します、リーゼ様」と言うと、リーゼを軽々と抱き上げた。
「ママ!」マリーはリーゼの姿のルイーゼに呼び掛けた。
「マリー、心配しなくていいわ。ママはしばらくしたら戻るからね」ルイーゼは疲労の顔の中でも、微笑みながら言った。
リーゼを抱き上げたダークは、彼女を静かに2階の主人の部屋へと運んで行った。
お客用の外套をマリーの肩に掛け、自分も外出用のショールをまとったエルケは玄関の外に出ると指笛を鳴らした。
深夜の稽古で魔法に覚醒したマリーは、母親と同様に精神のフィールドを拡大した。
(サミー!ベルガー!あなたたちだったのね?)マリーは嬉しそうに思考を伝えた。
(マリー!無事だったんだ!)サミーはマリーと話すのは初めてだったが、スムーズに答えた。
(話すのは初めてだな。マリー、無事で良かった)ベルガーがホッとした口調で答えた。
(私も狼とは感情の思考をやりとりできるけど、他の動物とこんなに明確に話せたのは初めてだわ)エルケはマリーの覚醒した力に少々驚きながらも口を挟んできた。
そこで流れた3者の感情は、少なくとも敵では無いというもので、3者はそれを共有した。
まもなく、狼2頭立てのソリが現れ、マリー、エルケ、サミーが乗り込み、ベルガーは搭乗を固辞して、ソリの後ろを追いかけた。
「マリー、リーゼ様とルイーゼ様はこれからどうなるの?」
ソリを操りながらエルケは心配そうにマリーに聞いた。
.......
to be continued...
青い炎と人形の物語 第3章その1 [球体関節人形製作]
てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。
「青い炎と人形の物語」の第3章です。
それでは、どうぞ。
第3章 覚醒した魔法(その1)
「オホホホホ!」濃紺のドレスのリーゼは、仰け反るようにして、大きな声で笑った。
そして、わずかの間の後に言った。
「ルイーゼ、昔、袂を分かった後に、私は、あなたに会うことは避けてきたわ」リーゼはそこで一旦言葉を切った。
「でも、あなたの娘が不治の病にかかったとき、あなたは結局、魔女一族の奥義を使い、娘の身代わりとなって死んでしまった」
リーゼはそう言いながらゆっくりと歩を進めた。
「残念だったわ、そのときは本当に」
「私の死の間際に、一度、会いに来て、そう言ったわね」人形の姿のルイーゼは答えた。
「ええ、でもあなたの夫とマリーが居たから、すぐに退散しましたけどね」リーゼはそう言うと人形の中のルイーゼを見つめた。
「そして、後になって、あなたが人形の中に精神を移したのを動物の風の噂で聞いたわ」
「その動物とは?」ルイーゼも人形の中からリーゼを見返して言った。
「あなたも良く知っている使い魔のコウモリよ?」
リーゼの言葉にルイーゼはわずかに動揺したが、動かない体の中で磨きあげられた精神は、密かに別のやり取りを始めていた。
(マリー、聞こえる?あなただけに話しているわ、ママだけに集中して返事をしてちょうだい)
(ママ!、、、不思議、前からスージーがママだってこと知っていた気がする)マリーは驚きながらも心を集中して答えた。
(そうよ、マリー、あなたが眠っている真夜中が私たちが会っている時間だったわ)スージーことルイーゼは言った。
(深い夢の中で、お話ししたり、魔法の稽古もしたわ)
そして、ルイーゼは核心に触れた。
(思い出して?マリー、〈背中を押す魔法〉のことを)
マリーは、そのキーワードを聞いて、普段は意識に昇らない、すべての夢の中の記憶が蘇った。
(ママ、思い出したわ!)しかしマリーは動揺した。
(、、、〈背中を押す魔法〉を、、、使うのね?)
(そうよ、マリー、あなたにしかできない魔法よ!)ルイーゼは意を決して答えた。
(、、、?)わずかな間であったが、姉のリーゼは少々いぶかしく思い、表情を固くした。
「それでは、二人だけで話し合いましょうか?お姉さま」そんなルイーゼの言葉には彼女の覚悟が見てとれた。
「分かったわ。ルイーゼ」姉は答えた。「お互い幻覚を見せあっても無駄ですからね」
そしてリーゼは続けた。「さあ、マリー、ママと二人で話し合うから、その人形を渡してちょうだい」
マリーは少々迷った様子を見せたが、歩を進めて低い声で言った。「お願いだから、ママを傷つけないで」
そして彼女はリーゼにママを渡した。
(さて、ルイーゼ)リーゼは左手で人形の腰を、右手で頭を支えて、ルイーゼと向き合った。
(ここまで私に会いに来た、あなたの覚悟は良く分かったわ。でもね、、、)リーゼの人形を持つ手に少し力が入った。
(あなたと私の目指すものは大きく違うわ。話し合いで妥協点が見出だせるかしら?)彼女は一呼吸置いて続けた。
(私と、私の狼人達と、、、精神だけしか動かせない、ルイーゼ、あなたは対等に渡り合えるかしら?)
リーゼは少々勝ち誇ったように言った。
(それとも、私に協力する?あなたもマリーも悪いようにはしないわよ?)
(!!)
リーゼにわずかな油断が見え、彼女の精神の障壁が緩んだ刹那だった。
人形の中のルイーゼの精神がグイと立ち上がり、リーゼの頭の中を覗き込んだ。
(今よ!マリー!私を押して!!)ルイーゼはマリーだけに心で叫んだ。
(ママ!!)マリーは渾身の力を込めてルイーゼをリーゼの頭の中に押し込んだ。
........
to be continued...
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。
「青い炎と人形の物語」の第3章です。
それでは、どうぞ。
第3章 覚醒した魔法(その1)
「オホホホホ!」濃紺のドレスのリーゼは、仰け反るようにして、大きな声で笑った。
そして、わずかの間の後に言った。
「ルイーゼ、昔、袂を分かった後に、私は、あなたに会うことは避けてきたわ」リーゼはそこで一旦言葉を切った。
「でも、あなたの娘が不治の病にかかったとき、あなたは結局、魔女一族の奥義を使い、娘の身代わりとなって死んでしまった」
リーゼはそう言いながらゆっくりと歩を進めた。
「残念だったわ、そのときは本当に」
「私の死の間際に、一度、会いに来て、そう言ったわね」人形の姿のルイーゼは答えた。
「ええ、でもあなたの夫とマリーが居たから、すぐに退散しましたけどね」リーゼはそう言うと人形の中のルイーゼを見つめた。
「そして、後になって、あなたが人形の中に精神を移したのを動物の風の噂で聞いたわ」
「その動物とは?」ルイーゼも人形の中からリーゼを見返して言った。
「あなたも良く知っている使い魔のコウモリよ?」
リーゼの言葉にルイーゼはわずかに動揺したが、動かない体の中で磨きあげられた精神は、密かに別のやり取りを始めていた。
(マリー、聞こえる?あなただけに話しているわ、ママだけに集中して返事をしてちょうだい)
(ママ!、、、不思議、前からスージーがママだってこと知っていた気がする)マリーは驚きながらも心を集中して答えた。
(そうよ、マリー、あなたが眠っている真夜中が私たちが会っている時間だったわ)スージーことルイーゼは言った。
(深い夢の中で、お話ししたり、魔法の稽古もしたわ)
そして、ルイーゼは核心に触れた。
(思い出して?マリー、〈背中を押す魔法〉のことを)
マリーは、そのキーワードを聞いて、普段は意識に昇らない、すべての夢の中の記憶が蘇った。
(ママ、思い出したわ!)しかしマリーは動揺した。
(、、、〈背中を押す魔法〉を、、、使うのね?)
(そうよ、マリー、あなたにしかできない魔法よ!)ルイーゼは意を決して答えた。
(、、、?)わずかな間であったが、姉のリーゼは少々いぶかしく思い、表情を固くした。
「それでは、二人だけで話し合いましょうか?お姉さま」そんなルイーゼの言葉には彼女の覚悟が見てとれた。
「分かったわ。ルイーゼ」姉は答えた。「お互い幻覚を見せあっても無駄ですからね」
そしてリーゼは続けた。「さあ、マリー、ママと二人で話し合うから、その人形を渡してちょうだい」
マリーは少々迷った様子を見せたが、歩を進めて低い声で言った。「お願いだから、ママを傷つけないで」
そして彼女はリーゼにママを渡した。
(さて、ルイーゼ)リーゼは左手で人形の腰を、右手で頭を支えて、ルイーゼと向き合った。
(ここまで私に会いに来た、あなたの覚悟は良く分かったわ。でもね、、、)リーゼの人形を持つ手に少し力が入った。
(あなたと私の目指すものは大きく違うわ。話し合いで妥協点が見出だせるかしら?)彼女は一呼吸置いて続けた。
(私と、私の狼人達と、、、精神だけしか動かせない、ルイーゼ、あなたは対等に渡り合えるかしら?)
リーゼは少々勝ち誇ったように言った。
(それとも、私に協力する?あなたもマリーも悪いようにはしないわよ?)
(!!)
リーゼにわずかな油断が見え、彼女の精神の障壁が緩んだ刹那だった。
人形の中のルイーゼの精神がグイと立ち上がり、リーゼの頭の中を覗き込んだ。
(今よ!マリー!私を押して!!)ルイーゼはマリーだけに心で叫んだ。
(ママ!!)マリーは渾身の力を込めてルイーゼをリーゼの頭の中に押し込んだ。
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to be continued...