青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その7 [球体関節人形製作]
第8章 戦慄の魔法兄妹 その7
フランツ達4人にメインディッシュが運ばれてきた。
運んできたのはレオナと二人の大人の若い女性の給仕、そして、もう一人は何と地下に行ったはずのレオンであった。
「お待たせしました。羊と鹿のヴルストとザワークラウトです」
レオンは楽しそうにフランツに対して給仕し、カーヤにはレオナが給仕した。
「『魔の帝王』レオン。視察団の彼らは今どうしているんだ?」
フランツはレオンにストレートに尋ねた。
「ああ、フランツさん。『魔の帝王』は余計です。レオンでいいですよ。ええ、彼らはそれぞれ楽しんでいます」
レオンは歌うように楽し気に言った。
「ロータル議員、エッボ議員、ディーターさんとユルゲンさんは二人の美女と夜のラウンジでお酒を飲みながら政治関連の話で談笑しています...ヨーゼフ博士とアウグスト神父は昼間のカフェで、こちらも二人の美女とともに話をしていますが、こちらは魔女、狼人、鬼人に関する歴史的な出来事、民俗学、古代史など、いろいろな話をしていて、僕も途中まで大変興味深く聞かせてもらいましたよ!また聞きたいくらいです」
「...オトコって、本当に美女とかが好きなのね!...レオン兄さんも?」
レオナが少しふくれっ面で口を挟んできた。
「...そうだね。大人の男はグラマーな美女が好きなようなので、そのようにしているよ...僕はまだ子供なんで、それほどでもないよ」
レオンは大人の対応でレオナの言葉をサラリと躱《かわ》した。
「...夜と、昼...すると、レオン。それらはまやかしなのだね?」
フランツは少々驚きつつ尋ねた。
「ええ、フランツさん。でも長丁場になるので、それぞれの場には、本物の鬼人族の女の人が二人ずつ張り付いていますけどね...それ以外はすべてまやかしです」
「...君がいなくても術は続いているんだね?」
「ええ...僕はまがりなりにも『魔の帝王』と呼ばれているくらいですから、その位は簡単ですよ」
レオンは事もなげに言い放った。
「魔女の力は、通常は女だけに出現するものなの」
レオナがまた口を挟んできた。
「でも、レオン兄さんは千年に一度だけこの世に生まれるという男の魔法使い...『魔の帝王』なのよ!」
(レオナはレオンのことがよほど自慢らしいな...ブラザーコンプレックスなのか?)
フランツは心の中でそう思ったが、その瞬間”しまった!”思った。
「フランツさん!何か問題でも?!」
レオナが腰に手を当てて、フランツに詰め寄ってきた。
”やはり強い思考は漏れてしまうのか!”フランツはレオナとレオンの能力に恐れ入った。
「レオナ!フランツさんには特に他意は無いよ」
レオンがそう言うと、レオナは素直に”うん”とうなずきフランツから離れた。
「さて...話が一段落したところで、フランツさん!」
今度はブルクハルトが話に割り込んできた。
「フランツさんも私も含め、視察団一行は、このレオンとレオナに感謝しなくてはなりません」
「え?!それはどういうことですか?」
と聞き返すフランツ。
「ファシーズ党の最右翼の派閥である『ゲリマンの爪』派をご存じですか?」
ブルクハルトは話しながらも精力的にメインディッシュを口に運んでいた。
「『ゲリマンの爪』...話は聞いたことがありますね...ヘルフリート議員が代表であるとか?」
フランツは記憶を呼び覚ましつつ答えた。
「よくご存じで...ヘルフリート議員は軍人上がりなのですが、いまだに軍の中で私と同じく少将の位でもあります...その彼が今、民族主義の議員や軍人を集めて勢力を拡大しています。そして、私たち視察団がこの地を訪れるのを絶好の機会と捉え、私たちを魔女や鬼人族に襲撃で殺されたように見せかけるつもりなのです!」
ブルクハルトは食べるのをやめてナイフとフォークを両手に立てて持ちながら力を込めて言った。
「え?!殺されたようにみせかける?それは...まさか!」
フランツは顔面蒼白となった。
「そうです。暗殺です。ヘルフリート少将の配下の軍のVV親衛隊がすでに行動を開始しています...もう、まもなく...今日の夜中にこの町に入ってくるでしょう!」
そう言うとブルクハルトはグラスに半分程の白ワインを一気に飲み干した。
「すると...この我々が宿泊している公民館にやってくるのでは?!」
フランツは焦ってそう言った。
「フフフ...フランツさん。そう心配しなくてもいいですよ。この建物が町のはずれに近いところにあることを疑問に感じませんでしたか?...実はここは中央政府が昔建造した単なる古いホテルなんですよ...立派な作りですが...本当の公民館兼ホテルはもっと町の中央付近にあります」
「...すると!この町に入るときから、もうすでに”まやかし”の術が使われていたということですか?!」
「ええ、主にディーターさんと馬車の御者さんに対してだけですけどね」
レオンが口を挟んできた。
「なるほど...で、そのVV親衛隊が夜中に来たら、どう応戦するのですか?」
フランツはブルクハルトとレオンの二人に聞くように尋ねた。
...to be continued.
フランツ達4人にメインディッシュが運ばれてきた。
運んできたのはレオナと二人の大人の若い女性の給仕、そして、もう一人は何と地下に行ったはずのレオンであった。
「お待たせしました。羊と鹿のヴルストとザワークラウトです」
レオンは楽しそうにフランツに対して給仕し、カーヤにはレオナが給仕した。
「『魔の帝王』レオン。視察団の彼らは今どうしているんだ?」
フランツはレオンにストレートに尋ねた。
「ああ、フランツさん。『魔の帝王』は余計です。レオンでいいですよ。ええ、彼らはそれぞれ楽しんでいます」
レオンは歌うように楽し気に言った。
「ロータル議員、エッボ議員、ディーターさんとユルゲンさんは二人の美女と夜のラウンジでお酒を飲みながら政治関連の話で談笑しています...ヨーゼフ博士とアウグスト神父は昼間のカフェで、こちらも二人の美女とともに話をしていますが、こちらは魔女、狼人、鬼人に関する歴史的な出来事、民俗学、古代史など、いろいろな話をしていて、僕も途中まで大変興味深く聞かせてもらいましたよ!また聞きたいくらいです」
「...オトコって、本当に美女とかが好きなのね!...レオン兄さんも?」
レオナが少しふくれっ面で口を挟んできた。
「...そうだね。大人の男はグラマーな美女が好きなようなので、そのようにしているよ...僕はまだ子供なんで、それほどでもないよ」
レオンは大人の対応でレオナの言葉をサラリと躱《かわ》した。
「...夜と、昼...すると、レオン。それらはまやかしなのだね?」
フランツは少々驚きつつ尋ねた。
「ええ、フランツさん。でも長丁場になるので、それぞれの場には、本物の鬼人族の女の人が二人ずつ張り付いていますけどね...それ以外はすべてまやかしです」
「...君がいなくても術は続いているんだね?」
「ええ...僕はまがりなりにも『魔の帝王』と呼ばれているくらいですから、その位は簡単ですよ」
レオンは事もなげに言い放った。
「魔女の力は、通常は女だけに出現するものなの」
レオナがまた口を挟んできた。
「でも、レオン兄さんは千年に一度だけこの世に生まれるという男の魔法使い...『魔の帝王』なのよ!」
(レオナはレオンのことがよほど自慢らしいな...ブラザーコンプレックスなのか?)
フランツは心の中でそう思ったが、その瞬間”しまった!”思った。
「フランツさん!何か問題でも?!」
レオナが腰に手を当てて、フランツに詰め寄ってきた。
”やはり強い思考は漏れてしまうのか!”フランツはレオナとレオンの能力に恐れ入った。
「レオナ!フランツさんには特に他意は無いよ」
レオンがそう言うと、レオナは素直に”うん”とうなずきフランツから離れた。
「さて...話が一段落したところで、フランツさん!」
今度はブルクハルトが話に割り込んできた。
「フランツさんも私も含め、視察団一行は、このレオンとレオナに感謝しなくてはなりません」
「え?!それはどういうことですか?」
と聞き返すフランツ。
「ファシーズ党の最右翼の派閥である『ゲリマンの爪』派をご存じですか?」
ブルクハルトは話しながらも精力的にメインディッシュを口に運んでいた。
「『ゲリマンの爪』...話は聞いたことがありますね...ヘルフリート議員が代表であるとか?」
フランツは記憶を呼び覚ましつつ答えた。
「よくご存じで...ヘルフリート議員は軍人上がりなのですが、いまだに軍の中で私と同じく少将の位でもあります...その彼が今、民族主義の議員や軍人を集めて勢力を拡大しています。そして、私たち視察団がこの地を訪れるのを絶好の機会と捉え、私たちを魔女や鬼人族に襲撃で殺されたように見せかけるつもりなのです!」
ブルクハルトは食べるのをやめてナイフとフォークを両手に立てて持ちながら力を込めて言った。
「え?!殺されたようにみせかける?それは...まさか!」
フランツは顔面蒼白となった。
「そうです。暗殺です。ヘルフリート少将の配下の軍のVV親衛隊がすでに行動を開始しています...もう、まもなく...今日の夜中にこの町に入ってくるでしょう!」
そう言うとブルクハルトはグラスに半分程の白ワインを一気に飲み干した。
「すると...この我々が宿泊している公民館にやってくるのでは?!」
フランツは焦ってそう言った。
「フフフ...フランツさん。そう心配しなくてもいいですよ。この建物が町のはずれに近いところにあることを疑問に感じませんでしたか?...実はここは中央政府が昔建造した単なる古いホテルなんですよ...立派な作りですが...本当の公民館兼ホテルはもっと町の中央付近にあります」
「...すると!この町に入るときから、もうすでに”まやかし”の術が使われていたということですか?!」
「ええ、主にディーターさんと馬車の御者さんに対してだけですけどね」
レオンが口を挟んできた。
「なるほど...で、そのVV親衛隊が夜中に来たら、どう応戦するのですか?」
フランツはブルクハルトとレオンの二人に聞くように尋ねた。
...to be continued.
青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その6 [球体関節人形製作]
青い炎と人形の物語
第8章 戦慄の魔法兄妹 その6
「そこから先は、私に説明させて!ザスキア姉さん」
『魔の女王』レオナは、再びフランツとザスキアの前に現れた。
「『歯立ての儀式』はね。フランツさん。どうしても仲間に引き入れたい場合にも使うことがあるのよ。ザスキア姉さんはそれをしたかった」
レオナの言葉にザスキアは、
「まぁ。『魔の女王』様はおませだこと」
と一言だけ返して、グラスの中の白ワインを飲み干した。
レオナはそんなザスキアを横目で睨むように見つつ言った。
「...ところで、フランツさんとカーヤさんの会話や強い思考については、バルリンのホテルに滞在していたときから全て聞かせてもらったわ」
「えっ?!...もしや人形が」
フランツははたと思い当たった。
「そう。その通り。あなた方が受け取ったマトリューシアには、私達の先祖の魔女の骨の欠片《かけら》が入っていたの。その先祖の残留思念によって、あなた方の会話の情報が私たち兄妹《ふたご》に伝えられたのよ」
「...ということは、マリーについてのことも、、、」
「ええ。マトリューシアから思念の触手を伸ばして、あなたの思念の強い部分を読ませてもらったわ。幸いあなたの魔力の近親覚醒が少し遅れたので気付かれずに済んだけれどね...あなたが思っている通りマリーは『血の洗礼』を乗り越えて、今、徐々に体を回復させているわ、、、そして、恐らく近いうちに私達兄妹の存在に気がつくでしょう」
レオナはそこまで言うと、また厨房に戻って行った。
(強い思考を読む。だと?!これはうかつなことは考えられないな...しかし、やはりあのマトリューシアが情報を漏らしていたのか...今でこそ怪しいと分かるが、、、受け取ったときは特に何も感じなかったからな...まてよ、魔力の近親覚醒によって気づかれると言っていたが、もしやこの俺にも思考を読まれるのを感知することができるのか?...いや、その前に何故、魔女の血が流れていない俺にそんな力が発揮できるんだ?)
フランツがそこまで考えたとき、頭の中に何か透明で青い触手のようなものが伸びてきているのを感じたので、意識の力でそれを追い出してみた。
「あら!驚いた!触手の防御ができるようになったのね?」
ザスキアが少し酔ったような言い方をしてフランツを見た。
「...今のが思考を読む触手なのか?、、、いや!ひとつ教えてもらいたい。ザスキア少佐!」
フランツもザスキアの目を見て言った。
「君は魔女のハーフだから魔力を使えるのだろう...だが、この私は、娘のマリーが魔力に覚醒したからといって、魔女の血が流れていないのに、何故使えるようになったんだ?」
「おや。これは驚いた」
今度は正面のブルクハルト王子が口を出した。
「フランツさん。あなたはあなたの父方の御ばあ様が有名な魔女だったことをご存じないんですか?」
ブルクハルトの言葉にフランツは本当にびっくりした。
「えっ?!父のお母さんが有名な魔女?...そ、そんなことは初耳だ!」
「なるほど...あなたのお父様は、その事実をひた隠しにされてきたのですね...理由はわかりませんが...結局、あなたは魔女のルイーゼと結婚した...無意識のうちに魔女の血に惹かれたのでしょうね?」
ブルクハルトは少し面白いものでも見るようにフランツを見た。
「さらに、付け加えて言うならば、このカーヤさんの母方の御じい様は鬼人族のハーフですよ...結局、皆、一族の血に無意識のうちに惹かれてしまうのですね」
初耳なことばかりでフランツはひどく当惑したが、思い切ってブルクハルトに尋ねた。
「それでは、ブルクハルト王子!あなたはどうなのですか?王族は純粋な人間族なんですよね?!」
「...いい質問です。私は現王の弟の子供ですが、正室ではなく、側室の子供なのです...この私だけが!...確かに今は王族の一員ですが、私の母親は王族を追われました...お分かりでしょうね?...私の母親は魔女のハーフでした。ゆえに王族を追われました...そして、私に王の座が回ってくることは120%無いということなのです!」
(...そういうことだったのか!)
フランツは、今、起こっているすべての事実に隠れた理由があったことを理解した。
...to be continued.
第8章 戦慄の魔法兄妹 その6
「そこから先は、私に説明させて!ザスキア姉さん」
『魔の女王』レオナは、再びフランツとザスキアの前に現れた。
「『歯立ての儀式』はね。フランツさん。どうしても仲間に引き入れたい場合にも使うことがあるのよ。ザスキア姉さんはそれをしたかった」
レオナの言葉にザスキアは、
「まぁ。『魔の女王』様はおませだこと」
と一言だけ返して、グラスの中の白ワインを飲み干した。
レオナはそんなザスキアを横目で睨むように見つつ言った。
「...ところで、フランツさんとカーヤさんの会話や強い思考については、バルリンのホテルに滞在していたときから全て聞かせてもらったわ」
「えっ?!...もしや人形が」
フランツははたと思い当たった。
「そう。その通り。あなた方が受け取ったマトリューシアには、私達の先祖の魔女の骨の欠片《かけら》が入っていたの。その先祖の残留思念によって、あなた方の会話の情報が私たち兄妹《ふたご》に伝えられたのよ」
「...ということは、マリーについてのことも、、、」
「ええ。マトリューシアから思念の触手を伸ばして、あなたの思念の強い部分を読ませてもらったわ。幸いあなたの魔力の近親覚醒が少し遅れたので気付かれずに済んだけれどね...あなたが思っている通りマリーは『血の洗礼』を乗り越えて、今、徐々に体を回復させているわ、、、そして、恐らく近いうちに私達兄妹の存在に気がつくでしょう」
レオナはそこまで言うと、また厨房に戻って行った。
(強い思考を読む。だと?!これはうかつなことは考えられないな...しかし、やはりあのマトリューシアが情報を漏らしていたのか...今でこそ怪しいと分かるが、、、受け取ったときは特に何も感じなかったからな...まてよ、魔力の近親覚醒によって気づかれると言っていたが、もしやこの俺にも思考を読まれるのを感知することができるのか?...いや、その前に何故、魔女の血が流れていない俺にそんな力が発揮できるんだ?)
フランツがそこまで考えたとき、頭の中に何か透明で青い触手のようなものが伸びてきているのを感じたので、意識の力でそれを追い出してみた。
「あら!驚いた!触手の防御ができるようになったのね?」
ザスキアが少し酔ったような言い方をしてフランツを見た。
「...今のが思考を読む触手なのか?、、、いや!ひとつ教えてもらいたい。ザスキア少佐!」
フランツもザスキアの目を見て言った。
「君は魔女のハーフだから魔力を使えるのだろう...だが、この私は、娘のマリーが魔力に覚醒したからといって、魔女の血が流れていないのに、何故使えるようになったんだ?」
「おや。これは驚いた」
今度は正面のブルクハルト王子が口を出した。
「フランツさん。あなたはあなたの父方の御ばあ様が有名な魔女だったことをご存じないんですか?」
ブルクハルトの言葉にフランツは本当にびっくりした。
「えっ?!父のお母さんが有名な魔女?...そ、そんなことは初耳だ!」
「なるほど...あなたのお父様は、その事実をひた隠しにされてきたのですね...理由はわかりませんが...結局、あなたは魔女のルイーゼと結婚した...無意識のうちに魔女の血に惹かれたのでしょうね?」
ブルクハルトは少し面白いものでも見るようにフランツを見た。
「さらに、付け加えて言うならば、このカーヤさんの母方の御じい様は鬼人族のハーフですよ...結局、皆、一族の血に無意識のうちに惹かれてしまうのですね」
初耳なことばかりでフランツはひどく当惑したが、思い切ってブルクハルトに尋ねた。
「それでは、ブルクハルト王子!あなたはどうなのですか?王族は純粋な人間族なんですよね?!」
「...いい質問です。私は現王の弟の子供ですが、正室ではなく、側室の子供なのです...この私だけが!...確かに今は王族の一員ですが、私の母親は王族を追われました...お分かりでしょうね?...私の母親は魔女のハーフでした。ゆえに王族を追われました...そして、私に王の座が回ってくることは120%無いということなのです!」
(...そういうことだったのか!)
フランツは、今、起こっているすべての事実に隠れた理由があったことを理解した。
...to be continued.
青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その5 [球体関節人形製作]
青い炎と人形の物語 第8章 その5
第8章 戦慄の魔法兄妹 その5
フランツはディナーの間にできる限り情報収集に努めようとした。
「『魔の女王』レオナ。君もザスキアと同じく鬼人と魔女のハーフなのかい?」
「ふふふ。フランツさん。12歳の私に女王というのは抵抗があるでしょ?レオナでいいわよ」
相変わらず、大人のようなレオナの返答であったが、その直後、何かの獣の成分のような香水の香りと、前頭と鼻腔の奥にビシッと放電が走ったような感覚がした。
しかし、フランツ自身は特にそれ以上の変化を感じなかった。
すると、メインディッシュは、まだこれからのはずであるが、皆がにこやかに立ち上がり、食堂の入口に現れた12歳くらいの少年の方に近寄り、皆挨拶や握手を交わした。
その挨拶の仕方はどう聞いても、相手が大人の有力者であるような接し方であった。
「フランツ君。君も町長のアルムホルトさんに挨拶したらどうかね?」
ローター議員がフランツを促したので、フランツは立ち上がろうとしたが、いち早くもう一人の分身のフランツが立ち上がり、50歳くらいの白いあごひげの大人の男(アルムホルト?)と挨拶を交わした。
フランツ当人は、食卓の椅子に腰かけながら、呆気に取られてそれを見守っていた。
「フランツさん。初めまして。『魔の帝王』と呼ばれているレオン・ベネケンです。ちょっと皆さんを地下の博物館に案内してからまた来ますよ」
レオンという少年は本当のフランツと握手を交わすと、フランツが何か言う前に、また50歳くらいの白いあごひげの大人の男(アルムホルト)に姿を変えて、皆を連れて食堂を出て行ったが、何とその一行の中には、今、食堂に残っているベンジャミン少将ことブルクハルト王子、ザスキア少佐、カーヤ、フランツも含まれていた。
「さて、フランツさん。これでゆっくりあなたと話しができますね」
ブルクハルトが白ワインのグラスを片手に立ち上がり、ザスキアとカーヤが座るテーブルに歩を進め、フランツを手招きした。
「さあ、こちらに、カーヤさんの横に掛けてください」
フランツは言われるままに、カーヤの右横の席に腰かけて彼女を見ると、カーヤは初めての人と会うように、フランツに対して少し遠慮がちに会釈して微笑んだだけであった。
新しい席に座った4人に対して、また給仕の女達が、今度は川魚と思われる料理を運んできた。
「まあ、4人だけでゆっくり食べましょう。地下に行った彼らの頭の中では、もうすでにディナーが済んでいるのですから」
ブルクハルトは、給仕の女が注ぐ白ワインを見ながらそう言った。
「...地下に向かった彼らはどうなるのですか?」
フランツはブルクハルトに向かって言った。
「フランツさん。彼らを殺したり傷つけたりすることはありませんので安心してください。詳しくは地下からレオンが戻ってきたら話してくれるでしょう。さあ、フランツさんも食事を楽しんでください」
ブルクハルトは川魚ニジマスのバターソテーをフォークで食べながら言った。
「...ええ」
ブルクハルトの言葉にニジマスのバターソテーを一口食べたが、こんな状況ではあったが、確かに美味しい料理であった。
「...ところで、ザスキア少佐!カーヤに何かしたんですね?」
フランツは右隣に座るザスキアに鋭く尋ねた。
「ふふ。そうですよ。フランツ先生。カーヤさんには少しだけ私たちの仲間になってもらいました」
ザスキアはニジマスを食べる動作を一旦止めて答えた。
「簡単に言うと、私たち民族固有のエキスを少しだけ注入させてもらったので」
そして、ザスキアは隠す様子もなく、横に大きく口を開けてその犬歯を見せた。
「なっ!...まさか吸血鬼になるということなのか?!」
フランツは驚いて椅子を立ち上がりかけた。
「あら、フランツ先生。あなたも結構迷信を信じているのね!...そんなことはありませんよ!でも、私たち鬼人族の犬歯からのエキスを注入すると普通の人間は従順になり、鬼人族に対して親近感がとても増すようになるわ...昔から鬼人族に入ってもらう魔女族、狼人族、人間族の人たちには『歯立ての儀式』を行っているわ...でも、それだけではないけどね?」
ザスキアは妙に艶めかしい目でフランツを見て言った。
「そこから先は、私に説明させて!ザスキア姉さん」
再び、給仕の恰好で『魔の女王』レオナがフランツとザスキアの間に現れた。
...to be continued.
第8章 戦慄の魔法兄妹 その5
フランツはディナーの間にできる限り情報収集に努めようとした。
「『魔の女王』レオナ。君もザスキアと同じく鬼人と魔女のハーフなのかい?」
「ふふふ。フランツさん。12歳の私に女王というのは抵抗があるでしょ?レオナでいいわよ」
相変わらず、大人のようなレオナの返答であったが、その直後、何かの獣の成分のような香水の香りと、前頭と鼻腔の奥にビシッと放電が走ったような感覚がした。
しかし、フランツ自身は特にそれ以上の変化を感じなかった。
すると、メインディッシュは、まだこれからのはずであるが、皆がにこやかに立ち上がり、食堂の入口に現れた12歳くらいの少年の方に近寄り、皆挨拶や握手を交わした。
その挨拶の仕方はどう聞いても、相手が大人の有力者であるような接し方であった。
「フランツ君。君も町長のアルムホルトさんに挨拶したらどうかね?」
ローター議員がフランツを促したので、フランツは立ち上がろうとしたが、いち早くもう一人の分身のフランツが立ち上がり、50歳くらいの白いあごひげの大人の男(アルムホルト?)と挨拶を交わした。
フランツ当人は、食卓の椅子に腰かけながら、呆気に取られてそれを見守っていた。
「フランツさん。初めまして。『魔の帝王』と呼ばれているレオン・ベネケンです。ちょっと皆さんを地下の博物館に案内してからまた来ますよ」
レオンという少年は本当のフランツと握手を交わすと、フランツが何か言う前に、また50歳くらいの白いあごひげの大人の男(アルムホルト)に姿を変えて、皆を連れて食堂を出て行ったが、何とその一行の中には、今、食堂に残っているベンジャミン少将ことブルクハルト王子、ザスキア少佐、カーヤ、フランツも含まれていた。
「さて、フランツさん。これでゆっくりあなたと話しができますね」
ブルクハルトが白ワインのグラスを片手に立ち上がり、ザスキアとカーヤが座るテーブルに歩を進め、フランツを手招きした。
「さあ、こちらに、カーヤさんの横に掛けてください」
フランツは言われるままに、カーヤの右横の席に腰かけて彼女を見ると、カーヤは初めての人と会うように、フランツに対して少し遠慮がちに会釈して微笑んだだけであった。
新しい席に座った4人に対して、また給仕の女達が、今度は川魚と思われる料理を運んできた。
「まあ、4人だけでゆっくり食べましょう。地下に行った彼らの頭の中では、もうすでにディナーが済んでいるのですから」
ブルクハルトは、給仕の女が注ぐ白ワインを見ながらそう言った。
「...地下に向かった彼らはどうなるのですか?」
フランツはブルクハルトに向かって言った。
「フランツさん。彼らを殺したり傷つけたりすることはありませんので安心してください。詳しくは地下からレオンが戻ってきたら話してくれるでしょう。さあ、フランツさんも食事を楽しんでください」
ブルクハルトは川魚ニジマスのバターソテーをフォークで食べながら言った。
「...ええ」
ブルクハルトの言葉にニジマスのバターソテーを一口食べたが、こんな状況ではあったが、確かに美味しい料理であった。
「...ところで、ザスキア少佐!カーヤに何かしたんですね?」
フランツは右隣に座るザスキアに鋭く尋ねた。
「ふふ。そうですよ。フランツ先生。カーヤさんには少しだけ私たちの仲間になってもらいました」
ザスキアはニジマスを食べる動作を一旦止めて答えた。
「簡単に言うと、私たち民族固有のエキスを少しだけ注入させてもらったので」
そして、ザスキアは隠す様子もなく、横に大きく口を開けてその犬歯を見せた。
「なっ!...まさか吸血鬼になるということなのか?!」
フランツは驚いて椅子を立ち上がりかけた。
「あら、フランツ先生。あなたも結構迷信を信じているのね!...そんなことはありませんよ!でも、私たち鬼人族の犬歯からのエキスを注入すると普通の人間は従順になり、鬼人族に対して親近感がとても増すようになるわ...昔から鬼人族に入ってもらう魔女族、狼人族、人間族の人たちには『歯立ての儀式』を行っているわ...でも、それだけではないけどね?」
ザスキアは妙に艶めかしい目でフランツを見て言った。
「そこから先は、私に説明させて!ザスキア姉さん」
再び、給仕の恰好で『魔の女王』レオナがフランツとザスキアの間に現れた。
...to be continued.