「花の妖精フローラ」第一話 繰り返す思い出 第三節その1 [球体関節人形製作]
駅前の時計台の針は3時55分を指していた。
結構ギリギリに到着したが、何とか間に合った。
僕が車を『キミダ』喫茶店の駐車場に停めたのは3時58分であった。
早速、店の中に入った僕は、よく彼女と座っていた窓際の席を選び、お店のスタッフの女の子に、連れが間もなく来るから注文は後でと伝えて、スマフォでLINEを見た。
『今、家出るところ』4時00分
百合菜からだった。
『キミダで待ってる』
返事を返した。
『わかった』4時01分
そして5分程すると、店の扉がカランと音を立てて開かれ、ブラウスにスカート、薄手のカーディガンを羽織った百合菜が姿を現した。
彼女は僕を見つけるとゆっくりと近づいてきて、僕の正面に座り、開口一番「疲れたー」と言って両手を下にして一旦顔をテーブルに突っ伏して、それからゆっくりと頭をもたげて左手で頬杖をつきながら僕の顔を見た。
「仕事大変そうだね」
僕がそう言うと、
「うん。昨日も23時半まで会社で仕事してさ、それから車で帰って0時過ぎて、寝たの3時かな。で、今日起きたのが11時、それからウダウダして今に至るわけ」
彼女は一気にそう言うと、さらに続けて
「見せたい写真て何?」
と聞いてきた。
僕はここにきて一瞬迷ったが、ええい、そのために急いできたんじゃないか、と思い切ってデジタル一眼レフカメラをカバンから取り出し、再生モードにして目的の画像を大きめな液晶に表示させて彼女にカメラごと渡した。
「その薄紫の花の下をよく見てもらいたいんだ。女の子の姿が...」
「えっ?!心霊写真?そういうの苦手なんだけど」彼女はカメラを受け取る寸前で体が固まった。
「いや、そうじゃないと思う。たぶん妖精か何かではないかと」
僕はちょっとしどろもどろになった。
「妖精?ほんと?」
彼女は半信半疑でカメラを受け取ると、しげしげと液晶の画像を見た。
「これって拡大はどうするの?」
彼女が聞いてきたので、僕は操作方法を教えた。
そして、ちょっとの間、彼女は画像を見つめ、続いてこう聞いてきた。
「写真を前後に送るのはどうするの?」
また、僕が操作方法を教えると、今度は彼女はじっくりと前後の写真も拡大しつつ見ているようだった。
「ねぇ、光一。最初の写真の1枚後ろの写真にも写っているよ」
彼女はそう言うとカメラの液晶の画面の一部を指で示しながら僕にカメラを渡してきた。
結構ギリギリに到着したが、何とか間に合った。
僕が車を『キミダ』喫茶店の駐車場に停めたのは3時58分であった。
早速、店の中に入った僕は、よく彼女と座っていた窓際の席を選び、お店のスタッフの女の子に、連れが間もなく来るから注文は後でと伝えて、スマフォでLINEを見た。
『今、家出るところ』4時00分
百合菜からだった。
『キミダで待ってる』
返事を返した。
『わかった』4時01分
そして5分程すると、店の扉がカランと音を立てて開かれ、ブラウスにスカート、薄手のカーディガンを羽織った百合菜が姿を現した。
彼女は僕を見つけるとゆっくりと近づいてきて、僕の正面に座り、開口一番「疲れたー」と言って両手を下にして一旦顔をテーブルに突っ伏して、それからゆっくりと頭をもたげて左手で頬杖をつきながら僕の顔を見た。
「仕事大変そうだね」
僕がそう言うと、
「うん。昨日も23時半まで会社で仕事してさ、それから車で帰って0時過ぎて、寝たの3時かな。で、今日起きたのが11時、それからウダウダして今に至るわけ」
彼女は一気にそう言うと、さらに続けて
「見せたい写真て何?」
と聞いてきた。
僕はここにきて一瞬迷ったが、ええい、そのために急いできたんじゃないか、と思い切ってデジタル一眼レフカメラをカバンから取り出し、再生モードにして目的の画像を大きめな液晶に表示させて彼女にカメラごと渡した。
「その薄紫の花の下をよく見てもらいたいんだ。女の子の姿が...」
「えっ?!心霊写真?そういうの苦手なんだけど」彼女はカメラを受け取る寸前で体が固まった。
「いや、そうじゃないと思う。たぶん妖精か何かではないかと」
僕はちょっとしどろもどろになった。
「妖精?ほんと?」
彼女は半信半疑でカメラを受け取ると、しげしげと液晶の画像を見た。
「これって拡大はどうするの?」
彼女が聞いてきたので、僕は操作方法を教えた。
そして、ちょっとの間、彼女は画像を見つめ、続いてこう聞いてきた。
「写真を前後に送るのはどうするの?」
また、僕が操作方法を教えると、今度は彼女はじっくりと前後の写真も拡大しつつ見ているようだった。
「ねぇ、光一。最初の写真の1枚後ろの写真にも写っているよ」
彼女はそう言うとカメラの液晶の画面の一部を指で示しながら僕にカメラを渡してきた。
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「花の妖精フローラ」第一話 繰り返す思い出 第二節その2 [球体関節人形製作]
すると、意外にも話が合い、趣味に関しても、登山をすること(僕はハイキング程度だけど)、美術館で絵や彫刻を見ること、弦楽のミニコンサートを聴くこと、など...結構共通点が多かった。
それから休みの日の度に会って、いろいろなところに出かけたな...そう言えば最近は彼女の仕事が忙しいこともあって、休日に会う機会がめっきり減ってきている。
そういえば今日の日曜も仕事が入りそうだと先々週に彼女は言っていたけれど、今現在はどうなんだろう?
仕事中だったら悪いな。でも、もしかしたら休みを取っているかもしれない。
僕はその場で彼女に電話を掛けた。
LINEやメールでも良かったかもしれないけれど、今の僕は直接彼女と話しがしたかった。
8回程の呼び出し音の後に彼女がでた。
「光一だけど、百合菜は今、仕事中かい?」
「ううん、違うよ。今日は休みをもらえたの。今、家で洗濯物と格闘中」
百合菜は少し疲れ気味の声だった。
「そうなんだ。実は今『はればれ高原』にまた来て写真を撮っていたんだけれど、君にどうしても見せたい写真が撮れてね。これから会いに行ってもいいかな?」
「...いいわね『はればれ高原』、私も行きたかったな」
百合菜は少し怒ったような声で言った。
「...ごめん。君を誘えば良かったんだけど、今日は仕事かと思っていたものだから...」
「うん。別にいいんだけどさ...ねぇ、私からも光一に相談したいことがあるの」
「そうなんだ。わかった。じゃあ、こちらは今からなら車で2時間ほどで君の家の近くまで行けるから、4時に君の家に一番近い『キミダ』喫茶店で待ち合わせるのでどうかな?」
「あ、うん。わかった。こちらも洗濯物やっつけてから行く。ブランチもまだだし、じゃあ4時ね」
百合菜はそう言うと電話を切った。
僕は急ぎ野原を横切って1回500円の駐車場に向かって行った。
それから休みの日の度に会って、いろいろなところに出かけたな...そう言えば最近は彼女の仕事が忙しいこともあって、休日に会う機会がめっきり減ってきている。
そういえば今日の日曜も仕事が入りそうだと先々週に彼女は言っていたけれど、今現在はどうなんだろう?
仕事中だったら悪いな。でも、もしかしたら休みを取っているかもしれない。
僕はその場で彼女に電話を掛けた。
LINEやメールでも良かったかもしれないけれど、今の僕は直接彼女と話しがしたかった。
8回程の呼び出し音の後に彼女がでた。
「光一だけど、百合菜は今、仕事中かい?」
「ううん、違うよ。今日は休みをもらえたの。今、家で洗濯物と格闘中」
百合菜は少し疲れ気味の声だった。
「そうなんだ。実は今『はればれ高原』にまた来て写真を撮っていたんだけれど、君にどうしても見せたい写真が撮れてね。これから会いに行ってもいいかな?」
「...いいわね『はればれ高原』、私も行きたかったな」
百合菜は少し怒ったような声で言った。
「...ごめん。君を誘えば良かったんだけど、今日は仕事かと思っていたものだから...」
「うん。別にいいんだけどさ...ねぇ、私からも光一に相談したいことがあるの」
「そうなんだ。わかった。じゃあ、こちらは今からなら車で2時間ほどで君の家の近くまで行けるから、4時に君の家に一番近い『キミダ』喫茶店で待ち合わせるのでどうかな?」
「あ、うん。わかった。こちらも洗濯物やっつけてから行く。ブランチもまだだし、じゃあ4時ね」
百合菜はそう言うと電話を切った。
僕は急ぎ野原を横切って1回500円の駐車場に向かって行った。
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和服が仕上がりました [球体関節人形製作]
「花の妖精フローラ」第一話 繰り返す思い出 第二節その1 [球体関節人形製作]
女の子の髪の毛は濃い黄緑色で、足は素足で靴を履いていなかった。
僕はたぶんこの花を撮るときに、花にピントをあわせるべく、いろいろとカメラの操作をしていたので、その場では気が付かなかったんだと思う。
しかも、その女の子が写っていたのはそれ1枚きりだったので、ますます撮影のときには気が付かなかったんだろうと思う。
(これって、もしかすると花の妖精なんじゃないか?)
僕はデジタル一眼レフのカメラの機能を使って、その妖精(?)の女の子を拡大してみた。
すると、カメラの方を見て、わずかに微笑んでいるのが見て取れた。
(えっ?!これって、カメラを意識している?)
僕は更に驚いて、この事実を誰かに伝えたくなった。
(インスタに、この状況と一緒に投稿するか?...あー、でも、それだと単にCGの合成写真としか思われないかもしれないな...)
この妖精らしき女の子を撮影した花がどこらへんに咲いていたものなのかは正確には覚えていないが、もう一度同じ場所に行っても、また再び妖精に遭遇することは難しいと思われた。
(でも、誰かに伝えたいな...)
そのとき、僕の脳裏に浮かんだのは、やはり彼女『羽間谷《はまや》 百合菜《ゆりな》』の姿であった。
彼女は僕より3歳年下の25歳で、僕は背がそれほど高くなく165cmくらいなんだけれど、彼女の背は僕よりも5cmほど低い160cmくらいなんだ。
彼女とは、まだ駆け出しのSEの頃にプロジェクトの協力会社のメンバーの一人として一緒に仕事をしたのだけれど、その物件はかなりトラブって深夜遅くまで作業をして、ようやくシステムがうまく動き出したのだけれど、そこがまた辺ぴな場所にある工場で、僕と彼女はその工場を出た後に、泊まるところが無いかといろいろとビジネスホテルを探したけれど見つからず、かといってラブホテルに入るわけにもいかず、仕方なく24時間営業のファミレスに入り、夜が明けるまでそこで軽く食事とお茶をしながら、いろいろと話しをしたんだ。
タグ:花の妖精
「花の妖精フローラ」第一話 繰り返す思い出 第一節その2 [球体関節人形製作]
そして、今日はここ『はればれ高原』の野原を散策している訳なんだ。
いかにも雨が降りそうなどんよりとした曇り空なので、この高原を訪れている人もまばらで、気分的にものんびりしているんだ。
そう、僕はどうも人混みや雑踏が苦手で、観光地でも有名なところだと景色はいいのだけれど、何しろ人が多くて気疲れしてしまうんだ。
え?今日も一人で散策かって?
ああ、一人で散策することがほとんどだね。
以前、彼女と二人で散策したことがあったけれど、僕があんまりカメラであちこちと小さい被写体ばかり撮るものだから飽きられてしまってね。それ以来一緒には行っていないんだ。
彼女の仕事は別の会社のプログラマーなんだけれど、最近は仕事が結構忙しいらしく、あまり頻繁に会うことができないんだ。
時々会うのは、もっぱら週末の金曜か土曜の夜に、お互いの仕事がちょうど終わった後で、職場近くの居酒屋で落ち合って、ちょっと食事して、飲んで、話して、それから僕か彼女の家に行って一晩過ごして、翌朝は「またね」と別れて、その休みの日は彼女が休日出勤だったりという具合さ。
でも、最近はそれも月に一度か二度か、そんなに多くない。
そんな訳で、今日も僕はひとり高原を散策している。
で、ちょっと、ここからおかしな話になってしまうのだけれど、野原の小さな花の写真を絞り優先モードで撮っていたんだけど、不思議なものが写っていることに気が付いたんだ。
それは薄紫のちょっと野草としては珍しい形の花で、撮っていたときには気が付かなかったんだけど、雨がポツポツと降ってきたので、屋外の休憩所に逃げ込んで、今さっき撮影した写真を眺めながら、どの写真をインスタに投稿しようかなと考えていたときだったんだ。
「あれ?なんだこれ?」
僕は1枚の写真を見てびっくりした。
何と撮影した薄紫の花のすぐ下の葉の上に、薄緑色のワンピースを着たとっても小さな女の子がいたんだ!
「花の妖精フローラ」 第一話 繰り返す思い出 第一節その1 [球体関節人形製作]
こんばんは、てぃねこです。
今日から毎週金曜日の夜に物語を更新していきます。
タイトルは「花の妖精フローラ 第一話 繰り返す思い出」 です。
それでは、どうぞ、お読みください。
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この梅雨の季節に野原を歩いていると、多く見かけるのは名も知れぬ野草の黄色や白の小さな花たちだ。
しかし、時折、そんな花の群れの中に小さな青い花を見つけることがある。
青といっても、それほど鮮やかな青ではなく、どちらかというとちょっとくすんだ薄い青だ。
僕はそんなあまり目立たない小さな青い花に心惹かれる。
え?僕の名前?
僕の名前は『楡島《にれじま》 光一』、古めかしい名前だねと良く言われるけれど、自分としてはそうは思わないし、むしろこの名前が気に入っているくらいだ。
え?僕の年?
これでもまだ28歳だ。これでもというのは結構老けて見られるからで、良く言われるのが「30代半ばくらい?」というものだ。
ちょっと心外なんだけれど、まあ趣味や服装が地味なので自分でも仕方が無いかなと思っている。
服装の色使いは上下で焦げ茶色と濃い黄土色、暗い緑と暗い濃紺の色の組み合わせなどで、「服選びのセンスが無いよね?」などと良く言われたりもする。
僕の職業はSE(システムエンジニア)だ。
中位の規模の会社で、まあ、だいたい毎年同じ顧客の仕事を請け負うことが多いので、仕事の要領は良くわかっている。
そのためか、世間で良く言われるようなSEの仕事は残業や徹夜続きで大変だという事実は、今のところ僕にはそれ程当てはまっていないのはラッキーなことかもしれない。
それで、今日の日曜もどんよりとした曇り空だけど、こうして家から車で1時間半ほどの高原の野原を散策できるんだ。
え?、僕の趣味が何かって?
そうだね。やはりちょっと地味なんだけれど、こうして野原を歩きながら自分の好きな花や景色(主に花だけど)を写真に撮ってインスタグラムに投稿することなんだ。
以前は自分でホームページを立ち上げて、そこに写真を綺麗にトリミングして掲載して、その写真を撮ったときの状況や旅行記を載せていたりしたけれど、仕事の忙しさもあって段々と煩わしくなって、その次はブログに掲載したりもしたけれど、今はインスタで落ち着いている。
なので、あまり長い文章は載せていないんだ。
でも、スマホのカメラで撮影しているわけではないよ。
実は冬のボーナスをつぎ込んだ十数万円のデジタル一眼レフのカメラを持っているんだ。
そのカメラのデジタルエフェクトの機能を使って、撮った画像を少し見栄え良くした後にスマフォに転送し、そこからインスタに投稿している。
<続く>