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青い炎と人形の物語 第2章その2 [球体関節人形製作]

てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。

「青い炎と人形の物語」の第2章の続きです。
それでは、どうぞ。

第2章 夜の森で(その2)

 「えっー!じゃあ、ママも、あの伯母様も、わたしも、魔法が使えるの??でも、わたし、魔法なんて知らないし、ママが使っているのも見たことがないし?」マリーは口からベーコンエッグをボトリと落としてしゃべった。
 「リーゼ様はもちろん強い魔法が使えます。」狼人のエルケは答えた。
 「マリーのママのルイーゼ様もリーゼ様と同じくらいの力量を持った魔法使いと聞いています。」
 その言葉にマリーは重ねて聞いた。「じゃあ、わたしは?」
 「残念ながらマリーがどんな魔法を使えるのか私は聞いていません」エルケは少し困った顔をしたが、言葉を続けた。
「このことは...本当は言ってはいけないのですけれど...リーゼ様はマリーが持っている魔法の力を欲しがっています」
 「えーっ!?私の魔法の力?」マリーは困惑した。
「そんなもの、わたし、持ってないわ!」

《ドサッ》不意に二人の左方向にある暖炉で音がした。
 「何っ?!」エルケは見事なまでの素早さで暖炉に駆け寄り、中を覗き込んだ。
 「これは!...人形?!」エルケは少し灰にまみれた人形を手に取るとマリーの方を向き直った。
 その人形を見て、今度はマリーが驚いた。「ス、スージー!?」幸い落下の衝撃でも人形は壊れていなかった。
 「これは、あなたの人形なの?!」エルケは少し問い詰めるように聞いた。
 「ええ、わたしがいつも遊んでいる...え!?」マリーは、そこまで言って口をつぐんだ。強い思考のベールがマリーとエルケを包んだ。
 (マリー!驚かないで。私よ、ママよ!)
 「え??!」マリーはビックリしたが、不思議に安心した。
 小さいときにママに抱かれたときと同じ温もりに包まれたからだった。(不思議、スージーがママだってこと、ずっと前から知っていたような気がする...)
 
 狼人のエルケもかなり驚き、しかも困惑した。(人形が!?マリーのママのルイーゼ様なの?!それに何故、このわたしにも正体を明かすの?!どうする??すぐにリーゼ様のところに報告するべきか?)
 エルケの思考を読み取ったように人形のスージーは思考のベールをさらに強めた(エルケさん、あなたを見込んで頼みがあります。わたしを姉のところに連れて行って下さい。ただし、マリーも一緒に)
 エルケは驚愕したが、すぐに冷静さを取り戻して言った。
 「ルイーゼ様、あなたはともかく、マリーを部屋から出すことは、リーゼ様に禁じられています」
 (それでは、私から直接姉に話します)人形のスージーことルイーゼは言った。
 (お姉さま!、、、私が分かりますか?ルイーゼです)ルイーゼはカラスの時と同じように思考を飛ばした。
........

 (...ルイーゼ!あなたなの?!)わずかな沈黙の後、リーゼの思考が返信され、それはマリーとエルケにも伝わった。
 そして、直後に、ルイーゼも応答した。(そうです。お姉さま。今からマリーを連れてお話しに行きます)

 (...分かったわ。マリーを連れて1階まで来てちょうだい)リーゼから少し低い声音の思考が返ってきた。
 「かしこまりました」エルケはそう答えると、マリーに人形を渡して促した。
「マリー、ママを返します。さあ、応接間に行きましょう」エルケが先に立って歩き、マリーはその後ろをついて行った。
(ママ、どうなるの?)
 マリーは心配そうに心で聞いた。
(大丈夫よ。マリー。私が付いているわ)人形のルイーゼは心で答えた。

........

 館の外では、猫のサミーがやきもきしながらつぶやいた。
「あ~!、スージーとマリーは、本当に大丈夫かな~?!」
猫はうろうろ、そわそわし始めた。
 本来ならば、猫のサミーと、犬のベルガーは思考のやり取りはできないが、今はルイーゼが残していった思念のベールによって、思考の交換ができていた。
「慌てるな、今は、待つしかない」ベルガーがつぶやいた。

........

 応接間では、濃紺のドレスに着替えたリーゼが毅然として立ち、その隣には、今はすっかり人間の姿となった狼人のダークが不敵な笑みを浮かべて待っていた。
物語画像狼人ダークC.jpg
 「驚いたわ、ルイーゼ」リーゼは開口一番言った。
「あなたが人形に宿ったことは、動物たちの風の噂で知っていたけれど、まさか、ここに乗り込んで来れる力が残っているとは思わなかったわ」
 人形のスージーはマリーの胸に抱かれたまま、いかにも人形らしく微動だにしなかったが、こちらも毅然として思考を、その場にいる皆に伝えてきた。
 「私の体は動けずとも、私には信頼できる動物たちがいます。娘のマリーは、お姉さまには渡しません」そして、スージーことルイーゼは言った。
 「昔の話し合いの続きをしましょうか?お姉さま」
 ルイーゼのその声には、これから姉と対峙する、静かだが、抜刀の構えのような緊迫感が漂っていた。

........

to be continued...


 




 

 
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