SSブログ

青い炎と人形の物語 第3章その1 [球体関節人形製作]

てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。

「青い炎と人形の物語」の第3章です。
それでは、どうぞ。

第3章  覚醒した魔法(その1)

 「オホホホホ!」濃紺のドレスのリーゼは、仰け反るようにして、大きな声で笑った。
 そして、わずかの間の後に言った。
 「ルイーゼ、昔、袂を分かった後に、私は、あなたに会うことは避けてきたわ」リーゼはそこで一旦言葉を切った。
「でも、あなたの娘が不治の病にかかったとき、あなたは結局、魔女一族の奥義を使い、娘の身代わりとなって死んでしまった」
 リーゼはそう言いながらゆっくりと歩を進めた。
 「残念だったわ、そのときは本当に」

 「私の死の間際に、一度、会いに来て、そう言ったわね」人形の姿のルイーゼは答えた。

 「ええ、でもあなたの夫とマリーが居たから、すぐに退散しましたけどね」リーゼはそう言うと人形の中のルイーゼを見つめた。
「そして、後になって、あなたが人形の中に精神を移したのを動物の風の噂で聞いたわ」

 「その動物とは?」ルイーゼも人形の中からリーゼを見返して言った。

 「あなたも良く知っている使い魔のコウモリよ?」
 リーゼの言葉にルイーゼはわずかに動揺したが、動かない体の中で磨きあげられた精神は、密かに別のやり取りを始めていた。
(マリー、聞こえる?あなただけに話しているわ、ママだけに集中して返事をしてちょうだい)

 (ママ!、、、不思議、前からスージーがママだってこと知っていた気がする)マリーは驚きながらも心を集中して答えた。
 (そうよ、マリー、あなたが眠っている真夜中が私たちが会っている時間だったわ)スージーことルイーゼは言った。
 (深い夢の中で、お話ししたり、魔法の稽古もしたわ)

 そして、ルイーゼは核心に触れた。
 (思い出して?マリー、〈背中を押す魔法〉のことを)

 マリーは、そのキーワードを聞いて、普段は意識に昇らない、すべての夢の中の記憶が蘇った。
 (ママ、思い出したわ!)しかしマリーは動揺した。
 (、、、〈背中を押す魔法〉を、、、使うのね?)

 (そうよ、マリー、あなたにしかできない魔法よ!)ルイーゼは意を決して答えた。

 (、、、?)わずかな間であったが、姉のリーゼは少々いぶかしく思い、表情を固くした。

 「それでは、二人だけで話し合いましょうか?お姉さま」そんなルイーゼの言葉には彼女の覚悟が見てとれた。

 「分かったわ。ルイーゼ」姉は答えた。「お互い幻覚を見せあっても無駄ですからね」
 そしてリーゼは続けた。「さあ、マリー、ママと二人で話し合うから、その人形を渡してちょうだい」

 マリーは少々迷った様子を見せたが、歩を進めて低い声で言った。「お願いだから、ママを傷つけないで」
 そして彼女はリーゼにママを渡した。

物語画像魔女リーゼC.jpg

 (さて、ルイーゼ)リーゼは左手で人形の腰を、右手で頭を支えて、ルイーゼと向き合った。
(ここまで私に会いに来た、あなたの覚悟は良く分かったわ。でもね、、、)リーゼの人形を持つ手に少し力が入った。
(あなたと私の目指すものは大きく違うわ。話し合いで妥協点が見出だせるかしら?)彼女は一呼吸置いて続けた。
(私と、私の狼人達と、、、精神だけしか動かせない、ルイーゼ、あなたは対等に渡り合えるかしら?)
 リーゼは少々勝ち誇ったように言った。
(それとも、私に協力する?あなたもマリーも悪いようにはしないわよ?)

 (!!)

 リーゼにわずかな油断が見え、彼女の精神の障壁が緩んだ刹那だった。
 人形の中のルイーゼの精神がグイと立ち上がり、リーゼの頭の中を覗き込んだ。
 (今よ!マリー!私を押して!!)ルイーゼはマリーだけに心で叫んだ。
 (ママ!!)マリーは渾身の力を込めてルイーゼをリーゼの頭の中に押し込んだ。

........

to be continued...
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。