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青い炎と人形の物語 第4章その2 [球体関節人形製作]

 てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。

「青い炎と人形の物語」の第4章の続きです。

 窓の外のコウモリは一体何なのか? 謎は深まっていきます。
それでは、物語を続きをどうぞ。

第4章  自治区(その2) 

 自治区設立法案の補足説明資料が何とか出来上がったのは午前3時の少し前であった。

 「あーぁあ、眠いー」カーヤはフランツが残る部屋を出ると、思わず伸びをした。
 廊下はあまり照明が無く、薄暗かったので、カーヤは少し足早に、階段を使い階下に降り部屋に向かった。
 突然、部屋の手前10mでカーヤはぎくりとして立ち止まった。
 (部屋の前に誰かいる!!) 

 ...しかし、よく見ると、それは中年くらいの女で、服装からホテルのハウスキーパーと思われた。

 彼女はカーヤの方に向くと、手に持ったハンガーにかかった服を示した。
 「カーヤ様ですね。クリーニングが仕上がりましたのでお持ちしました。フランツ様の分もあります」

 カーヤはホッとすると同時に、不思議に思い聞いた。
 「確か明日の朝、いえ、もう今日ですが、7時くらいにと伝えたと思うのですが...?」

 「ええ、そう伺ってはおりましたけれど、お急ぎのようでしたので、お二人とも起きていらっしゃればと思いお持ちしました」
 「あ、そうですか、それじゃ、受取ります」カーヤは自分の分を受け取ったが、ついでにフランツの分も受け取ろうとした。「あ、じゃあ、フランツの分も私が...」

 すると、ハウスキーパーの女は慌てて言った。「いえいえ、上の階ですし、お荷物になりますので私がお持ちします」そして、彼女は付け加えた。「あ、それからカーヤ様、連泊のお客様にはホテルのオーナーからのプレゼントがあります」

 そう言って女はショルダーポシェットからこぶし大の何かを取り出して、カーヤに手渡した。
「ラッシア国の旅のお守り人形で、マトリューシアと言うものだそうです。それでは、おやすみなさいませ、カーヤ様」
そう言い残すとハウスキーパーの女は階段を上っていった。

「...マトリューシアね、聞いたことあるけど本物は初めてだわ」カーヤは左手の中の梨のような形をした奇妙な人形を見つめた。
(...何か妙な感じが...)カーヤがそう思った次の瞬間に、今度は妙にその人形が可愛らしく思えてきた。
(...割と可愛い人形ね)彼女は右手のハンガーをドアノブに掛けて、カーディガンのポケットから部屋のカギを取り出し、ドアを開け部屋の中に入っていった。 

........ 

 カーヤの1つ上の階のフランツもベッドに入ろうかという間際にクリーニングに出した服と奇妙な人形を受け取っていた。

(...マトリューシアか、聞いたことはあるが本物を見るのは初めてだ...しかし、何か妙だな...)フランツもそう思ったのだが、やはり次の瞬間には、妙にその人形が可愛らしく思えてきた。

(...旅のお守りか...そういえば、マリーは、また人形のスージーと寝ているのだろうか?...あの人形も何か愛しいものを感じるんだよな...何故だろう?...まあ、マリーは、今夜もアガーテさんが一緒だから心配はないだろう...)
 フランツは大きくあくびをすると、ハンガーを壁のフックに掛け、梨の形の人形をベッドの横のサイドテーブルに乗せ、目覚まし時計をセットすると同時にベッドに倒れこんだ。

(おやすみ、マリー。良い夢を見るんだよ...)と思う間もなくフランツは眠りに落ちていた。 

 ホテルの1階のロビーの大きなレザーソファには、こんな真夜中の時間なのに一人の若い女が腰かけていた。

 まもなく明かりを手に持った中年の女が階段から降りてきた。
 「ザスキア様?」ハウスキーパーの女は小声で話しかけた。

 「...首尾はどうだったの?コローナ?」ザスキアと呼ばれた若い女はソファから立ち上がると、ハウスキーパーに近づいていった。スタイルの良いその姿は、そのボディに見事にフィットした軍服に包まれていた。

物語の鬼人魔女ザスキアCsmall.jpg

 「はい、ご指示の通りにクリーニングの服と人形を手渡してきました」コローナは少々恐れ多いという感じで答えた。

「いつも、ありがとうね、コローナ」ザスキアはコローナの手に数枚の1000マロク札を握らせた。

「これを息子さんの薬代に当てなさい」

「!...ありがとうございます。ザスキア様」コローナが頭を下げると、ザスキアはホテルの入り口の回転ドアに向かいつつ「戸締りをお願い」と言い残した。

 ザスキアがホテルの外に出ると、二人の帝国軍親衛隊員が彼女を出迎えた。「ザスキア少佐殿、お車を用意してあります」

「ちょっと待って!」ザスキアは真っ黒なフォルキスワーグン車の前で立ち止まると空を見上げ、左手を空にかざした。

 すると、それを待っていたかのように彼女の左手に一頭のコウモリがひらりと舞い降りた。

(首尾はどうだった?ウーヴェ?)ザスキアはそのコウモリに思考で尋ねた。
(すべて記憶した)ウーヴェと呼ばれたコウモリは、そう思考で返した。

 それを聞いたザスキアは満足そうにニヤリと微笑み、コウモリを連れたまま車に乗り込んだ。
 そして、真っ黒なフォルキスワーグン車は低いエンジン音でホテルの前から走り去っていった。

........

to be continued...  
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