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青い炎と人形の物語 第4章 その3 [球体関節人形製作]

てぃねこ@ハニたろべネコです。

人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。  
「青い炎と人形の物語」の第4章の続きです。

自治区設立法案の行方はどうなるのか? 法案提出となるのか?
それでは、物語を始めます。 

第4章  自治区(その3)  

 翌朝、フランツは、法案提出を審議する広い縦長の会議室の末席に座っていた。

 彼の横には、今回の法案提出を中心となって推進しているクラウス議員とその一派であるメンシュナ党員が座っており、その正面には、法案に難色を示しているエッカルト中将をはじめとしたファシーズ党派が陣取っていた。...が、その中に見慣れない若い将校の姿があった。  

(おや?誰だろう?今まで見た軍の将校の写真には無かった顔だが...?)フランツはいぶかしく思ったが、同時にハッとした。(いや、あの顔立ちは見たことがあるぞ、、、まさか?、、、ブルクハルト王子?!)  

 「静粛に!」ややざわついていた会議室で、フランツから見て一番奥に座っている初老のロホス議長が口火を切った。 

「本日は、メンシュナ党から提出された<自治区設立法案A(アル)>および、ファシーズ党から提出された<自治区設立法案B(ベル)>について審議を行います」  

「えっ?!」メンシュナ党一派はどよめいた。フランツばかりでなく、クラウス議員も驚きを隠せなかった。

(可能性として、対決法案C(セル)が提出されるものと予想したが、、、基本が自治区設立になったとは!、、、いや、まだ、法案の中身がどうなっているかが問題だ)フランツの頭の中は高速に回転し始めた。  

 「では、まず<自治区設立法案A>についてメンシュナ党クラウス議員、説明願います」続けて議長が言った。  

 「それでは、我々メンシュナ党からの自治区設立法案を説明します。まず...」クラウスは立て板に水のごとく流暢に話し始めた。
 彼が話したことを要約すると、次のようになる。 

 〈1 代表となる3つの民族と極少数の民族で構成される自治区を設立し、本国の帝国政府は自治区政府を独立した政府として承認する〉

 〈2 自治区内の治安維持のための自治区警備部隊を自治区内の民族で構成し、定期的に帝国政府と情報交換する〉

 〈3 自治区と本国との交易の条約を別途定め、共同の委員会を設立して毎年条約内容について協議する〉
 ...などであった。 

 「...以上となります。」 

 クラウスが一旦説明を終えたことを受けて、ロホス議長が言葉を継いだ。「それでは、法案Aへの質疑に移ります」

 すると、早速、ファシーズ党の切れ者であるオスヴァルト議員が手を上げ、口火を切った。 

 「自治区を構成する民族の通称名についてお聞きしますが」オスヴァルトは手揉みしつつクラウスとフランツを見た。

「クラウス議員から説明のあった民族の通称名はかなり広範囲の地名を表しておりますが、我々の調査によりますと、現在の彼らの居住域はもっと限定された地域となっています。通称名命名の根拠について教えて頂きたい」 

 「クラウス議員」ロホス議長が即座に返答を求めた。 

 「3民族の主な居住域については、おっしゃる通りですが、彼等が単独で点在する地域、放牧に要する地域を考慮に入れると命名した地名が妥当であると判断します」クラウスは早朝にフランツと打ち合わせた内容を淀みなく説明した。 

 「それでは、もう1つ」オスヴァルトはさらに質問を続けた。「各3民族の一派からは民族名について次の命名の要求がきております。すなわち、ヘクセン族、ヴォルフォン族、デリモン族であり、これらの意味は、魔女、狼人、鬼人を表しており、かなり危険な思想を持った民族であることが...」 

 そこでクラウス議員が反論した。「それは!各民族の少数の一派の要求であり...」 

 「クラウス議員!質問を遮らないように」ロホス議長がすぐさま釘を差した。 

 それを受けてオスヴァルトは続けた。「ゴホン!...少数であれ、危険な思想を持った民族であることに違いはないと考えます。そして、我々ゲルマールの平民の中からも、当該3民族による自治区設立には相当の不安を持っている者が多数いることが事前調査により示されております。これについてはどうお考えですか?」 

 「クラウス議員」ロホス議長がまた即座に返答を求めた。 

 「まず危険な思想とは言えないことを申し上げます!」クラウスは声を大きくして返答した。
「また、自治区内の治安維持に関しては、自治区警備部隊により、十分確保できます!」 

 そのクラウスの返答に対して、すぐに切り返してオスヴァルトが話し始めた。「それでは、我々ファシーズ党の法案Bについて説明します」

 オスヴァルトの発言について何も言わないロホス議長は、どうもファシーズ党寄りと見受けられた。

 そして、オスヴァルトは法案について以下の内容を述べた。 

 〈1 代表となる3つの民族と極少数の民族で構成される自治区を設立し、本国の帝国政府は自治区政府を傘下の組織として承認する〉

 〈2 自治区内の治安維持のために帝国軍隊を駐留させ、自治区内にも警備部隊を別途設けるが、軍の傘下の組織とする。また帝国海軍駐留のため、自治区範囲を拡大し、海岸線を一部含むものとする〉

 〈3 自治区と本国との交易の条約を別途定め、共同の委員会を設立し、条約内容については必要に応じて協議する〉 
 ...などであった。 

  「軍隊の駐留だって?!それじゃ自治区政府は帝国政府の言いなりになってしまうぞ!」クラウスは隣のフランツに小声で耳打ちした。 

 オスヴァルトが説明を終え、ロホス議長が言葉を継いだ。「それでは、法案Bへの質疑に移ります」 

 クラウスが立ち上がり言った。「帝国軍隊の駐留は自治区政府が独立して自治区を治めることの妨げになります!」 
...... 
 その後、クラウスとオスヴァルト、また双方の構成メンバーが論戦を行ったが、それに対してはロホス議長は何も言わなかった。 
 そしてしばらくの論戦の後、自治区設立法案の決を採る段となったが、法案Bが法案Aをわずかに上回り過半数となってしまった。 

 「それでは、過半数を超えたことにより、法案Bを本国会に提出します!」ロホスは高らかに宣言した。 

 「くそ!やられたな!直前にファシーズ党の根回しがあったようだな!」クラウスは小声でフランツに言った。

 確かに昨日まではメンシュナ党の地道な根回しによって、法案Aの賛成が過半数として見積もれていたのだが、どうも直前のファシーズ党の謎の根回しによって、中立である党の議員3名が法案Bに流れてしまったのであった。

 「しかし、基本的に自治区設立自体が廃案にならなかったのは不幸中の幸いだ。また、譲歩条項として、自治区内の1年毎の査察ができるようになったことは成果と言える」クラウスはフランツの目を見つめ言葉を続けた。「査察団のメンバには君にも加わってもらわないとな、フランツ!」 

 「分かりました、クラウスさん」フランツはそう答えながら、ふと前方を見ると、今、席を立つ軍服姿のブルクハルト王子と突然目が合い、2秒程見つめ合ってしまった。

物語ブルクハルト王子smallC.jpg

 王子はフランツに向けて微妙にほほ笑んだが、やがて目を伏せると他のファシーズ党議員とともに会議室を出て行った。

(...私のことを知っているような素振りだった...なぜ?...)フランツは思った。(...それにしても、王子が突然ファシーズ党員になるとは!...しかもいつからなんだ?)
 今朝、突然の、ファシーズ党の基本的な自治区設立の容認と、今まで中道を保っていた王族の若き王子のファシーズ党入り...謎は深まるばかりであった。 

........ 

to be  continued...  
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