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青い炎と人形の物語 第6章 視察の朝の回想 その3 [球体関節人形製作]

こんばんは、てぃねこです。
遅くなりましたが、金曜夜の更新です。

青い炎と人形の物語 第6章 視察の朝の回想 その3

 リーゼは自分の出番の最後に言った。

「、、、残された手段はそれしかないわ、フランツ、わたしとしては、クーデターに賛成の立場だったけれど、、、マリーの力で主導権を取り戻そうとしたけれど、、、そう、うまくは行かなかったわね、、、フランツ。あとは、ルイーゼとマリーとで、あなたたちの思うようにやっていいわ。わたしも、、、ルイーゼと一緒になって、彼女の思考の影響を受けてしまったのかも、、、でも、魔女、狼人、鬼人の生存の権利を守ることは忘れないで!、、、それじゃ、ルイーゼと替わるわ...」そこまで言うと、リーゼはがっくりと首を垂れ、目を閉じた。

、、、が、リーゼは、まもなく目を開き、顔を上げた。

 その眼には、先ほどのリーゼとは異なる光が宿っていた。

「...フランツ!...久しぶりに夢以外で会ったわ...」声質はリーゼであるが、その声音はルイーゼのもの、また彼女から発せられた思考のベールはルイーゼのものであった。

「ルイーゼ!」フランツは思わず立ち上がり、ルイーゼことリーゼも椅子から立ち上がり、二人は強く抱き合った。

「ルイーゼ! マリーからの言葉で、僕も夢の中の君との会話をすべて思い出した、、、カーヤと付き合ったこと、何度か彼女と寝たことは、夢の中で君に懺悔したが、、、今、ここで、もう一度、懺悔したい...ルイーゼ、許してくれ」
フランツは抱擁を解いて、ルイーゼの両手を下から支えるようにして言った。

「...いいえ、フランツ、その懺悔はもういいわ。私が死んで肉体が無くなって、人形の中にいたのですもの、、、あなたが、カーヤと付き合ったことは、自然な流れよ」ルイーゼはそう言うと、フランツの両手を軽く握った。

「...実は、わたしも、ある意味、懺悔の必要があるのかもね...」ルイーゼは少し言いよどんだ。

「え?、、、それはいったい?」フランツは不思議に思った。

「...これは、リーゼお姉さまからも言っていいと言われたので、、、何かお姉さまに虐められている感じではあるのだけれど、、、実は、昨晩、狼人のダークに抱かれたのよ」とルイーゼは告白した。

「えっ?!...そ、そうか、、、リーゼ義姉さんは、、、」フランツはちょっと言葉に詰まった。

「、、、そう、ダークとは、ずっとそういう関係だったってこと。で、昨晩は、ある意味、お姉さまは、私を罰するために、この体をダークに抱かせたのよ!、、、でもね、フランツ、恥ずかしい話だけど、、、久しぶりに人の肉体に入って、、、狼人からの、、、あの体験をして、、、だいぶ、感じてしまったの、、、」ルイーゼはそう言うと、フランツの両手を握ったまま目を伏せた。

「、、、そ、そうか、、、ハハハ、そうだったんだね」フランツは、最後の言葉に、ちょっと嫉妬を感じつつ言った。

「...ところで、、、マリーがラウラさんのところに行く件は、納得してくれた?」ルイーゼは、いきなり話題を変えた。

「...ああ、[血の洗礼]のこともあるし、君とリーゼ義姉さんのこれからのこともあるし、それが一番いいと思ったよ」フランツは答えた。

「...今は、わたしは、直接、見守れないけれど、ラウラさんなら、きっと良くしてくれるわ」ルイーゼはそう言うと、再び、フランツと抱き合った。

「...ああ、、、しかし、さっきの話にもあったように、マリーは戦いに臨まなければいかないかもしれない、、、もちろん、そうなったら、僕も一緒に行くよ! 彼女の力にはなれないかもしれないけど!」フランツは最後の方は、少し力を込めて言った。

「、、、ええ、それは、わたしも覚悟しているわ、、、実は、お姉さまもそうなんだけれど、わたしの思考もお姉様の影響を強く受けているわ。以前の穏健派のわたしとは、少し変わってきているみたい...」ルイーゼは素直にそう言った。
「...君とリーゼ義姉さんは、これから、どうしていくんだい?」とフランツ。

「...マリーが[釣り上げの魔法]を習得しても、わたしの精神が移る先の肉体が無いものね...何年も人形の中に精神だけでいられたことが、今では、あり得ないことのように感じるわ、、、人の体に入って、ほんの2、3日のことなのにね、、、人の体の中にいたい、、、今は、強く、そう思うわ、、、」ルイーゼはそう言うと、再び抱擁を解いた。

 フランツの頭の中には、さきほどルイーゼが告白したダークとのことが浮かんできた。
「...そうだね。それは、そうだよね」彼は言った。

 そして、二人は再び、しっかりと抱き合い、今度は口づけを交わした。

 それから二人は、それ以外のことをしばらく話した後、フランツは再び、エルケが操る犬ゾリで、自宅へと帰ったのであった...

......

 列車の窓に雪混じりの少し強い風が吹きつけてきた。
 フランツは目の前の雪を払うような仕草をすると、眼をいったん閉じて、また開けた。

 すると、食堂車に行っていたカーヤが戻ってきた。

「お待たせ!フランツ先生、、、あら、どうしたの?」カーヤは、やや下を向いていたフランツの顔を覗き込んだ。
 その手には、ミルクチョコレートバーが2つ握られており、そのうちの1つをカーヤはフランツに手渡した。

「ああ、ありがとう、カーヤ、ちょっと寂しげな風景なんでね、ちょっと気が重くなっただけだよ」フランツは努めて元気に答えようとした。

「まぁ、視察は、これからなんだから!チョコ食べて元気だして!」カーヤは、4人用ボックス席の、フランツと向かい合う席に腰かけて、明るく言ったのであった。

to be continued...
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