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青い炎と人形の物語 第9章 魔法の女王 その4 [球体関節人形製作]

 
 シュべルトの町へのVV親衛隊の襲撃が失敗に終わってから2日目の10日の夕陽が沈むころ、フランツとカーヤは古いホテルの半地下にある別々の部屋に軟禁状態となっていた。
 半地下なので、部屋の高いところにある鉄格子のはまった窓からは夕陽の赤暗い光が差し込んでいた。
 部屋の中にトイレやバスルームはあるものの、部屋のドアには鍵がかけられ、食事は日に2度、ドアの下の小さな扉から固いライ麦パンとミルクという質素な食事が差し出されるだけであった。

(これから...どうなっていくのだろう?...我々はもはや人質の意味はなさないと思うが...)

___『パパ!』___

 窓の方を見ていたフランツは、突然の声にハッとして思わず後ろを振り向いた。

 そこには___その空中には、薄青い半透明の一人の少女が浮かんでいた___

「マ、マリー!」
 フランツは驚きの声を上げ、彼女のすぐそばに駆け寄った。

『...心配しないで、パパ。私は幽霊じゃないわ。精神体の多くを分離させてここまで来たの』

 フランツはマリーの言葉が口から出ているものでなく、頭に直接語り掛けてくる精神感応《テレパシー》の言葉であることを理解した。

「マリー!...君はついに本当の力に目覚めたんだね?」
 フランツの眼にはわずかに涙がにじんでいた。

『ええ。パパ...パパとカーヤさん、それに視察団の他の人たちも無事なことが判ったわ...これから、二人の魔法使いと会って話をしようと思うの』

 マリーの言葉に、フランツはすぐさま応じた。
「マリー!...それは、気を付けた方がいいと思う...このホテルを襲撃しようとしたVV親衛隊の連中を間接的とは言え全員抹殺したのだから」

『...そうね。そうかもしれない...』
 マリーがそこまで答えたときであった___

 空中に浮かぶマリーの左右に、同じく空中の浮かぶ半透明な二人の子供が突然出現した。

『君がマリーか!僕たちより二つ年下の10歳と聞いているが...?』
 マリーの右側から魔の帝王の少年レオンが精神感応《テレパシー》で話しかけた。

『...その年齢で、この力...あなたの肉体は今どこにあるの?』
 マリーの左側から魔の女王のレオナも精神感応《テレパシー》で話しかけてきた。

『...あなたたちが、噂に聞いていた双子の魔法使いね?...私の体は今、ヴィルレーデ村にあるわ...私の名前を知っているのなら、まず、あなた達も名乗るべきね!』
 マリーは強気に言った。

『...いいとも、僕は双子の兄でレオン。そして__』

 レオンが続けて話す前に素早くレオナが口をはさんだ。
『私は妹のレオナ。 マリー!兄さんの言うことにはちゃんと答えなさいよ!』

 マリーはレオナをジロリと睨むと口を開いた。
『そうよ。10歳よ!...あなた達はこれから何をするつもりなの?戦争をするつもりなの?』

『...そうだな。今の状況ではそうなるだろうな』
 レオンは少し覚悟している雰囲気で答えた。

『あなた達はVV親衛隊の人たちを殺したそうね...これから戦争を始めたら...死ぬ人は敵の軍隊の人だけでなく、あなた達の仲間の人達もたくさん死ぬことになるわ!』
 マリーは最初にレオン、続いてレオナ、そして最後にレオンの方を向いた。

『...だが、もうサイは振られたんだ。元に戻すことはできない』
 レオンはつぶやくように言った。

『...私はここに来る前に、帝国陸軍の黒幕の男のところや、陸軍本部に寄り道をしてきたの...大変な事を聞いてきたわ!...12日に陸軍の中隊が国境線側から、13日には同じく中隊が反対方向からやってくる。どちらも目標はこの町よ!』

 マリーのその発言にレオンとレオナは顔を見合わせた。
 そして、レオンは言った。
『有用な情報をありがとう。マリー...軍隊の鬼人族が抜けて、今、情報網が途絶えてしまったところだから...どうだい?マリー。この状況ではパパやその仲間達を守るためにも、君は僕たちに味方ついたほうがいいんじゃないか?』

 レオンのその言葉に、レオナがすぐさま反発した。

『遠隔の諜報なら私も兄さんもコウモリを使ってできるわ!別に味方にしなくても!』

 彼らの言葉にマリーは毅然として言い放った。

『...私はこれ以上、誰も死なせたくないだけよ!』


...to be continued.



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