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青い炎と人形の物語 第10章 一か八かの計画 その1 [球体関節人形製作]

 
 師匠のラウラが提案した計画は大きなリスクを伴うもので、確かにある程度の人の犠牲が予想された。
 だが、現状のまま、魔女族、鬼人族、狼人族と帝国陸軍との間で内戦が勃発すれば双方の死傷者の数は比べ物にならない程増え、最終的に魔女族、鬼人族、狼人族の大量虐殺に至る可能性もある。

 マリーは、ラウラの計画の詳細の是非を一つ一つ確認し、納得するに至った。

「わかりました。師匠」
 ついにマリーは決断した。

「そうと決めたら、また私は飛ばなければなりません」
 マリーは強い意志でラウラとエルケにそう伝えた。

「マリー」
 ラウラは自分で提案した計画であったが、かなりの後ろめたさを感じていた。

「すべての事の成り行きをお前の力に任せてしまうことになる」
 ラウラは言葉を続けた。
「もしかすると、私の命だけでなく、お前の命も危うくなるかもしれん。私にできることは多くはないが、できる限りのことはしてみよう...やってくれるか?」

「はい、師匠」
 とマリー。
「きっと、これも私の運命なのだと思います」

 ラウラは一時《いっとき》マリーの目を見つめ、そしてベッドから離れ、厳重に鍵を掛けた戸棚を開けて、中から2本のガラス瓶を取り出してきた。

 ガラス瓶の中には琥珀色の液体が入っており、何か煌めく細かな粒子がゆらゆらと瓶の中で揺れていた。

「これは、お前が眠っている間に、また新しく調合したものだよ」
 ラウラはガラス瓶を部屋の明かりのランプにかざした。
「とんでもなく効果のある滋養強壮剤だが、副作用もある...効果が続く3日間は飲まず食わずでも大丈夫だが、その期間が終わった後の反動も大きい...下手をすると廃人同様になってしまうかもしれん...」

「...師匠!そうだとしても覚悟はできています!」
 マリーは目に強い命の光を宿して答えた。

「それでは、まずは乾杯じゃ。残さず飲むように」
 ラウラはマリーに瓶を手渡し、チンと軽く瓶同士をぶつけると自分のベッドに座り込み、ゆっくりと瓶の中身を飲み干した。

 マリーもラウラに倣い、瓶の中身を3回くらいに分けて飲み干すと、こちらは自分のベッドの上にあおむけに倒れこんだ。

「では...行くとするかの?...マリー。道案内を頼んだぞ。それから...エルケ?」

「はい。ラウラさん、分かっています。二人の精神が旅に出ている間は、私が残った二人の身体をお守りします」
 エルケは片膝を床について固く約束した。

「それでは...よろしく頼む」
 ラウラもベッドの上にあおむけになって目を閉じ、何か呪文を唱え始め、やがてラウラの精神体の大部分が彼女が寝ている上に現れた。

 マリーの精神体は、すでにあおむけに寝ている彼女自身の上に出現しており、自身の身体の上に爪先立ちで立っていた。

「行きますよ!師匠!」
 マリーはその薄青い精神体の左手を伸ばし、ラウラの精神体の右手を掴むと、一気に家の壁を通り抜けていった。

 エルケが窓からその姿を追うと、二人の精神体は青白く輝いており、まるで大天使のように見えた。
 そして、大天使の二人は一気に加速すると、夜の闇の中に消えていった。

...to be continued.



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