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青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その6 [球体関節人形製作]

青い炎と人形の物語

 第8章 戦慄の魔法兄妹 その6

「そこから先は、私に説明させて!ザスキア姉さん」
 『魔の女王』レオナは、再びフランツとザスキアの前に現れた。

「『歯立ての儀式』はね。フランツさん。どうしても仲間に引き入れたい場合にも使うことがあるのよ。ザスキア姉さんはそれをしたかった」

 レオナの言葉にザスキアは、
「まぁ。『魔の女王』様はおませだこと」
と一言だけ返して、グラスの中の白ワインを飲み干した。

 レオナはそんなザスキアを横目で睨むように見つつ言った。
「...ところで、フランツさんとカーヤさんの会話や強い思考については、バルリンのホテルに滞在していたときから全て聞かせてもらったわ」

「えっ?!...もしや人形が」
 フランツははたと思い当たった。

「そう。その通り。あなた方が受け取ったマトリューシアには、私達の先祖の魔女の骨の欠片《かけら》が入っていたの。その先祖の残留思念によって、あなた方の会話の情報が私たち兄妹《ふたご》に伝えられたのよ」

「...ということは、マリーについてのことも、、、」

「ええ。マトリューシアから思念の触手を伸ばして、あなたの思念の強い部分を読ませてもらったわ。幸いあなたの魔力の近親覚醒が少し遅れたので気付かれずに済んだけれどね...あなたが思っている通りマリーは『血の洗礼』を乗り越えて、今、徐々に体を回復させているわ、、、そして、恐らく近いうちに私達兄妹の存在に気がつくでしょう」
 レオナはそこまで言うと、また厨房に戻って行った。

(強い思考を読む。だと?!これはうかつなことは考えられないな...しかし、やはりあのマトリューシアが情報を漏らしていたのか...今でこそ怪しいと分かるが、、、受け取ったときは特に何も感じなかったからな...まてよ、魔力の近親覚醒によって気づかれると言っていたが、もしやこの俺にも思考を読まれるのを感知することができるのか?...いや、その前に何故、魔女の血が流れていない俺にそんな力が発揮できるんだ?)
 フランツがそこまで考えたとき、頭の中に何か透明で青い触手のようなものが伸びてきているのを感じたので、意識の力でそれを追い出してみた。

「あら!驚いた!触手の防御ができるようになったのね?」
 ザスキアが少し酔ったような言い方をしてフランツを見た。

「...今のが思考を読む触手なのか?、、、いや!ひとつ教えてもらいたい。ザスキア少佐!」
 フランツもザスキアの目を見て言った。
「君は魔女のハーフだから魔力を使えるのだろう...だが、この私は、娘のマリーが魔力に覚醒したからといって、魔女の血が流れていないのに、何故使えるようになったんだ?」

「おや。これは驚いた」
 今度は正面のブルクハルト王子が口を出した。
「フランツさん。あなたはあなたの父方の御ばあ様が有名な魔女だったことをご存じないんですか?」

 ブルクハルトの言葉にフランツは本当にびっくりした。
「えっ?!父のお母さんが有名な魔女?...そ、そんなことは初耳だ!」

「なるほど...あなたのお父様は、その事実をひた隠しにされてきたのですね...理由はわかりませんが...結局、あなたは魔女のルイーゼと結婚した...無意識のうちに魔女の血に惹かれたのでしょうね?」
 ブルクハルトは少し面白いものでも見るようにフランツを見た。
「さらに、付け加えて言うならば、このカーヤさんの母方の御じい様は鬼人族のハーフですよ...結局、皆、一族の血に無意識のうちに惹かれてしまうのですね」

 初耳なことばかりでフランツはひどく当惑したが、思い切ってブルクハルトに尋ねた。
「それでは、ブルクハルト王子!あなたはどうなのですか?王族は純粋な人間族なんですよね?!」

「...いい質問です。私は現王の弟の子供ですが、正室ではなく、側室の子供なのです...この私だけが!...確かに今は王族の一員ですが、私の母親は王族を追われました...お分かりでしょうね?...私の母親は魔女のハーフでした。ゆえに王族を追われました...そして、私に王の座が回ってくることは120%無いということなのです!」

(...そういうことだったのか!)
 フランツは、今、起こっているすべての事実に隠れた理由があったことを理解した。

...to be continued.



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