SSブログ

青い炎と人形の物語 第5章 その5 [球体関節人形製作]

てぃねこ@ハニたろべネコです。

人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。

「青い炎と人形の物語」の第5章の続きです。
それでは、どうぞ。

第5章  マリーの覚悟 その5

 また会えた嬉しさに、ラウラの家へと向かうソリの上で、マリーとエルケは四方山話を咲かせていた。

「ねぇ、エルケ、今は冬だから、狼...いえ犬ゾリだけど、春になったらどうするの?」とマリー。
「ロバの馬車を使うのよ、マリー」とエルケは返す。

「ねぇ、じゃあ、その間は、この狼さん...いえ犬さん達は何をしているの?」マリーは次々と質問した。

 マリーの横でソリを操るエルケは少しばかりニヤリと笑い答えた。
「そうねぇ、何をしてもらおうかしら?」

「えーっ、何もすることが無いの?」マリーは矢継ぎ早に返す。
「アハハ、本当はやることがあるの、まず猟犬としての仕事、リーゼ様がお客様と一緒に鹿やウサギ狩りに行くときが出番よ」エルケは答えた。

「もー、エルケは」マリーは少々ブスッとしたが、すぐに質問をぶつけてきた。「えー、でもお客様が、猟犬が狼だったら驚くんじゃない?」

物語犬ソリ上のエルケとマリーCsmall.jpg

「狼だって承知しているお客様でも、全く知らないお客様でも、リーゼ様の〈偽装の魔法〉で、見た目は体格の良い犬に見せているわ...実は今もこの四頭は魔法がかかっているけれど、マリー、あなたには狼の姿に見えるのね?」エルケは感心の目でマリーを見て言った。

「うん、魔法がかかっているのも分かるし、それでも狼に見える」そう言うマリーの青い瞳はキラリと光った。
「ねぇ、エルケもダークみたいに狼に変われるの?」

 マリーの無邪気な質問にエルケは少々困り眉間にシワを寄せたが、すぐに優しくおどけて返した。
「そうよー、狼になって、マリーを食べちゃいますよー!」

「ううん、エルケはそんなことはしない」マリーはエルケの瞳を見つめて言った。

(これは、魔法のフィールド?)エルケはマリーから流れ込んでくる暖かな熱を実際に肌で感じていた。

「今日は雪は止んでいるけれど、日中の気温はかなり低いわ...でも、暖かいのは、マリー、あなたがやっているの?」
「うん、ソリの上は風も当たって寒いから、暖かい羽毛のイメージで包んでいるの」マリーは事も無げにそう答えた。

「この魔法はママから習ったの?」とエルケ。
「ううん、習ってない、なんだか、このあいだの夜からできるようになった」マリーは例の夜の出来事を思い出して言った。

(!...)エルケもその出来事を思い出すと同時に、改めてマリーの覚醒した魔法の力に驚いた。

「マリー」エルケは静かに語りだした。

「私たち狼人は、あなたたち魔女族よりも世の中から隠れて生きてきたし、今でも隠れて生きなければならないの。何故だか分かる?」エルケの問いかけにマリーはかぶりを振った。

「私たちが人と狼の間で変わることは、そんなに思い通りにはできないの。兄のダークのように1時間くらいの短い時間で変化できる者もいれば、1日以上の時間をかけないと変化が完了できない者もいるわ。私も3時間くらいはかかるの」エルケは続けた。

「そして大きな問題は2つ、1つは変化が始まったら途中で戻すことができないことと、もう1つは...」エルケは少し言いよどんだ。

「大きな感情や感覚に揺さぶられたときに、変化の意志がなくても勝手に変化が始まってしまうことがあるの...これは、マリーがもう少し大人になれば分かってくる話なんだけど。男と女が、身体が大人になる中で経験することで起こるの」

 マリーは思わずそれは何?と聞こうとしたが、すぐにその意味するところが分ったので質問をやめ軽くうなづいた。

「...そういうことがあると普通の人間の社会の中で暮らしていくのは無理でしょ?あ、それから女の場合は赤ちゃんを産むときには100%そうなるわ」エルケはそこで一旦言葉を切った。

 思ったよりもはるかに深刻な話になり、マリーは思わず黙り込んでしまった。

「...そんな訳で」エルケは続けた。「私たち狼人は、理解のある魔女や鬼人、そしてごく一部の理解ある人間の協力を得て、ひっそりと人間社会の片隅で隠れるようにして生きているの。でも...」

 エルケは息を吸い込み、やや張りのある声で言った。

「今、リーゼ様は私たち狼人、魔女、鬼人が安心して暮らしていける大きな計画をもって動き始めているわ!」

 最後にエルケは少し顔を上げ、青い空を見上げた。

「大きな計画って?」マリーはそこで質問した。

 エルケはちょっと絶句したが続けた。
「ごめんなさい。話過ぎたかも。大きな計画のことは本当は秘密で言えないの...私がしゃべったことはリーゼ様に内緒にしてくれる?」

「うん、わかった、秘密にしておく」マリーは素直にうなづいた。
 しかし心の中ではこうも思っていた。

(...リーゼ伯母様とママが別れて暮らし始めたことと何か関係があるのかな?なんだろう?)

 そこからあとは、またマリーとエルケは他愛もないおしゃべりを始めたが、やがてソリは森のはずれの1建の古い小さな家の前に着いた。

「着いたわ、ここがラウラおばさんの家よ。マリーは初めてかしら?」エルケは先にソリから降り、マリーが降りるのを手伝った。

「ううん、ママがまだ家にいたときに一度と、ママが亡くなってから一度、私の家で会ったことがあるけど、ここに来るのは初めて」マリーは興味津々で謎の小さな家の扉を見つめた。

 エルケが扉をノックし、中からやや年のいった女が顔を出した。
「おや、エルケかい、それと...まぁ、大きくなったね!マリーだね!」

「こんにちは、ラウラおばさん!」マリーの元気なあいさつに、瞬間ムッとしたラウラだったが、すぐに機嫌をとり直して続けた。
「さあ、外は寒いから中にお入り」

 マリーとエルケは小さな家の中に入って行った。

to be continued...


nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:アート

nice! 1

コメント 2

てぃねこ

はじドラ様、nice!ありがとうございます!
by てぃねこ (2019-04-28 20:46) 

てぃねこ

はじドラ様、NIceありがとうございます!
by てぃねこ (2019-05-08 08:10) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。