SSブログ

青い炎と人形の物語 第6章 視察の朝の回想 その1 [球体関節人形製作]

 てぃねこです。
 GW中の更新です。それでは、物語を始めます。


 第6章 視察の朝の回想 その1

 今日は、三民族統合自治区視察の行きの日程である。
 列車は祖国デイテュラントの国境線を超えて、ポルソーカ国に入り始めた。
 自治区の中心となる町に向かうための一番近い駅は、隣の国の国境に近いシュチェリン駅なのである。

 列車の窓から見えるうっすらと雪の降り積もった平原をぼんやりと眺めながら、フランツは4日前の出来事を回想していた。
 ......話は4日前、フランツが家に戻り、マリーとエルケに会った翌日のことである。

......

「久しぶりですね。フランツ」

 優しい口調で切り出したリーゼの言葉が意外な気がした。

「...そうですね。リーゼ義姉《ねえ》さん」
 フランツも、まずは静かに応じた。

 狼人エルケの操る犬ソリで、森の中のこの屋敷に来たが、10年以上来ていなかったこともあり、屋敷の中はずいぶんと模様替えした様子であった。
(確か、最後にここに来たときは、ルイーゼと二人で馬に乗って来たんだよな...)フランツはそう思いながら、部屋の周囲を見やった。

 そして、今の時点では、エルケも、そして、最初はリーゼのそばに立っていた狼人ダークも、応接室から出て行ったところであった。

「今回の件については、マリーには大変申し訳ないことをしました。謝ります」リーゼはそう言いながら、椅子に掛けた状態ではあったが、フランツに向かって深々と頭を下げた。

「マリーも無事に戻りましたし、これ以上咎《とが》める気はありませんが、、、私の言いたいことは2つです!」
 フランツは、そう言うと息をスゥーッと吸い込んだ。
「まずは、リーゼ義姉さん。あなたがマリーを拐《さら》った背後にある計画をお聞きしたい!、、、そして、あなたの中にいるルイーゼと話がしたい」

「...わかりました。フランツ。相反する立場では、ありますが、この際きちんとお話しましょう、、、ただし、、、」リーゼはそこで釘を刺すように言った。

「これを話す以上、このことを不用意に他言することは、こちらの命運を左右しますし、私の目の届かないところで、あなたやマリーの命にも関わりますので、お忘れなきように...」

「...それは、脅しですか?」とフランツ。

「いえ、警告です」とリーゼは返す。

 その言葉に対して、フランツは納得のうなずきをした。

「...では、お話ししましょう」リーゼは続けた。
「魔女、狼人、鬼人などの少数民族の解放に関しては、わたしたちは強硬派、あなたたちは穏健派と言えるでしょう。この立場の違いは、今まで受けた恐ろしい迫害の経験の有り無しが大きいので埋めることは不可能でしょう、、、」

「!、、、」フランツは一瞬反論しかけたが、まずはグッと抑えてリーゼの話を聞くことにした。

「...そして私たちは、少数民族の隔離や排除を最終的な目的としているファシーズ党を中心とした組織と戦う決断をしました。フランツ、あなた方メンシュナ党を中心とした人たちは、あくまで話し合いによる解決を行おうとしていましたね?」

 リーゼが話を自分に振ってきたので、フランツは応じて答えた。
「ええ、そうです。いくらあなたがた魔女、狼人、鬼人が精神能力的、身体能力的に通常の人間に比べて優れていたとしても、最新の兵器や軍隊をバックボーンとしたファシーズ党と戦争を起こすことは、悲惨な結果を招くだけです!そのため、われわれは、あくまで話し合いを通じて解決を図り、最終的には、今回の自治区設立にこぎつけたのですから」

「でも、内容としては、ファシーズ党の法案通りに軍隊が駐留することになったのでしょう?」リーゼは少し皮肉交じりの口調で言った。

「...さすがに、そこらへんの情報はすでに伝わってますね。」とフランツ。

「ええ、一般のニュース報道だけでなく、私たちの何人もの密偵が活躍してますのでね。当然、視察団のメンバや日程も知っています」とリーゼ。

「、、、すると、私の会った軍のザスキア少佐は、そのうちの一人ですか?」とフランツは返したが、ファシーズ党の帝国軍隊の中で、そんなことがありうるのだろうかといぶかしくも思い、半信半疑の状態であった。

「そうです。よくわかりましたね」リーゼは隠すこともなく言った。
「彼女は魔女と鬼人のハーフで、われわれの仲間です。この情報を漏らしただけでも、あなたの命は狙われるかもしれませんがね」

「...では」フランツは少々青ざめて、ちょっと迷ったが、勇気を持って更に尋ねた。
「ブルクハルト王子、いやブルクハルト少将もそうなのですか?」

「...そこのところが、私の想定外だったところなのですよ。フランツ!」リーゼの発言としては意外なものであった。

「もちろん、長い時間をかけて、私たちは、国民が根強い支持を持つ王族を仲間に引き入れるべく、影の活動を続けてきました。そして、現状では、ほぼ100%国王の座には就けないブルクハルト王子を、ようやく説き伏せて仲間に入れることに成功したのですよ」リーゼはそこで言葉を切った。

(!、、、そうだったのか!現国王には息子の王子が3人もいる。現国王の弟の二人目の息子であるブルクハルトに国王の座が渡ってくることはまずあり得ない!...ということは、ブルクハルト王子の野望は、、、!)フランツがそこまで考えたときに、リーゼが、その思考を読んだように後を続けた。

「そう、フランツ。ブルクハルト王子は自分の国が欲しかった。国王になりたかったのよ。それで自治区設立のために協力する気になったの」

「、、、いや、しかし、あくまで自治区であるし、更に今回は帝国軍の駐留という条件もあるから、国王というには無理があるのではないですか?、、、!!」フランツは、自分でそこまで言ってハッとしたのであった。

to be continued...
nice!(1)  コメント(1) 
共通テーマ:アート

nice! 1

コメント 1

てぃねこ

はじドラ様、niceありがとうございます!
by てぃねこ (2019-05-04 00:18) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。