SSブログ

青い炎と人形の物語 第4章その4 [球体関節人形製作]

てぃねこ@ハニたろべネコです。

人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。  
「青い炎と人形の物語」の第4章の続きです。

ファシーズ党に入党したブルクハルト王子の真意は何なのか?
それでは、物語の開始です。

第4章 自治区 その4

 自治区設立法案は無事、帝国国会に提出され可決されたのであるが、話はその1週間後となる。

 自治区設立法案が可決されたことを受けて、ファシーズ党とメンシュナ党合同での視察委員会が発足し、フランツとカーヤも招集された。
 初回の会合の直前に、クランツ議員はフランツにメンシュナ党視察委員内での副委員長の役割を依頼した。

「君も知っての通り、帝国統一選挙1年前の今の時期は、委員長のロータル議員も地方遊説でいろいろと忙しい。それで、今回の視察の前半は彼も同行するが、後半の取りまとめは、フランツ。君にお願いしたい」

「わかりました。クランツさん。前もってお願いしていたように助手に同行してもらってもいいですか?」フランツはあらかじめ、カーヤに視察の可能性を打診してあり、OKの返事をもらっていたので、ちょっと斜め後ろにいるカーヤのほうをチラリと見やって彼女を紹介した。「こちらが助手のカーヤです」

「初めまして、クランツ議員、カーヤ・ファールバッハです」カーヤは前に進み出て、クランツと握手を交わした。

「あぁ、君がフランツの右腕となる才女のカーヤだね。噂はかねがね聞いているよ」クランツはにこやかに答えた。

「カーヤ君の同行については、もちろん予定に入っているとも。こちらからは、ヨーゼフ博士、議員秘書のディーター、あとポーターの男1名が同行するので宜しく頼む。視察の出発は12月7日の朝だ。遅れないように」クランツはそう言うと頼むぞというようにフランツの背中を叩いた。
 クランツはフランツとがっしり握手を交わし、彼は議員会館の別の棟に去って行った。

......

 その後、別室において、フランツ、カーヤ、ロータル議員、ディーターの4名が顔を合わせ、挨拶と今後の打ち合わせを行った。

「今回の視察行程については、すべてディーターが受け持っている」ロータル議員はそう言いいつつ、頼もしそうに30前位の男を見た。
「もちろん、今回の視察全体のとりまとめは、最終的にフランツ君にお願いしたい」

「わかりました。ロータル議員」フランツがそう答えると、ロータルは「いや、そんな堅苦しくなくロータルと呼んでくれ」と返した。
「それでは、ロータルさん、ヨーゼフ博士は会合には不参加なんですか?」
「あぁ、欠席と聞いているが、視察には同行するそうだ」ロータルはそう言ってディーターを見た。

「はい、フランツ先生。ヨーゼフ博士は明日まで学会の講演をしておりますが、5日後の出発には合流できるとのことです」ディーターは、そこから主導権を持って話し始めた。

物語画像秘書ディーターsmallC.jpg

「視察は12月7日の朝10時に、バルリン駅の南口に集合してから出発します。鉄道のチケット、現地での馬車の調達、宿の手配についてはすべて私にお任せ下さい。それと、今回は特別にメンシュナ党の私がファシーズ党の視察委員の旅行の手配も行っています」

「ディーターさん、ファシーズ党の視察委員の名簿はありますか?」カーヤがそこですかさず口を挟んだ。

「はい、カーヤさん、では、読み上げます」ディーターは名簿の紙を開いた。



「まず視察委員長ですが、党の古参のエッボ議員で、副委員長は帝国陸軍のベンジャミン少将...」彼はそこで一旦言葉を切り、すぐに続けた。
「それから、帝国教会のアウグスト神父、エッボ議員の秘書でユルゲン、そして帝国陸軍のザスキア少佐の以上5名となります」

「少将と少佐か、、、軍人が二人もいるというのは、最初から、軍による統制の事実を示したいのだろう」ロータル議員は苦々しくつぶやき、フランツも確かにとうなづいた。

「しかし、将校クラスの者が視察団に入るとは異例だな。通常は考えられないが」ロータル議員が独り言のようにそう言うとフランツはハッとして思わず口に出した。

「先日の会議で見た将校の中にブルクハルト王子がいたのですが、まさか彼が参加するのでは?!」

「あぁ、あの若そうな新顔の将校か、しかし王族だとしたら会議の冒頭で紹介くらいあるのが普通だ。似てはいたが、他人の空似ではないのか?」ロータルはそう言いながら会議のレジュメを取り出した。
「うむ。確かに、、、ベンジャミン少将と記載があるから、あの男が同行するのだな。恐らく。しかし、さすがに王子ではないだろう」

「なるほど...確かに王一族のラストネームではないですね」フランツもレジュメを見て同意した。

「...ミドルネームかも...」カーヤがつぶやくように言い、フランツとロータルは思わず彼女を見やったが、次の言葉で話は別の方向へと進んでいった。

「ディーターさん、ザスキア少佐は女性ですか?」

「はい、そのように聞いていますが、、、あ!それで今回は例外的なことで、皆様には大変申し訳ないのですが...」ディーターはそこで一呼吸置いた。

「視察の各地方においては、辺境の地であるため、十分な宿泊先を見つけることが困難でした...それで、皆様は二人ずつの相部屋ということでお願いします」彼は申し訳なさそうに言った。

「私共では、ロータル議員と私、フランツ先生とヨーゼフ博士、ファシーズ党では、ベンジャミン将校とアウグスト神父、エッボ議員と秘書のユルゲン、、、そして、、、」ディーターは最後にも、さも申し訳なさそうに伝えた。

「カーヤさんは、同じくただ一人の女性のザスキア少佐と同室をお願いしたいのですが...」

 それを聞いたカーヤは肩をすくめたが、軽く頷いた。「...辺境の地の事情については、私もいろいろな調査で知っています。立場の違いはありますけど、うまくやっていきますよ...逆にザスキア少佐のほうはどうなのですか?」

「それについては打診済みで、(軍人ですから何の問題もありません)との返事を頂いています」ディーターはよどみなく答えた。
「結構、結構」ロータル議員が合いの手を入れた。

......

 一同は、その後、必要のことを打ち合わせた後に解散した。

......

「じゃあ、カーヤ、5日後の朝に、、、関連資料については頼んだよ」フランツはそういうと手を軽く上げた。

「ええ、わかってるわ。フランツ。それじゃマリーにもよろしくね」カーヤはそう返すとフランツと軽くハグし、関連資料の整理のため、別室の資料室に向かって行った。

「さて、駅に急ぐか」フランツは旅のトランクを持ち、早速、会議室を出て、こい紫がかった赤の絨毯を歩き、議員会館のロビーに向かって行った。

 ロビーには、いくつかの焦げ茶のテーブルと、それを囲むように黒い革のソファーが並べられていたが、その中の1つに
暗い緑の軍服に身を包んだ二人の人物が座っていた。
 そして、フランツがその横を通り過ぎようとした時に不意に立ち上がり、彼の行く手をふさいだのだった。

「...失礼ですが、フランツ先生ですね?」小麦色の髪をした背の高い男が声をかけてきて、右手を差し出した。
「帝国陸軍のベンジャミンです。今回の視察に同行します」

 思わぬ展開にフランツはビックリしたが、すぐに自治区設立法案の会議に出席していた(王子に似ていた男)だと分かった。
「...失礼ですが、ブルクハルト王子ではありませんか?」
フランツは同じく右手を差し出しながら、勇気を出して尋ねた。

「あぁ、よくご存知ですね。普通の市民の方ですと、現王の弟の子供の顔までは知らないことが多いのですが、、、その通り、私は王子のブルクハルトです。ちなみにベンジャミンは母方のミドルネームです」
そして二人は握手を交わした。

「そして、彼女も視察に同行する士官です」そう言って王子はスレンダーなボディにピッタリフィットした軍服に身を包んだ若い女を自分の横へと招いた。

「初めまして。帝国陸軍少佐のザスキア・ローラントです」そして彼女もフランツと握手を交わした。
「フランツ・ジルベールです」

「フランツ先生の有能な助手のカーヤさんは、ご一緒でなくて?、、、まだ、書類の整理中ですか?」ザスキアは軽い調子で、フランツがギクリとするような言葉を口にした。

 フランツの顔がやや青ざめたのを見て取って、ブルクハルトがフォローに入った。
「これは、いきなり部下が失礼しました」彼は柔和な微笑みを浮かべた。
「ザスキア少佐は帝国陸軍の情報部に所属しているもので、、、ちょっとお喋りが過ぎてしまいました。お許しください」

「初対面ですのに、失礼致しました」ザスキアはフランツに向けて軽く頭を下げたが、その口元にはわずかな微笑みを浮かべていたのをフランツは見逃さなかった。

「...いや、さすがは情報部ですね。こちらの行動はお見通しですか!」フランツは頭を掻き、微笑んで、さも驚いたように装ったが、ザスキアが最初に話しかけきたときの彼女の口元を見逃さなかった。

(彼女の犬歯!、、、狼人族とはまた違った形だ!、、、もしや、鬼人族か?、、、しかし、鬼人族の軍人がいるとは、、、?)フランツが目まぐるしく思考を回転させていると、ブルクハルト王子が言った。

「...それでは、お互い忙しい身の上ですから、このへんで、、、視察では、またよろしく頼みます」
そして、二人はフランツに一礼すると、その場を去って行った。
 フランツも王族の手前、あまり不躾に質問もできずに、こちらも深く一礼して、予期せぬファーストコンタクトは、あっという間に終わったのであった。

(...しかし、何か気になるな。カーヤに伝えるか?...いや、まぁ、後にしよう。今から駅に急げば、1時のハンブルス行きの列車には間に合うだろう!そうすれば家には夕方には着けるだろう!)

 フランツは議員会館の表に停まっていたタクシーに乗り込み、一路駅を目指した。

........ 

 次回からは、また場面が変わり第5章になります。
 お楽しみに!

to be  continued...  
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。