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青い炎と人形の物語 第5章 その2 [球体関節人形製作]

こんばんは、てぃねこ@ハニたろべねこです。
毎週金曜の夜の更新の時間です!!
それでは、物語をどうぞ!

第5章 マリーの覚悟 その2

 「こんばんは、マリー!、はじめまして、フランツさん。エルケ・ナウマンです。この度は、本当に申し訳ありませんでした。」若いメイドはそう言うと頭を深々と下げつつ右手を差し出した。
 
 フランツはマリーから聞かせてもらった経緯から、かなり複雑な思いではあったが、エルケは信頼できる人だということも聞かされていたので、わずかに迷いつつも、その手をガッシリと握った。

 「エルケさん、頭を上げて下さい。父親のフランツ・ジルベールです。全ての経緯《いきさつ》は娘から聞きました」

 フランツは、半べそ気味で顔を上げたエルケを見て続けた。
「全ての企みは義姉《あね》のリーゼのものでしょうから、その指示通りに動いたあなた方を責めても仕様が無いです。明日、義姉のところに行き話を着けます!」

「ありがとうございます。いつかこのご恩に報います」エルケは少し涙目ながら、僅かに微笑んで言った。

「エルケさん!」
「マリー!」
エルケとマリーは、その場で優しく抱擁を交わした。

「...それで、大変、急なことなのですが、、、」エルケはマリーから少し体を離しつつ、フランツの方を見た。

「リーゼ様とルイーゼ様、そしてラウラ様からの手紙があります」そう言ってエルケは2通の封筒をフランツに差し出した。

「さあ、寒いから居間にどうぞ」フランツはエルケを居間へと促し、3人は居間の四角い木製のテーブルを挟み、ソファーに向かい合って腰を下ろした。

(確かに、この筆跡はルイーゼのものだ...)
フランツはリーゼとルイーゼのサインのある封筒から、まず開いてみた。

 手紙には、今回の経緯とマリーとフランツへの謝罪、一度会って話しをしたいこと、マリーにラウラの弟子になってもらいたいことなどが書かれていた。

 そして、手紙の最後には、リーゼとルイーゼの筆跡で、フランツへのメッセージとサインが印されていた。

 ルイーゼのメッセージに、フランツは軽いショックとともに感慨にも打たれた。

〈フランツ、私はあなたを責めたりしません。
 あなたはマリーと再会して全てを聞いたと思います。
 夜の夢の中での会話で、あなたとカーヤのこと、その謝罪を聞きました。
 今後の行く末はまだ分かりませんが、まずはマリーをラウラに預けて、守って学ばせてください。
 近いうちに会ったら、私もあなたに話したいことがあります〉

 フランツは思わず目頭を押さえつつ、次のラウラの封筒を開き手紙を読んだ。

〈フランツさん。中道の私が手を貸すのは、ひとえに無益な争いの回避のためです。
 マリーに〈釣り上げの魔法〉を習得させて、いずれかのときに、リーゼとルイーゼを引き離しましょう。
 それと、ルイーゼから以前に聞いていたと思いますが、私たち魔女の[血の洗礼]は、女子の初潮の辺りから始まります。
 リーゼから聞く限りですが、マリーの今の能力から推し量ると、大変な事態になることが予想されます。
 これらの事態に対処するためにも、マリーを私にしばらく預ける決断をお願いします〉

 フランツは、以前ルイーゼがまだ人の姿で存命していたときに話してもらったこと、魔女が必ず通過する[血の洗礼]のことを、うっかり忘れていたことを恥じた。

 しかし、自分が考えていた解決策と、ラウラ、リーゼ、ルイーゼの方策と、うまく合致したことには驚きと、かすかな希望を感じたのであった。

「マリー、お前も読んでごらん」フランツは2つの手紙をマリーに手渡し、彼女が読み終わるのを待ってから口を開いた。

「エルケさん、分かりました...マリー、しばらく家を離れて、ラウラさんのところで暮らしてくれるかい?」フランツは隣に座るマリーの目を見つめながら話し掛けた。

「ええ、もちろんよ。パパ!...その覚悟はできているわ」そう答えるマリーの表情は、もう大人の女性と言っても過言でないほど落ち着いていた。

「パパが出発する日に引っ越すわ!、、、だから7日の金曜日ね!」

「マリー、そんなに早くでいいのかい?」フランツは心配そうに尋ねた。

「ええ、大丈夫。明日から木曜まで普通に学校に行って、帰ってきてから、いろいろ準備して、金曜は休みをもらってラウラさんのところに行くわ!」マリーはあっという間に段取りを立ててしまった。

「分かった。学校にはパパからも連絡しよう、、、苦労をかけるな。ごめんよ!マリー!」フランツは娘の急激な成長に驚き、戸惑いつつも彼女を抱きしめ、マリーもそれに応えた。

 フランツはエルケの方を見た。
「エルケさん、明日リーゼ義姉さんに会いにいきます!」

 二人を見つめていたエルケは言った。
「それでは、私が明日の正午にソリで迎えに来ます。...それから、金曜の正午にはマリーを迎えに来ます」

......

 そして、エルケはマリーとフランツにお別れの挨拶をして、四頭立ての犬ゾリで月夜の青い雪原を去って行った。

 エルケのソリを見送っていたフランツは、同じく隣に立つマリーに言った。
「すごく大きな犬だね?」

 その言葉にマリーはクスリと笑い、父親を見上げて言った。
「ううん、あれは本当は狼なの!」

物語クスリと笑うマリーCsmall.jpg

to be continued...


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