SSブログ

青い炎と人形の物語 第8章 戦慄の魔法兄妹 その10 [球体関節人形製作]

 
 鬼人族の女[ヴァネサ]との情事の後に、フランツはうつ伏せに寝ている彼女の傍らで半身を起こし、窓の厚いカーテンを少しだけ開け、月明かりの青黒い闇に目を凝らしていた。

(しかし...妙なことになってしまった...これでは、マリーやルイーゼに申し訳が立たないな...カーヤにも...カーヤはザスキアに操られているように見えたが...彼女の意思はどこまで表れているのだろう?)

 フランツがそこまで考えたときに、レオンの強力な精神の触手がフランツの頭に飛び込んできた。
『フランツさん。それでは、あなたにも戦場の現場を見せてあげましょう!心配はいりません。あなたの隣にいるヴァネサにはあなたの体を見守るように伝えてありますから』

 フランツはレオンに、自分達の情事を盗み見られたのではないかと思い、顔から火が出るような思いにかられたが、レオンはさりげなく、その考えをかわした。
『今は、夜中の3時で、VV親衛隊の町への侵入が開始されたので、あなたの精神にコンタクトを取りました。僕は子供なのであなた方の行為を盗み見る趣味はありませんよ...というか、特に好き好んで見たくもありませんが』

 レオンの大人の対応の思考に、フランツはやはり恥ずかしさを隠せなかったが、そのとき隣に寝ていたヴァネサが急に顔を上げ、
「いってらっしゃい。フランツさん」
と僅かに微笑んで言い、その直後にレオンが、
『それじゃ、行きますよ。フランツさん!』
と思念を流し込んで来ると、同時に、フランツの精神体の一部が身体から離脱し、レオンの精神体と共に宙を舞い、窓の外に飛び出した。

 窓の外には4頭のコウモリが飛んでおり、そのうちの一頭にフランツの精神が飛び込むと同時に、フランツは自分がコウモリとして飛んでいることを意識した。
 そして、自分の周囲にいる三頭のコウモリに、それぞれレオン、レオナ、ブルクハルトの精神体が憑依していることを認識した。
『彼らは全部で8人。今、町の中央の公民館兼ホテルに到着しつつありますが、ここで彼らには鬼ごっこをしてもらいましょう。レオナ!始めようか?』
レオンの言葉にコウモリのレオナが、
『ええ、レオン兄さん』
と、応じたところで、四頭のコウモリは音もなく公民館まで後100mと迫ったVV親衛隊を見下ろしていた。

 VV親衛隊の一人が上空を旋回して飛んでいるコウモリに気づいたが、大事な作戦の途中なので、特に注意を払おうとはしなかった。

 すると突然、公民館の近くの林から獣のようで人間と思われる妙にひしゃげた鳴き声がいくつも聞こえてきた。

 VV親衛隊は、一斉に制音器付きのスナイパーライフルを鳴き声のする方向に向けて、暗視スコープを覗き込んだ。
 スコープの先にはボロボロの衣服を纏い、顔面が真っ白で目だけが光った死人のような男達(ゾンビ)が10名、足を引き摺りながらも小走りに親衛隊の方に接近してきた。

 親衛隊の隊員達は、冷静にゾンビの眉間目掛けて引き金をひいた。

 ゾンビの眉間に弾丸の穴が開き、後頭部から脳漿が吹き出したが、ゾンビはちょっと速度を緩めただけで、そのまま突っ込んできた。

 親衛隊の隊員達は慌てて陣形を崩したが、今度は自分達の左右のすぐ横にゾンビが表れたことに気付き、近距離からライフルの引き金を引いた。
 近距離からの狙撃で頭を半分吹き飛ばされたゾンビは次々と倒れていったが、親衛隊の仲間達の姿もいつの間にか減っていき、最後は一人の隊員だけとなってしまった。

 最後に残った隊員の一人に周囲のゾンビ8体程が一斉に襲いかかり、隊員はパニック状態でライフルを乱射しているところを、どこかから飛んで来たライフルの玉2~3発に上半身を撃ち抜かれて息絶えた。

 戦闘はものの3分程で終了し、残って立ち竦んでいた8体のゾンビは煙のように姿を消してしまった。

 この戦闘のほとんどが、ゾンビの幻を見せることで行われたことにコウモリ姿のフランツは衝撃を受けたのであった。

...to be continued.





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。