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青い炎と人形の物語その5 [球体関節人形製作]

てぃねこ@ハニたろべネコです。
人形作りと、オリジナルの物語の部屋です。

「青い炎と人形の物語」の続きです。
それでは、どうぞ。

第1章 冬のある日(その5)

 カラスに、マリーの行き先を教えられた人形のスージーと
黒猫のサミーは、とても妙なスタイルで出発した。
 大きいが大変おとなしいセントバーナード犬がスージーを
咥え、犬の背中にはサミーが震えながら必死にしがみついていた。
 セントバーナード犬のベルガーは、普段マリーが良く遊び相手になっている近所の家の飼い犬であった。

(マリーの日頃の行いに感謝ね)スージーは思った。
(でも、この唾液には、、、ちょっとガマンかな)

(う、う、う、ここは、耐えるしかない、い、い)
サミーは目を固くつぶりながらも犬の背中で踏ん張っていた。

 幸いボタン雪は峠を越えて、ちらほらと降るばかりとなったが、夕闇が急ぎ足で近づいてきた。
「ベルガー、申し訳ないけど、日が沈むまでには到着して欲しいの」スージーは思考の声を送った。
「分かっている。お前さんも口の中でもう少しガマンしてくれ」
ベルガーの思考の声に、スージーの思考は赤面した。

........

 閉ざされたドアの前で、いつまで待っていても仕方無いので、マリーはベッドの中に入った。
(このほうが暖かいもの)
 客間には火の気がなく、大きめの暖炉には薪も炭も置かれてはいなかった。
「夕食を持って参りました」ドアのカギがガチャリと開き、昼のメイドがトレーを片手に静かに入ってきた。
 先ほどの風のような身のこなしから、逆らっても無駄だと思い、マリーはベッドで横になったまま、頭だけドアの方を向いた。
「いらないわ」マリーは答えた。
 メイドはベッドの前の小さな丸いテーブルの上にプレッツェル、ベーコンエッグの入った皿と、ホットミルクのコップを置いた。
「別に毒は入っていませんよ。わたくしが毒味をいたしましょうか?」メイドは少し微笑みながら言った。
 マリーはかなり空腹だったので、ベッドからガバッと起き上がると、テーブル前の丸椅子に座り込み、プレッツェルを頬張った。
物語のメイドエルケ_C.jpg

 ホットミルクを半分ほど飲むと、マリーは、だいぶ落ち着き、腰の前にトレーを両手で持っているメイドに尋ねた。
「あなたも、あの狼男と同じなの?」
 メイドは少し困った顔をしたが、すぐに質問に答えた。
「ええ、わたくしや、ダーク、あ、わたくしはエルケと申します」冷ややかな印象は消え、メイドは急に雄弁になった。
「私達は、半分狼、半分人の血を引いた狼人の一族なんです...座ってお話ししてもよろしいですか?」
 マリーが頷いたので、エルケは優雅だが野生的な身のこなしで、マリーと反対側の丸椅子に腰を下ろした。
 「わたくしのこと、恐くないですか?」エルケは覗きこむようにマリーを見て言った。
 「正直言うと、少し怖い...かな?でも、こうして話してると普通の人と同じみたい」マリーは少し小声で答えた。
 「マリーお嬢様は勇気がありますね」エルケは優しく返した。「わたくしとダークは兄妹なんです。兄はだいぶ乱暴な言葉使いですけれど、一族の中ではとても頼りになるんですよ。でも、だいぶ手荒かったですよね。痛かったですよね?本当にごめんなさいね。マリーお嬢様。」
 エルケの声にマリーは思わず目がうるっとしたが、慌てて手で擦った。(まだまだ、油断しちゃだめ!)

 そんなマリーを優しく眺めるエルケは話を続けた。
 「どうぞ食事を続けながら聞いてくださいね」
 マリーは、その言葉に素直にプレッツェルを頬張った。
 「多分、マリーお嬢様が知りたいことを話しますね。私達兄妹二人は10年前から、お嬢様の」エルケがそこまで話したときにマリーは口を挟んだ。
 「エルケさん。マリーって呼んで」
 それを聞いたエルケは思わず微笑んだ。
 「わかりました。では、マリー。私達は、リーゼ様に仕えて
10年になります。リーゼ様が話したことは全て本当のことです。でもマリーが話したことも本当のことだと思います。ただリーゼ様がまだ話していないことがあります」
 「え、それは何?」マリーはベーコンエッグを食べながら聞いた。
 「マリーには、急には、信じられないと思いますが」エルケはそこで一旦言葉を切った。
 「リーゼ様も、マリーのお母様のルイーゼ様も、そして、マリー、あなたも、魔女の一族なんですよ」
 エルケの言葉に、マリーはベーコンを咥えたまま思わず唖然とした。

........

to be continued...





 
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